2019/04/08 のログ
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > ごく薄い月の夜、王都からもほど近いセレネルの海の浜辺。
昼間は漁師や浜で遊ぶ子供などが見られる場所も、夜ともなれば人気はない。
ただ、時折遠くで海鳥の声が聞こえるのみだ…
その場所へ…防風林を抜け、カンテラの灯りがふらりと迷い込むように現れる。
灯りを手にしているのは、赤銅色の肌を持つ黒髪の女だ。
さく、と軽い音を立てて砂地へ踏み込むと、吐息をついて水平線へと翠の双眸を向ける。
「……雲は、無いんだろうけどな……」
―――黒々とした夜天と、海の果てとは混ざり合って…どこからがどちらなのか、俄かには判じ難い。
しばらく凝らすように見つめた後、また軽い音を立てながら、波打ち際の方へとゆっくり、歩みを進めていった。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にロズさんが現れました。
■ロズ > 「……お」
寛いだ様子で砂浜に座り込み、水平線を眺めていた男が視線を投げた。
外套のフードを落としながら何の気なしに声を掛ける。
夜目が利くので相手の顔はすぐに分かった。
「こんな時間に出歩いてると危ないぞ」
もっとも、そんな心配が無用なことは知っているのだが。
夜に出歩く女性に掛ける言葉としてはまあ、こんなものだろう。
■ジナイア > 他に人が居るとは予想していなかった。
夜闇の中、手にしたカンテラのせいもあって相手を失認したらしい…
内心苦笑を漏らすが、兎に角敵意のない声の方へと翠の双眸を転じた。
「…やあ。暖かい日だったから、ついね…
危ないというなら、キミもそう変わりはないと思うけどな…」
相手へ近寄ろうかどうしようか…逡巡しながら、手元のカンテラを見て、また相手の方へと視線を放った。
「…キミは、地元の人間かな?」
■ロズ > 顔を知らなければ気配を殺したままでいただろう。
カンテラの光に眩しそうに目を細め、翡翠の双眸が向くのを見返した。
「こう見えても傭兵だ。荒事には慣れてる。
……別に取って喰ったりはしない。女の一人歩きには護衛がいるだろ?」
くっくっと笑って、座ったらいい、と首を傾けて近くの砂地を示す。
傭兵という名乗りがどれだけ信用を得られるかは自信がなかったが。
「ああ、まあ、半々ってところだな。王都とあちこちを行ったり来たりだ。
そういうあんたは……南国の出か?」
■ジナイア > くつくつと笑う相手。
女はふ、と翠の双眸を綻ばせる。
「生憎、護衛が必要なほどか弱く出来て居なくてね…厚意だけ、頂くよ」
傭兵というのが本当かどうかは不確かだが、手練れであろうこと位は彼の気の張り様で解った。
緩急が実に、しなやかだ…思わず、熟れた唇を綻ばせながら、彼の傍へと足を踏み出していく。
「そうか…
ああ、南の…遠くだな。あまり此処とは国交がないくらいに」
傍へ辿り着くと、彼を一度照らして目を細めて…それから視線を水平線の方へと。
「何をしていたんだ?」
面白いものでもあるのか?と言うように首を傾げて、再び彼を見た。
黒髪がストールから零れて、金の輪の耳飾りが、浮かび上がるように揺れる。
■ロズ > 「そいつは心強いな。いざとなったら護衛を頼んでも?」
だろうな、とは口には出さずに冗談を返して肩を竦めた。
どこを信用されたのか傍へやってくる女に、内心で少しだけ驚く。
まあ、彼女がか弱くないことは身を持って知っているので、不思議ではなかったが。
「もし月が出ていても見えないくらいか。一度見てみたいもんだ。
ああ……ちょっとな、仲間から連絡が来るのを待ってた」
ストールから艶やかな黒髪が零れ、揺らめく耳飾りに一瞬視線を奪われる。
その熟れた唇が綻んでいるのを認めればこちらも妙に気が緩み。
「美人だったんだな、あんた」
思わずといった調子でぽろっと口にしていた。
■ジナイア > 「…高くつくぞ、私は」
軽口を返してくすり、と笑う。
彼の返答に、そうか…と零して、また水平線へと視線を戻した。
星の瞬きに、波の煌めきくらいは見えないものか…
「海辺での逢瀬とはまた、乙な連絡方法だな…うん?」
聞こえた軽口に、苦笑めいたものを浮かべて視線だけを彼へ注ぐ。
「…外国人だからかな。少し変わっているから、珍しくてそう思うんだろう…」
溜息めいたものを漏らすと、カンテラを地面に置き、彼の側へ腰を降ろす。
そうして海風に、翠の双眸を細めた。
「…あまり、こちらの海には馴染みがまだなくてね。
岩礁というものを初めて見たよ…キミは、海の近くの出かな?」
もしそうなら、少し、何かしら聞いてみようかと。
■ロズ > 「くっ、だろうな」
今度こそはそう言った。笑いながら水平線へ視線を戻す。
見る物もない黒々とした海だが、時間というものを吸い取ってくれる価値はある。
「この時間は人目につかないからな。だからって逢瀬はないだろ」
よしてくれと仲間の強面を思い出して額を抑える。
溜息めいたものを漏らして側に腰を降ろす女を横目に見やり。
「珍しいのはそうかもな。……岩礁のない海なんてあるのか?
