2020/06/29 のログ
ご案内:「セレネルの海」にエディットさんが現れました。
■エディット > 雨上がりの空に煌めく星を、銀色に輝く月の姿を楽しみつ、
頭上に差し掛けたパラソルの柄を、両手の中でくるりくるりと回しながら、
夜更けの散策と洒落込む己の足跡は、ぽつり、ぽつりと砂浜に。
王都から然程離れておらず、未だ街の灯も遠目に見える時刻でもあり、
今現在、視界に映る範囲内に、己以外の人影は無い、が、然し。
前方、やや左手にはぽかりと口を開けた洞窟と思しきもの、
大型船舶は無理でも、小舟程度なら充分着岸出来るであろう岸辺。
そうしたものを鑑みる限り、余り安全な散策路とは言えないか。
其れでも、パラソルの下、柔らかく綻んだ唇からは歌さえ零れる。
異国の旋律、異国の言葉、しかも、音程すら若干怪しかった。
耳にした誰かが怖がりであったなら、禍々しい呪文の詠唱を疑われるかも知れない。
ご案内:「セレネルの海」にクライシュさんが現れました。
■クライシュ > あまり、夜の海には好んで来るようなことはしない。
不気味さがあるからというより、ただそこの雰囲気があまり好みではない、というだけだった。
こういう、星空が展開されているような場所は、決まった相手がいないと寂しいばかりであるがゆえに。
勿論、今のところ男にはそういう決まった相手がいるわけではなかった。
気に入った相手はいるものの、やはりそうしょっちゅう会えるようなものではない。
それゆえにだろう、あまり海には近づかない男だった。
ならばなぜ今、この場所にいるのかと問われると答えは一つ。
気が向いたから、である。
仕事も受けているわけではないし、帰って寝るだけだったのだが、いかんせん眠気が来ない。
ならば、眠気が来るまでしばらくの間、散歩でもしようかと思い男は浜辺へとやってきたわけだ。
わけ、だったのだが。
「……なんだ、この歌声?
おいおい、まさかセイレーンの類じゃねえだろうな?」
船を海のそこへと引きずり込む呪いの歌を歌うという海の化け物。
美しい容姿とは裏腹に、その行為はあまりにも残虐、伝承ではかの海賊王の船を沈めてしまった、だとか。
呪いの歌声?それともただの呪文だろうか。
男の足は興味本位、そして警戒がほんのちょっとで、歌声のほうへと向かっていた。
■エディット > 己の場合、一人きりの散策に場所を選ぶことは余り無い。
一人で居ることに寂しさを憶えることも、実は稀な性質だった。
月夜の浜辺はキラキラと美しい、見上げた夜空もとても綺麗だ。
吹き抜ける風は潮の香りを孕んで、生温く湿っていたが、気分は悪くない。
そんなこんなで、いつ記憶に刻んだものかも定かで無いような歌を、
機嫌良く大気に解き放っていたものだから―――――
近づいてくる誰かの足音も、其の気配も、気づくのはきっと、大分先の話。
対して、声を頼りに近づく相手が、呑気にパラソルを回しながら歌う白い人影を視界に捉えるのは、
きっと、とても容易いことだろう。
其の姿を亡霊、魔物の類と捉えるかどうかは、相手の考え方次第である。
■クライシュ > 見学してみるか、と安易な考えで男はそちらのほうへと向かった。
ちょうどあちらからしてみたら後ろのほう。
少し前方の、左手に入り江のような洞窟がある場所の前に、その人物はいた。
夜でも十分目立つ、その白いパラソル。
日傘、であると思われるもののすでに時間は夜、あまりにもミスマッチだ。
そんな日傘?を刺している人物に、男は近寄っていく。
斬りかかれるように、右手はバスターソードに掛けてある。
もっとも、セイレーンのような精霊を斬る力は、正直あるかどうかは非常に怪しいところではあるが。
それでも、『竜殺し』と銘を受けた子のバスターソードを信じる以外に、自分の道はない。
切れなかったら、その時は尻尾を巻いて逃げるだけだ。
「おい、そこの真っ白なパラソルのお嬢さんや。
お前さん、もしかしてこのあたりで船を沈めようとしてる、セイレーンの類じゃねえだろうな?」
その口調は、いつもとあまり変わりなく。
この男はいつもそうだ、何か起こってから慌てふためく。
肝が据わっているといえばそうなのかもしれない、しかし逆を言えば命知らず、そして後先を考えない性格。
ともあれ、ほぼ真後ろから声をかけたのだ。
多少は驚かれるかもしれないが、それも男の思考からは消え去っていた。
■エディット > ―――――突然、背後から声が聞こえた。
緩い足取りもそろそろ、洞窟の真横に差し掛かろうかという頃だ。
ぴくん、と揺れた肩の上、優雅にひらめいていたパラソルの動きが止まる。
さくりと踏み出した足を止め、特に何の構えも警戒も無く、
