2019/08/23 のログ
ご案内:「セレネルの海」にジェイさんが現れました。
ジェイ > 月明かりを飲み込む黒い波が、岩に打ち付けて砕ける。
そうして与えられた潮を風が食んで陸へと舞って消えていく。
そこはそんな場所だった。
砂浜から少し離れた岩場。彼が佇む背後には海底へと続く洞窟がある入口。
なんでも、古代の遺跡があるだとか――詳細は知らない。
そこに派遣された調査隊の護衛――正確にいえば野営地の安全確保が今回の仕事だった。

「そろそろ約束の刻限ではあるが――」

言葉は風に砕けて、これは食まれもせずに砕けて消える。
視線は、洞窟の方を見ない。ただ、見つめるのは海の向こうだけ。
それでも、認識できるのだろう。
視線の届かない暗闇の中から戻って来る者がいない。
――正確には、戻って来る集団はまだいないということが。

ジェイ > 強い、風が吹いた。
帽子がそれに運ばれないようにそっと右手で抑える。
主達の帰りを待つテントが悲鳴を上げるようにばたつく。
横目で、それを見ながら――そっと、吐息を吐き出す。

「どうやら、前金以上の報酬は期待しない方がよさそうだ――。」

独り言は洞窟に吸い込まれて、反響して消えていく。
此処に乗り込む際の、メンバーの顔を思い出す。
彼らの運命に黙とうを捧げる義理はないし、つもりもない。
奪う側と奪われる側がまるでコインの表裏のようにくるくる変わるのは世の常だ。
故に、ただ、約束の刻限まだ待つだけ。

――その意味はもう変わってしまっている。
戻って来ると約束した時刻、ではなく、ここまで待てば撤退するという刻限に。

ジェイ > そして、その刻限が来るまではこうして黒い男は待ち続ける。
結局、全滅というささやかな結末を持ち帰るために。

ご案内:「セレネルの海」からジェイさんが去りました。