2019/11/02 のログ
ご案内:「セレネルの海」にジェイさんが現れました。
ジェイ > 夜半の岩礁地帯。
曇天の下、叩き付けるように打ち受ける波に岩が飲まれ、洗われている。
陸地からそう遠くはないが、急に水深が深くなる場所。
決して、気分の良い場所、という訳ではない。
そこに、大きな大きなトランクを手にやってくる。
幾重にも鎖で巻かれ、長さは1mを超え、幅も広い金属製のそれ。

「俺は運び屋ではないんだがな……。」

淡く、ぼやくような声が唇を割って零れ落ちる。
声を風に残して向かっていく先、ちょうど、この辺りで一番深い場所にまで辿り着けば
そのまま、勢いをつけてそこにトランクを投げ捨てる。
ドブッ――と微かに上がる水柱と海水の弾ける音が波のリズムを乱して響く。
見下ろす金色の視線の先――迷いなくトランクは沈んでいく。
それを見て、ひとつ、唇を割って吐息が零れ落ちた。

ジェイ > 沈んでいく金属のトランクに何が入っているかは知らない。
死骸か、表沙汰になってはまずい書類か、きっとそういう類。
金次第で何でもやる傭兵に頼まざるを得ないような代物。
碌なものでないことだけは間違いない。

「きちんと沈んだか確認してくれ、ということだったが」

言葉に出して、手順を確認していることにそんなに意味はない。
ただ、波打つ音に消えそうな存在感を確かめるような行為だ。
そっと、動かす両手。
まずは右手、指先から一滴、何かが飛んで小さな水音をあげる。
みちみちと水中で異形の魚のような形を作る――探査用の、小さな生物。
これで確認すれば十分だろう――とトランクを追いかける。
そして、左手。懐から取り出した紙巻き煙草を一本。
口に銜えれば、ふわりと赤黒い焔がまといついてそれに火が点る。
打ち付ける波の中は一服するのにあまり良い場所とはいえないが――仕方ない。