ドレスの裾を優雅に翻し、声の主の方へと振り返った。
やや背中側へ傾けたパラソルの下から覗くのは、見事なきょとん顔である。
「―――せい、れーん……とは、魔物の名前であったかな。
其方の目には、我が魔物に見える、ということか?」
大柄な男だ、格好からすると兵士の類だろうか。
良く見れば随分と立派な剣を背負っているようだ、しかも、片手が柄に掛かっている。
成る程成る程、と一人納得したように頷いて、
「確かに我はヒトでは無いが、船を沈める趣味は無いぞ。
ついでに言わせて貰えるなら、斬られるのも趣味では無いな」
さて、どうしたものか、などと、何処までも暢気に。
相手の出方を窺うというより、面白がっていると知れようか。
■クライシュ > 「へえ、ヒトじゃねえと来たか…。」
なるほど、と男は軽くうなずいて見せた。
セイレーンではないが、人ではないというがその出で立ちは中々、ととのっているといえばいいだろうか。
あいにく貴族階級の礼儀作法など知る由もない男は、その出で立ちにとりあえず身分が高いほうだ、というのは何となくだが予測はつけた。
しかし、その体を見るになかなかのものを持っている。
剣から手を離すことはしないのは、やはりいきなり襲い掛かられても困る、というところか。
それとも、別の意味を持ち合わせているのかは、相手に知られないように。
その顔に張り付いている、威嚇しているような笑みを跳ね返す、面白いものを見るような顔に。
男は少しばかり、悪だくみなんかしてみたりもした。
「…信用ならねえな?
セイレーンじゃないっていうなら、さっきのあの歌は何だ?
別に変な正義感を持ち合わせてるわけじゃねえけどよ、仲間が乗ってる船が通りかかって、沈められちゃ適わねえ。
ちょいとばかり調べさせてもらうぜ?」
などと言いつつ、左手にある入り江の洞窟を指さした。
勿論、右手は剣にかかっているままで。
勿論、仲間の船がどうのというのはただのはったりである。
このあたりに、自分が所属している傭兵団が来るなどと言う情報は、まったくもってないはずだ。
少しばかり名前を借りるのも、別に構わないだろう。
■エディット > 「うむ。嘘は吐いていないぞ」
男が頷くのを認めると、己はまた、緊張感の欠片も無く頷き返す。
然し勿論、其れで納得して貰えると楽観した訳でも無かった。
むしろ、あっさり納得されたら面白くない、という気もするぐらいだ。
「………嘘は吐いていない、と言うのに、疑り深い男だな。
夜の海辺で歌を歌っていたら、皆セイレーンか?」
うんざりした、と言わんばかりの溜め息も、肩を竦める仕草も、
芝居がかっていて、何処か胡散臭く見えたかも知れない。
瞬く蒼い瞳の奥に、好奇の光が煌めいていることに、男が気づいたかどうか。
「――――断れば、有無を言わさず斬る、と言うつもりか?
やれやれ、仕方の無い……」
くるり、肩の上でもう一度、パラソルを回してみせてから、
男が指し示した洞窟の方へ、白い足をさくりと向けた。
正面切って戦うなど、愚策も良いところである。
やはり、表面上は従ってみせるのが得策だろう、と、
其の程度の計算をする頭は在ったからだ。
いざとなれば、相手の目を眩ませて逃げることも出来よう、と。
――――男の思惑と、己の思惑。
何方が現実となるのかは、洞窟の暗がりの奥で明らかになることだろう。
■クライシュ > 「普通にヒトに見えるなら疑ったりしねえよ、ただお前の場合、妖しすぎるんだよ。」
まず、すでに夜だというのに日傘をさしているということ。
そして自分自身で、人ではないと名乗ったこと。
これらを総合的に考えて、明らかに怪しすぎるから。
どこか芝居がかったそのしぐさに、男は何ら疑いをかけることはなかった。
見たところ武器も持っていない、あの傘くらいのものだと。
魔法を使うのであれば、まあそれはその時だ。
しかし、なぜだろうか…あの目、怯えているようにも見えない。
胡散臭いしぐさもなんだか引っかかるものの、そんなものは男は頭の隅にでも追いやっていた。
素直に従うそのしぐさに、男は後ろからついていく。
「そりゃあな、やばいもんを放っておくわけにはいかねえだろ?
でもま、素直に従うっていうなら命はとりゃしねえさ。」
正面切って戦うことがないなら、相手は何か策でもあるか。
それとも、ただ何かほかの目的でもあるのか。
その思惑を胸に、男は後ろから、暗がりへと女とともに消えていく。
ご案内:「セレネルの海」からエディットさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」からクライシュさんが去りました。