2020/12/13 のログ
ご案内:「セレネルの海」にシルニアさんが現れました。
シルニア > 冷たい波飛沫が風に乗り押し寄せる夜の海辺。数メートルほど離れた海面からがばっ、と顔を出す。
長く伸ばされた髪が頬にべたりと張り付く。...縛ってくれば良かった。

「ぷはっ。むぅ、見つからないものですねぇ...早く見付けないと、潮水で髪がいたんじゃうです...」

探しているのは、依頼に受けた指輪。銀の輪に硫化防止と簡単な位置探知魔法、防犯魔法のコーティングが施され、大きなダイヤモンドとかいう宝石が取り付けられたもの...らしい。
無論、依頼主は大金持ち。故に報酬もかなり割高だ。

でも、小さな指輪を海から、それも凍えるこの時期に探せる者なんてそう多くなかったらしく、ギルドの中ではこの依頼に飛び付く者はいなかった。

だけれど、私は凍えてしまうのを気にするどころか、髪がいたんでしまうことを気にするくらいで。
──魔法は便利なものだ。熱魔法による体温の保護、風魔法の応用による水流での水泳補助、灯りの魔法で真っ暗な水中を照らし、探知魔法で指輪に施された魔法の魔力を大雑把にではあるが追える。それから──

再び海へ潜る私は、潜る前に大きく息を吸ったけれど、実際はそれすら必要ない。
とはいえ、これほど多くの魔法を維持するのは骨が折れる。泳いで、物を探す事くらいなら支障はないけれど、ずっと続けると頭が痛くなってしまいそうだ。

シルニア > 3m程の深さの海の底をくまなく探す。砂を手で払い、念入りに。時折探知魔法を強めてみるけど、イマイチぴんとこない。

「...っ!」

と、身体に違和感。なにかぬるぬるとしたものが身体に触れてびくん、と跳ね上がる。
身体を見下ろしてみれば、大きな海藻が身体や髪に絡みついていた。
嫌悪感に顔を顰めつつも、冷静に対処。魔法の水流を強めて、海藻地帯から離れる。幸い海藻は柔らかいものだったらしく、すぐにちぎれた。
けれど、身体に絡みついたものはそのままで。水着の中にまで入り込み、気持ち悪い。

「ぷはっ。うぅー、取れないです...!一旦上がりましょう。」

波に揺られながら海藻を取るのは難しい。浜辺に向かって泳いで、そこに立てば。

「...ふ、うっ...ツイてないですね...
...へくちっ!」

私が着ているのはル・リエーの水遊場から借りたワンピース型の水着。ワンピース型とはいっても上下セパレート型のものだ。
それをお腹を晒すように捲りあげて、水着のなかに入り込んだ海藻を取り除く。
ぬるぬるとしたものに身体を撫で回されるようで擽ったくて声が漏れる。
それに、海藻の柔らかさが災いして、取ろうと掴んだ海藻は簡単に破れ、肩に、胸に、背中に、お腹にと張り付いたままで一苦労だ。

冷たい風が吹く。熱魔法による保護があるとはいえ、一瞬凍えるような冷たさを感じて、思わずくしゃみが出た。

シルニア > 数分、身体に張り付いた海藻と奮闘して。
大雑把には取れたけれど、まだ残っている気がする。いや、多分残っている。

「うーん、どうせまたくっ付くでしょうし、後でちゃんと洗うことにしましょう。」

と諦め、指輪の捜索を再開。再び海へ潜る。

ここの海は故郷より少し汚い。濁っているような、そんな感じだ。この国は人が多い上に、マナーが悪い荒くれ者も多い。それ故に海にものが多く捨てられているのだろうか。
それでも、海の生き物たちは故郷と違う色鮮やかな魚が多くて、綺麗だ。
今、私の灯りの魔法に釣られてやってきた魚も、鮮やかな銀色で、背鰭には同じく銀色の輪のような──

──えっ、輪っ!?

道理で見つからなかった訳だ。指輪は海底の砂に埋もれているものだと思い込んでいたけれど、魚の背鰭に偶然引っかかっていたなんて。

魚捕りは得意だ。灯りに集る魚ならば、尚更のこと。
故郷で何度もやっていたように、氷魔法で海水を凍らせ、鋭い氷柱を創り出し手に握る。
魔法の灯りを海面へと少しずつ上昇させて、魚を誘導。私の存在がバレないように、灯りの影にならないよう深くへ潜る。

そうして、魚を下から狙い澄まし、氷柱を風魔法で高速で打ち出せば。

「ぷはっ。いっちょうあがり、なのですっ!」

海面から顔を出し、降ってきた氷柱をキャッチ。その氷柱には、腹から貫かれた魚と、指輪。完璧だ。

シルニア > 用が済んだら、さっさと帰ろう。
でも、その前に。

「誰もいない、ですよね...」

浜辺へ上がった私は、辺りをキョロキョロと見回して。仄かな月明かりしかない、ほぼ真っ暗な夜だが、猫科のミレーの私は夜目が効く。
誰も居ない...はずだ。

となれば、宿に帰るのも待てない。今すぐ身体を洗いたい。
地面に展開する魔法陣は、風を示す緑、水を示す青、熱を示す赤。3種の魔法を上手くあやつって、宙に浮かぶ水球を創り、あたたかい、簡易的な風呂として。

「魔法使いで良かった、です♪〜〜♪」

水着を脱ぎ捨て、水球に飛び込む。魔法の維持に集中しないといけない故に、リラックスは出来ないけれど。潮水で全身ベタベタしていた物が落ちて心地よい。

集中している故に誰かが、あるいは何かが接近して来ても気付けないのだけれど──

ご案内:「セレネルの海」にロブームさんが現れました。