2020/08/23 のログ
ご案内:「セレネルの海」にノイエさんが現れました。
■ノイエ > ――――何処からか、波の音が聞こえていた。
何処へ行くとも何をするとも聞かされず、目隠しをされ四肢の自由を奪われて、
輿に乗せられ運ばれた先は、柔らかな寝台と思しき弾力の上。
其処でようやく手枷足枷を外され、目隠しを取り去られて、迎えが来るまで此処に居るように、
迎えが来る前に何が起ころうと、誰が来ようと、決して逃げ出さぬように、と、
いつも通りの曖昧な命令が下された。
其の命令を下した相手の顔すら碌に見ず、ただ従容と頷いてみせれば、
己を此処へ連れて来た者たちの気配は静かに、己一人を残し何処かへと去って行く。
数度瞬きをしてから、改めて見渡せば、其処はどうやら洞穴の中。
仰々しい天蓋付きの寝台が中央に設えられ、四方には蒼白い魔術の灯火が点る。
此処が『祭壇』であるのなら、己の役目はやはりいつも通り、
誰かに、あるいは何かに、捧げられた『供物』であろう。
そっと吐いた溜め息ひとつで全てを呑み込み、己は寝台の真中へ座した儘、
胸元でそっと両手を組み合わせて頭を垂れた。
目を伏せて、ゆっくりと深呼吸を繰り返し――――いつ訪れるか、そも訪れるかどうかすら分からない、
誰かを、何かをただ待つことに。
■ノイエ > 「―――――― ぁ、 」
空気が、動いた。
確かに誰かが、あるいは何かが、己と同じ此の空間に入り込んだ気配を感じる。
僅かに肌が粟立つような、蟀谷の辺りが微かにヒクつくような。
其れでも、逃げることは許されていない身だ。
白い天幕に覆われた寝台の上、更に深々と頭を下げて、『相手』を迎えることだけが、
己に許された唯一のコト。
――――――其の先のことは、ただ、深い深い闇の中。
ご案内:「セレネルの海」からノイエさんが去りました。