2020/02/14 のログ
ホアジャオ > 風吹き荒ぶ夕暮れの海岸。
続く海岸線の内でも、岩棚と砂浜が入り組むその場所は、昼間は子供たちの遊び場くらいにはなろうが、漁師や船乗りが近付くような場所ではない。
その暮れかけた海岸には今もう子供の姿もなく、ただ一人、朱の衣を纏った女がひとり、三つ編みを風に嬲られているだけ。

「唉(はぁ)――――…
 寒いのも、もうすぐ終わりかなァ…」

砂浜には、防風林の向こうから女の足跡が点々とついている。
波打ち際のそこで仁王立ちになって、細い目の視線を暮れなずむ空と混じる海岸線に投げているのは、黄昏ているわけではなく

「――――…ホカホカ肉まんの美味しさが、ちょッと減っちゃうンだよなァ…」

胸に抱えている紙袋の中身の、美味しさについての演出を憂えていた。
……まあ、それも季節の移ろいに黄昏ている、といえなくもないけども。

兎も角も女は、溜息をつき終わるとついと顔を上げて辺りを見回して
波打ち際に丁度良さそうな岩棚を見付けると、そちらの方へ。
さくさくと音立てて歩く度、ちょっと沈む砂の感覚は、嫌いじゃない。

ホアジャオ > 軽い足音を立て、また砂浜に跡が続いていく。
岩棚まで辿り着くと、ぽんとその上に飛び乗って辺りの景色を見回す。
暮れ行く水平線までの間には何も遮るものもなく、海岸線を伝って行った向こうには、ちらちらと、漁村だろうか、灯りがちらほらと並んでいる。
満足そうに鼻息を漏らし、波の掛かるぎりぎりの端の方までいくとそこへ腰掛けて。
飛沫の掛かりそうな場所に足をぶらぶらさせながら、抱え込んだ紙袋から湯気の立つ肉まんを取り出す。

「―…好香 啊(美味しそう)ー…」

何のことは無い、空腹が最高のスパイスとは良く言ったもので
ぱくり、歯型を付け頬張って、もぐもぐとすればあっという間に上機嫌だ。

そうしてそのまま、暖かな湯気が見えなくなる位までは
三つ編みを風に揺らしながら岩棚でひとり、暖かな時間を堪能して…

ご案内:「セレネルの海 海岸」からホアジャオさんが去りました。