2020/07/14 のログ
ご案内:「セレネルの海辺の洞窟 かつての海賊の宝が埋もれる場」に海石榴さんが現れました。
海石榴 > 「―――ウォゥラァッ!!」

腹で力を作り、足先へと向けて伸びきるように流れていく。
腰を捻り、踵を目の前の瓦礫へ向かって、一突きの蹴りを放った。
亜人の怪力と靴底から放った足技が、最後の岩塊を蹴り砕く。

詰みあがった団子山のように塞いでいた人工的なそれら。
手前だけを泥と砂利で固めていたのなら、塊の数だけ蹴り砕けばいい。

汗が滲み体が熱い。
船同士で宝を奪い合い、殺し合う瞬間とは違う。
女と空が白むまでヤりまくって居る時とも違う。

岩の塊程度をサンドバックにしたところでは発散されない熱が身体に溜まっていた。
洞窟の入り口を作り、両手をツナギのポケットに入れながら歩いていく。
ギチギチと豊満な体がツナギを軋ませながら、鼻をスンスンとひくつかせた。

生存 罠 毒など感じるものは今のところなく、人工的なのはまだ入口側だけ。
一人で暇つぶしに潜り込んだどっかのバカが埋もれさせた宝を拝もうと来たものの―――。

「さて、目当てのもんがあるのかどうか……。
 つーか暗くて見えねぇし。」

燐寸を擦り、銜えた葉巻を煙で燻らせると虫と液体が入った透明な樹脂棒を胸元から取り出す。
激しく上下に振るうと、虫が持つ成分に反応したのか強い蛍光色を放つそれ。
松明とは違う消えない明かりの完成だ。

「さーてと、お宝がいんのか海の干物が転がってんのか……拝見拝見、と。」

獰猛な笑みを浮かべ、葉巻を銜えたままザクザク歩いていく海石榴。
独り占めするには無理な量なら仲間を連れてこよう。
別の何かがあるのなら、見てから蹴るか手に入れるか決めていこう。

葉巻の甘ったるい煙を口の中で転がして、海石榴は進んだ。

海石榴 > 緑の蛍光色に光る棒きれを片手に、洞窟の中を進む。
生息しているのはせいぜい洞窟内で生息していた虫程度。
空気自体死んでいると思っていたものの、どっかしら隙間から流れ込んでいるらしい。

宝の規模も奥行も不明な未知 未開拓の宝の洞窟。
明かり以外は武具を除けば葉巻とラムしか持ってきていない身一つの探検。
わくわくして仕方がない。

黄金色の造形も、蒼や赤で彩った何面体にも削り磨かれた宝石も浪漫がある。

―――仮にこれが眠りに就いていたタコの化け物や海蜥蜴のデカブツだったりしたらっておもうだろ?
―――そいつはそいつで、アタシはそそる。

「噂だとどっかには海神扱いの奇妙なやつがいたりすんだよなぁ……。」

床、壁、天井 いろいろとじっくり明かりを照らして見つめるものの、特に変わりはない。
外側から泥と岩塊で固められていた洞窟内は人間でも閉じ込めていたのならともかく、虫と水気があるだけ。
海石榴は表情を変えず、目新しいものも無く葉巻が手元にあるのが幸いだった。

―――ならあるとするならそう、罠ぐらいだろうな。

頭にふと通り過ぎながら、海石榴は自身なら嫌がらせをすると思った。
暗がりからの一撃を見舞う安定の罠。
例えば黒く塗った矢とかボウとか……。

「とっ」

金属臭。
スンスンと鼻を鳴らし、雨に濡れた鉄より臭い錆の匂い。
なにか隠してあるのか海石榴は辺りを見回す。

「よりによってかよ。」

見えたのは錆びたナイフと一緒に金でできたナイフが隙間から飛び出るようにした仕掛け。
段差を超えたところにある仕掛けでだろうそれ。
金が錆びないことから使っているのか、多少の錆は嫌がらせるものの、全部朽ちればただの襤褸だ。

「回収回収、と。」

わざと罠を起動し、飛び出た金のナイフを手甲に当てるようにして受け止めた。
まずは一つ。
余計な汚れや苔を取ると、未だ色あせない金が見える。
切れ味は直ぐなまくらになりそうなものを、金であることに変わりはない。
小粒だが宝石が埋まっている。

海石榴 > その後も朽ちていたり嫌がらせ程度のものをひょいひょいと突破する。
段々と割れ目のようにすら見える道を過ぎると足を止めた。
其処にあるのは水。
おそらく向こう側には道が繋がっているものの、ここを通らなければお宝は拝めないらしい。

目の前には挑発するように、一枚の金のコインが置かれている。
宝は向こうだぞ、と。

「ケッ」

わざとか自然にこうなったかは知らないものの、コインを取ると表裏を確認した。

「裏」

チンッと真上に弾かれるコイン。
コインを見ないように手の中に掴むと、パンッと手の中で閉じる。
開いたそれは表。

「帰ろ。」

潔く踵を返す。
あの水も嫌な感じがする上に、向こう側に何がいるのかわからない。
況して水中では銃も蹴りも鈍る。
コインを手の中で遊ばせながら、洞窟から出る頃にはラムを瓶の中を空にするように飲み干した。

「ぷっはぁっ
 陸に着いたらこれで遊ぶか。」

なんかの金貨一枚。
女とラムくらいなら買えるだろうと、またチンッと弾きつつ自分の住まう船へと戻り――

ご案内:「セレネルの海辺の洞窟 かつての海賊の宝が埋もれる場」から海石榴さんが去りました。