ああ、ここの近くじゃないが、海に突き出したような土地に住んでた。
――おっと、俺はロズ=ハーヴェルだ。名乗りが遅れた」
■ジナイア > 額を抑える彼を横目にくすりと笑みを零す。
また視線を転じて、黒い風景を目を凝らすように見ながら、膝を抱える様に手を組んだ。
「誰もがひとが居ないと思って、案外集まって来てるのかもしれないな…私みたいに。
ああ、私の知っている海は、見渡す限りずっと白い砂地だったよ。
白くて眩しいのはいいが、此方と比べると殺風景に思えるな…」
組んでいた片手で、海風でなぶられた黒髪を抑える。
それから名乗る彼へと顔を向け
「―ああ、私は『ジナイア』という。…『ジナイア・イフリータ』だ」
笑みこぼして、髪を抑えていた手を差し出した。
「そうか…実家は、海の仕事でもしていたのか?」
■ロズ > 「なるほど、そういうこともあるか……面白いな。
砂漠ってやつだろ。何かの本で読んだ。巨大なミミズが泳いでるって話の信憑性は?
――そいつは見慣れちまってるからだろ、きっと」
海風になぶられる白髪はそのままに、名乗りに顔を向けて握手に応えた。
「よろしく。ジナイア。あー……一応、その土地の領主だった。没落したけどな。
よくある話だから気にしなくていい。魚と酒が美味いところだ。良い所だよ。
ところで何のために王国に来たんだ? 身のこなしからして素人さんじゃないだろ」
土地の名前を告げながらそんなことを問う。
■ジナイア > 「巨大な…ミミズ?蛇なら、居たが……」
何だそれは、と眉を顰めてから軽く微笑む。
握手の手を引きながら、彼の出自を聞くと少し、首を傾げる。
また黒髪が零れて、金の耳飾りが揺れた。
そのまま考え込むような視線をまた、水平線の方へ。
「……こちらの国も、大変だな…。良い所だというなら、今度行ってみるよ。
…私は単なる、物見遊山だ」
深い理由なんてないな、と微笑って彼に視線を戻して…
「…もしかしてキミは、結構この国に詳しいのかな?
もしそうなら、キミのお勧めの場所でも教えてほしいな…」
■ロズ > 「……ないのか。一度乗ってみたかったんだけどな。
――代官みたいなもんだ。そう大したことじゃない。
ほとんどの貴族は王都で安穏としてるさ――来たばっかりか?」
髪をくしゃりとやって拗ねた顔をしつつも、すぐに気を取り直す。
口ぶりからしてそうなのだろうと判断し、続いた言葉には苦笑を浮べた。
「詳しいってほどじゃないが、それくらいなら。
ただなぁ……俺の知ってる店はご婦人には中々……。
いや、九頭龍の水浴び場はどうだ。王都の近くなら水遊場もある。
南の国の人にとってはちょっと珍しいんじゃないか?」
■ジナイア > 「…居たとして、ミミズなら地中に潜ってしまうと思うが……」
どう乗りこなすつもりだったのだろう?一瞬きょとんと瞬いてから、はは、と軽く笑って口元を抑える。
その瞳をまた、彼に戻して
「ああ、この前の冬くらいに。
温泉は、この間少し覗いてみたよ…あまり私は、大衆浴場向けではないみたいだな。
……水游場、ね」
言葉の後半、途切れたそれのまま、少し考え込む視線を下に。
確かに、まだ行ってみた事はない……泳げないから。
「……考えておこう」
非常に重々しい声。
■ロズ > 「俺の読んだ本だとこう……ん? 本当にどうやって乗ってるんだ?」
今頃のように挿絵の不合理さに気付いて首を傾げる。
気恥ずかしさに頭を掻きながら、視線を向けて。
「となると、おすすめ出来るのはダイラスの闘技場ぐらいか。
――泳ぎくらいなら教えられる。なに、簡単だ。息を止めてれば勝手に浮く」
重々しい声を聞いて意外な弱点だなとくつくつと笑い。
