2020/07/29 のログ
ご案内:「セレネルの海」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――例えばどうしようもなく感情のやり場がなくなった時。
 海にくればいいと思った。

「っふっく……ぅっ……」

 泣きたい時なんかは特に。
 握った拳を叩きつけても、柔らかい砂地は衝撃を包み込むし、大きな声を発しても、潮騒に紛れて掻き消えてしまう。
 日没近い水平線に赤く斜陽が沈んでいこうとする頃合いに、嗚咽を引き連れて訪れて、独り浜辺の片隅で海に向かいさざ波に慟哭を紛れ込ませた。

 たまには声を上げて泣きたい時もある。

 海にくれば、それは許される気がしたから――

「う、っく……ん゛……あぁあぁぁっ…」

 次第に高くなる声に寄せては返す波の音が重なり、双眸から溢れる涙を砂浜が吸い取っていった。

ティアフェル >  波打ち際に蹲って、ただただ表情を崩し泣きじゃくる夕間暮れのひと時。
 生きていれば、そんな刹那もある。

 哀しい時に、泣きたい時にくる場所はやはり海がいいと思った。
 挙げれば色々と理由はあるけれど、もしも都合のいい理由がなかったとしても――何故かやはり、海が最適なような気がする。

 行き止まりがないように果てしなく続く水平線の前では、ちっぽけな一人がどうしようと構わないように感じるからだろうか。

 もう子どものように泣きじゃくる歳でもなくなったのだけど――

「え、う、うぅぅうぅぅっ…」

 顔を覆って声を上げ号泣する姿は人が見たら異常なのかも知れない。今はそれに構う気はないけれど。
 ひくひくとしゃくりあげ、ゆっくりゆっくりと没していく夕日に朱く照らされて、仄かに光を反射させる海水と同じ味の雫を後から後から零し。

 まるでバンシーのように泣きじゃくる女が一人きり。

ティアフェル >  そうして、一頻り泣きじゃくると、やがて声も掠れて涙も嗄れ始め。真っ赤に泣きはらした目で沈む太陽が投げかける最後のひと筋の光を見つめ。

「よし、良く泣いた!」

 ぱん、と気を取り直すように両手で頬を打つ音を立てると砂の上に勢いよく立ち上がって。

「切り替え完了、明日っからもがんばろうー」

 泣いたカラスはあっさりと笑顔に切り替わって砂に塗れた衣服を払い海岸を歩き出した。

ご案内:「セレネルの海」からティアフェルさんが去りました。