2020/05/28 のログ
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 空は真っ黒な帳に覆われて、欠けた月の周りに星が散らばる夜。
ダイラスに近いとも王都に近いとも言えない場所に広がる浜辺は人気も無く、ただ波が打ち寄せては打ち上げられた流木や岩礁を洗って引いていく。
白い砂浜に半ば埋もれた流木は一見、太古の生物の骨のようだし、現われる岩礁はその白い光景に黒い奇形の影となって月光に浮かんでいる。

その物寂しい様な浜辺を海岸線に沿って歩く人影がひとつ。
長い黒髪を緩く吹く潮風に靡かせて、ぽつぽつと白い砂に暗い足跡をつけている。
翠の視線は水平線の方をみたり、足元へと落としたり。

―――ダイラスから王都への帰途に偶々見つけた砂浜の光景は、故郷を思わせた。
懐かしい思いに熟れた唇は知らず、綻びながら
女はゆっくりと波打ち際を辿る

ジナイア > 聞こえるのは波の音と海風が遠く草木を揺らす音。
時折洗われた岩礁の合間を複雑に流れ落ちる音に、それが不意の波とぶつかる音。

規則正しいようで正しくないような…
そんな音も聴いていて決して飽きない。
寧ろ心地いいのは、すべての生き物の生まれは海からだという…誰かから聞いた話がほんとう、だからかもしれない。

「――――…」

明日には王都に、ヒトの世界につくだろう。
何とは無しに吐息と共に夜空を見上げると、渡っていく鳥の黒い影が星と月明りを過ぎっていく。

――――季節の、変わり目。

女はまたうっすらと唇に笑みを浮かべると視線を戻して
潮風に吹かれながら、夜の砂浜に黒く足跡を残していく…

ご案内:「セレネルの海 浜辺」からジナイアさんが去りました。