■ジナイア > 彼の気恥しい様子に、くすりと熟れた唇が笑みこぼす。
まあ、小さなころに読んだものへの憧れの気持ちは、解る…
「闘技場も、一度拝見したがね…
私が顔を出したときは、あまり趣味の良い出し物ではなかったな」
残念だが、と心底残念そうに吐息を零した。
次いで、あっさりと泳ぎの事を看破されたのに軽く目を見開き…そうして笑う彼にむっつりと
「……浮くだけなら、出来る。
何故か泳ごうとすると、沈むんだ……」
言っている間に思い出したらしい。
腕組みをすると心底不思議そうに、何故駄目なんだろうか、と首を傾げた。
■ロズ > 「そいつは運が悪かったな。
健全なものなら結構見応えあるんだが」
確かに、奴隷と猛獣を戦わせるような悪趣味な催しも多い。
「はは、泳げない奴を誘うと同じようなことを言うんだ。
考えておく。腹が痛い。今度は頭痛が……ってな。
……しかしまったく泳げないってのは珍しい」
揃って不思議そうに首を傾げる。
何かの呪いかとも思ったが、それを口にするのは憚れた。
「ひょっとしてあれか。脂肪は浮く。筋肉は浮かない。そのせいか」
そのようなことを海戦を得手にしている傭兵から聞いたことがあった。
どうやってそれを彼が知り得たのかは、やはり口にするのも憚れたが。
「いや、浮きはするんだよな……うーん?」
■ジナイア > 「『健全』ね…まあ、また顔を出してみるかな…」
苦笑めいたものを浮かべて軽く頷く。
泳ぎについては揃って首を傾げて…妙案が浮かぶ筈もなく、溜息と共に手を後ろへついて天を見上げた。
真っ暗な中、ちらちらと輝きが見える…
「…そんなに、筋肉ばかりの身体になった覚えもないんだけどな…
まあ、今年の目標にでもしておくよ。あそこは年中泳げるんだろう?」
溜息をつくと、立ち上がる。
そうして嬲られた黒髪を片手で直すと、カンテラを拾い上げて緑の双眸を彼に下ろした。
「そろそろ、街の方へ戻るとするよ…逢瀬の邪魔になるのも悪いからね」
■ロズ > 含みのある言い方に片眉を上げてみせた。
どうにも健全という言葉について齟齬があるらしい。
勝者が敗者を、なんてのは戦場でも何処でも当然のことだと思うのだが――
「俺も南国に行ってみたくなった」
ちらちらと見える輝きを見て、それから立ち上がる女を見上げる。
「だろうな。そうも見えない。ああ、俺もたまに通ってる。
会えたらまた首を傾げながらでも泳ぎを教えるよ。
――だから逢瀬はやめろって」
耳の後ろを掻きながらばつが悪そうに水平線を見やる。
気を遣わせたな、と礼を告げ、小船の影を見つけて立ち上がる。
「またな、ジナイア」
■ジナイア > 「向うも気候はいいからね。寒い時期にでも行ってみるといい」
もしかして、ミミズも見つかるかもしれないしな…と肩を揺らして。
バツが悪そうな様子に、含み笑いのようにして微笑みを零してひとつ、頷く。
「ああ、その時は頼むよ。
…またいつか」
その言葉を零して一瞬、訝しげな表情を作ってから…一つ瞬いて、踵を返す。
さく、と軽い音を立てて、元来た方へと…
ご案内:「セレネルの海 浜辺」からジナイアさんが去りました。
■ロズ > 「寒いのは苦手だから助かる」
そう言ってから、訝しげな表情に少しだけ眉を下げ、立ち去る背中を見届けた。
二つの顔があるのも面倒だな、と内心で今更なことを思った。
砂浜に乗りつけた小船に近寄って仲間と囁き合う。
「九頭龍山脈か」
それから小船が一人の男を乗せ、青づき始めた海原へと進んでいく。
逢瀬という言葉が耳に残っている。がし、と痛くなるまで耳を掻いた。
ご案内:「セレネルの海 浜辺」からロズさんが去りました。