2018/10/17 のログ
ご案内:「セレネルの海/小さな入り江」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーざざん、ざざん…ぽろん。

波間に響く、音色があった。
それはやけに澄んでいて、潮騒に抱かれ寄り添うような…ただただ優しい囁き。

よく、海には歌う魔物が出るという…ハーピー然り、セイレーン然り。
けれど、その日歌っているのはそのどちらでもなく…焔のような髪を風に靡かせ、静かに目を閉じた女であった。
その腕には真珠色の竪琴…あるはずの場所に弦はなく、代わりに光の糸がピンと張られている。

竪琴が普通でなければ女も普通じゃあない。
弦を弾く爪は漆黒、尖った長い耳に真紅の角…間違いなく"ヒト為らざる何か"である。
妖か、精霊か、はたまた魔族か…浅瀬に突き出た岩に腰掛け、竪琴を弾きながら異境の歌を口ずさんでいる。

一つ確かなのは、その"何か"の纏う空気が何処までも穏やかで…まるで土地の一部の様にどこまでも自然だという事。
"ただ其処に在る"というような…少なくとも、害意は微塵も感じられない。