2019/11/22 のログ
ご案内:「セレネルの海 孤島」にスミさんが現れました。
スミ > 大陸から少しだけ離れた所にある、ごくごく小さな孤島。
なだらかな起伏が海面からせり上がって白い浜辺をつくって、その先には鬱蒼とした森が広がる。
その先を辿って行けば急激な岸壁がそそり立って台地を形成して、それが島の反対側まで続いている。
陸の殆どは寒風が吹くこの季節でも緑色に覆われて、遠目には白と緑だけの塊だ。

今その島の浜辺に、打ち上げられた流木に座って脚を投げ出している赤毛の女がひとり。
太陽は丁度午後の日差しに変わってきたところ。
その陽光を背後から受けながら、潮風に巻き毛を嬲らせている。
顔の半分はあろうかという眼鏡の奥では、明るい緑色の瞳が半分ほど閉じかけている。

「――――……」

唇が開きかけて、閉じられる。
ちらりと投げた視線の先、足元には大きなリュック。

(――――3日後に迎えに来てくれと、頼んであった筈なんだけどなあ……)

見渡す海面は穏やか。
カモメが時折飛来して、海面から光るものを掬ってはまた飛び立っていく。

(もしかして、大陸の方は荒れているのかな…)

遭難
の文字は、あえて思考に乗せない。

スミ > 足元の砂地をヤドカリが這って行く。
それに視線を奪われ、暫くそれが描く軌跡を追う。
その間にも陽はどんどん傾いている。
新たに小さな蟹がやってきて横切る、その影が伸びているのに気付いてはたと視線を上げた。
相変わらず、水平線には船影などかけらも見付けられない。

「―――まあ、いいか」

こうなったら今日は諦めて、遣り掛けだった調査を続けることにしよう。
気分が変わると、明るい緑の瞳が煌めきながらくるりと背後の森を振り返る。

――――なに、いざとなったら、この島の四季折々の変化を見届けてやろうじゃないか。
あの高台にはまだ登ってみていないし、あちらの反対側の崖にも鳥の巣があったっけ……

「ふっふっふ」

思わず漏れる含み笑い。
足元のリュックを取り上げるとよいしょ、と背負って
水平線にくるりと背を向け、さくさくと僅かな陰影を白い砂に残しながら浜から陸へと緩やかな傾斜を登って行く。
そうして薄暗い森の中へ、女の揺れる赤毛は飲みこまれて、消えた。

ご案内:「セレネルの海 孤島」からスミさんが去りました。