2019/08/16 のログ
ご案内:「セレネルの海」にオリヴィエさんが現れました。
オリヴィエ > 少し離れた高台に宿場の明かりが見える。
人けの無い浜辺を歩く少年の姿は、服装の所為で夜闇に溶け込んでしまいそうだった。

「やれやれだなあ、宿が満室だなんてさ」

バカンスの季節だからか、どこかの富豪が宿場で宴を開いているらしい。
立ち寄った際に時々利用している宿が、今日は満席だった。
暫くしたら空き部屋が出るかもしれないから、そこいらで時間を潰してきてくれ、
と店主に言われ、こうしてぶらぶらしている。
空き部屋が出るかも……かもという部分が不吉だったが仕方ない。
宿場界隈には普段見かけない富裕層が練り歩いていて、居心地が悪いというのもある。

オリヴィエ > ……と、視界の端にきらりと光る物を捉える。

「ん──」

光ものに弱い少年、流石に期待があってではないが、そちらに軌道修正。
昼間の熱が残る砂を踏んで向かった先で、足を止め、

「……これは、なんて言ったっけ。ええっと、そう、ボトルメール?」

中に折り畳んだ紙片が確認できる、ラベルを剥がした空き瓶。
洒落た事をする奴もいたもんだねえ、と呟き、つま先で砂を掘り……
ボトルメールをそこに落とすと、砂をかけ直す。

「よし」

ごく自然に、何処の誰とも知らない相手に嫌がらせをして、再び歩き出し。

ご案内:「セレネルの海」にファイネアさんが現れました。
ファイネア > そんな少年シーフから少し離れた所から近づく気配。
ざり、ざりと靴に砂を噛ませながら海岸を歩いてくる。
手には小さな明かり。小型のランタンをぶら下げていた。

「……はぁ~……。」

どこかうんざりとしたようなため息を吐きながら、ぱさりと軽い汗で張り付いた髪を流す。
姿はどこかのパーティから抜け出してきたようなドレス姿にハイヒール。
ドレスの背中はぱっくりと開いており、白い肌をそのまま覗かせている。

特に少年に気づいた気配はなく、ふと足を止めて海側を見る。
そして、ふん、と小さく鼻を鳴らす。
気楽でいいわね、くらいの表情がうっすらとした明りに浮かんでいるだろう。

オリヴィエ > 何時になったら宿に戻ろうかなあ、夜の海をただ歩くだけって退屈だなあ、
と内心で同じことばかりずっと考えていると……

今度こそ、はっきりとそちらに視線を吸われる。
手に明かりをぶら下げた人影が、遠くから近づいてくるではないか。
自分の方に向かってきてはいないが──さて?
と、その場に立ち止まって目を細める。夜目をこらし……

「ふうん? 何だか溜息ついてら」

職業柄、耳は良い…こちらに向かって来る潮風に溜め息が乗っかっていた。
とりあえずドレスを着た女性だとうかがえた。
金持ちの類か? ということは、カモ?
しかし、過度な期待は厳禁。ああいう恰好をしている女は大金を持ち歩かない。
脅して部屋まで金目のものを盗りに行くのも、場所がよくない。

「こんばんわー。どうしたの?」

まあ、取り敢えず暇だし、という理由で近付き、声を投げかけた。

ファイネア > 富豪のバカンスに誘われ護衛ついでに同道したのはいい。
報酬が結構出るのも悪くはなかったが、パーティの内容がイマイチであった。
豪華絢爛ひけらかすのは結構な事だが、自慢話にまで延々付き合わされるのはたまったものではない。
折を見て抜け出してきたのが真相という話。

「……?」

それで潮風に当たりながらため息をついていれば、かけられる声。
少し高い、しかし男の子の声という印象は持った。
そちらに明りを向ければ、暗色の装備に身を固めた少女のような少年であった。

「こんばんは。パーティから抜け出してきたの。退屈だったから。」

ね、と自分の恰好を示しながらくるりと一回転。
ふわりと女性らしい香りと、背を向けた際に覗く白い背筋。

オリヴィエ > 彼女の返答を聞いて、少年はふんふんと頷き、
此処からだと少し離れた所に見える、宿場の明かりを一瞥。

「お姉さん、センスがいいね」

と、一言。
あんな成金臭いパーティを楽しむような輩は、気にくわない。
勿論、自分にとって金づるになる成金なら大歓迎だ。
メリットになりえない成金などこの地上から滅び去って欲しいくらいだ。

突然センスがいいと言われても困るかもしれないが、
特にセンスがいい根拠を並べ立てるわけではなかった。一応理由がある。
目の前で優雅に身を翻す女性のうなじと、ふわりと漂った芳香に意識を奪われたからだ。

(なんだろう、ハタチ……は過ぎてないよね、この人。
なんか、妙にこう……なんだろ、セクシー? な感じがする。
うーん、どうしよう。これはもう、襲っちゃう……か? いや、腕が立つ相手だと困る……)

対人用の笑顔を浮かべたまま、不埒な思考を繰り広げる。

ファイネア > 少年の声にくすっと笑う。
抜け出してきたのにセンスがいいとは。少し可笑しくなってしまった。
ドレスの事をほめられたのかしらね、とも思うが…。
しかし、くるりとターンした際に続く言葉はやってこなかった。

「…どうかしたのかしら?」

別に内心を鋭く察知したわけではない。
しかし二の足を踏む少年を押しとどめるように声をかける。

ランタンの明りはほんのりと二人を照らしている。
少年の視界で黒いドレスの独特の艶がうねるように蠢く。
薄明りの中での艶めかしい煌めきは理性と判断力をゆっくりと溶かし、徐々に陶酔感と多幸感を与えていく蛇妖の鱗。

―――あんな脂の塊よりも、ずいぶんと美味しそう。

少年を一目見た時から、女はそう考えていた。

オリヴィエ > 「……──はっ」

どうかしたのかと問われて、五秒くらい間があったかも知れない。
何だか、調子が変だ。
体調がどうとかではないが、言葉にも出来ないが、何か……
体の中の歯車がひとつ、不具合を起こしているような?

シーフというコンディションに敏感な職業だからこそ気付いた違和感。
しかし、それ以上思考を勧めるには別の職業の知識が必要だったかも知れない。
警戒する事もなく、少年は目の前でうねりを見せるドレスを見詰めた──
見詰めてしまった。

それこそ、巨大な生き物の体内でゆっくりと消化されるように、
少年はその女の前でぼうっとした表情で突っ立っている。
それは、至高の芸術を鑑賞している観客のように陶然とした有り様。

ファイネア > 鱗の特性は十分に表れている。
とろんとした表情の少年は可愛らしい顔つきをしている。

―――たまらない。

内心で舌なめずりをしながら、少しだけあった距離を詰めていく。
少年に密着するような間近の距離。
視界の中でゆったりと腰部をくねらせていく。
魔の舞踊は魔力を宿し、少年の情欲に直接訴えかけていく…。

「…襲いたい。って思った?」

そっと囁く甘い声。蕩けた理性を一瞬だけ引き戻し、情欲を自覚させる。
すっとドレスの裾を片手で持ち上げていく。
真っ白な右の脚がゆっくりと、足首からふくらはぎ。刺青の刻まれた太腿が露わになっていく…。

オリヴィエ > 単なる餌食としか相手を見ていなかった少年は、
今まさに自分が餌食となり。それを自覚する事すらなく──

ご案内:「セレネルの海」からオリヴィエさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」からファイネアさんが去りました。