2018/09/18 のログ
ご案内:「セレネルの海」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーざざん、ざざん…ぽろん。

波間に響く、音色があった。
それはやけに澄んでいて、潮騒に抱かれ寄り添うような…ただただ優しい囁き。

よく、海には歌う魔物が出るという…ハーピー然り、セイレーン然り。
けれど、その日歌っているのはそのどちらでもなく…焔のような髪を風に靡かせ、静かに目を閉じた女であった。
その腕には真珠色の竪琴…あるはずの場所に弦はなく、代わりに光の糸がピンと張られている。

竪琴が普通でなければ女も普通じゃあない。
弦を弾く爪は漆黒、尖った長い耳に真紅の角…間違いなく"ヒト為らざる何か"である。
妖か、精霊か、はたまた魔族か…浅瀬に突き出た岩に腰掛け、竪琴を弾きながら異境の歌を口ずさんでいる。

ただ一つ確かなのは、その"何か"の纏う空気が何処までも穏やかで自然だという事で。
"ただ其処に在る"というような…少なくとも、害意は微塵も感じられない。

ご案内:「セレネルの海」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

男が一人、海を見ながら歩いている。
まさにセイレーンに誘われるかのように。
音に、美しい音色に近づいていく。

そして、その姿を見れば。

「こんなところで一人なんて。
 もったいないな、美しいお嬢さん」

そう。声をかけた。優しく微笑みながら。慈愛に満ちた声で。
男が何を思っているかは不明だろうが。
その声と眼差しは、男らしくない。
心からのやさしさがあった。

ご案内:「セレネルの海」にセイン=ディバンさんが現れました。
紅月 > 竪琴の音色が潮風に溶けるように止まり…ふるり、と、睫が揺れる。
まるで優しい声に起こされるようにゆっくり目を開けば…そこには"ちょっぴり特別"な友人の姿。

暫く目を閉じたままにしていたのか、ぱちぱちと伏し目がちに瞬き…世界を確かなものにしてから、もう一度、男をしっかりと視界におさめる。
その笑顔に嬉しげな微笑みを返しながら、先程まで歌を囁いていた唇は言葉を紡ぐ。

「……、…セイン、おはよう。
…あら?今日は着流しじゃないんだ?
ん、やっぱりセインはきちっとしたお洋服がよく似合うねぇ」

時計を見るでもなく、ただひたすらに竪琴と潮騒に意識を向けていた為…まさかすっかりお昼時だとは思っておらず。
純粋に視界に飛び込んできたモノ…とりあえずは男の服装にふわりと笑みを深めて感想を述べる。

「…初めて会った日、その服だったよね?」

椅子代わりの岩から下りて、パシャパシャと浅瀬を男の方へと歩み寄る。
…男の側には初めて会った日のように、ブーツが無造作に転がっている。

セイン=ディバン > 相手との距離は、おおよそ2から4メルトルほど。
男も相手も、その気になって一足飛べば詰まる程度の距離。
相手が微笑み、語りかけてくれば。
男もまた、笑顔を強め。

「やぁ、おはようさん。
 あ~。最近ちっと、寒さキツイ時ねぇ?
 だから、ぼちぼちいつもの格好にしようと思ってな」

指摘されたことについて説明しつつ。距離をつめ。
相手に近づいていく男。なんとも、もどかしくも暖かな空気。

「あぁ、そうだったな。そんでもって、場所もこの辺りだった。
 ……懐かしい、って言っていいのかねぇ」

相手が近づいてくるのを見て、出会いの日を思い出す。
あの時は、こんなに縁が続くなんて思ってもいなかった。
冒険者稼業など、いつ新でもおかしくない仕事なのだから。

「……どうしたんだ。今日は。こんな所でぼーっとしてるなんて」

そう尋ねたのは、社交辞令半分。相手のことが知りたいの半分というところで。

紅月 > 「嗚呼、確かに…風もすっかり秋の色だもんねぇ」

互いにゆっくりと歩み寄る…少しずつ縮まってゆく距離。
楽しげな笑みが懐かしさに染まる…少なくとも、男との出会いは女にとって大事な思い出の一つだ。

「まだちょっぴり早いかも? …でも、懐かしいねぇ」

竪琴を小脇に、左手で口許を隠しながらクスクスと笑えば…まだ波に足首を擽られながら彼へと目を向けて。

「ん、いやぁ…気晴らしかなぁ?
ちょっとね…あぁ、この子を弾いてやりたかったのもあるし」

見る?と、竪琴を差し出す。
人魚から貰った魔楽器、それも海底製となれば中々のレア度のマジックアイテムだろうか。
ヒョイッと気軽に手渡そうとする辺り、曇り無い信頼がそこにあるのが伝わるだろうか。

「…ほら、最近遺跡からワラワラと出てきてるでしょ?
襲われるの他人様に見られると面倒だからさ、ずーっと王都に引き籠ってて…気が滅入ってきちゃったのよ」

セイン=ディバン > 「本当にな。いつの間にか、ってやつだ」

季節が変わるのを感じ、時が流れているのを実感する。
年を取るはずだな、と苦笑しつつ。

「そうかね。随分前のことだと思ったが……」

最近、時間が流れるのが早く感じるな、と思うが。
それもまた人生か、と。

「……気晴らし?
 ん……こりゃあ……。おいおい。
 これ、マジモンのマジックアイテムじゃねぇか」

男は相手の言葉に疑問を抱くが、差し出された竪琴に触れれば。
驚きに目を見開く。それは、男の鑑定スキルによれば間違いなく逸品。
かなりのレベルのものだと分かり、すぐに相手に返す。

「あぁ、カラクリ細工なやつらか?
 オレぁあの件からは手を引いたよ。明らかにレベルが違う。
 俺みたいな半端モンじゃ太刀打ちできねぇ」

相手の言葉に、男は苦笑する。
最近話題の事件は、金にならぬと判断してのことだが。
男は、相手の頭をなでながら微笑み。

「……」

ただ、じっと相手を見た。

紅月 > 「ふふっ…時が短く感じるのは、楽しい証拠!」

充実してるねぇ、なんて付け足すと愉快げに笑って。
次いで、何の気なしに渡そうとした楽器に男がギョッとしたのを見れば、一瞬不思議そうに…

「……あ、そういやコレ中々地上まで上がって来ないんだっけ。
…一応セレネル製なのよ?」

うっかりうっかり、である。
…これを街でやらかすと希に付け狙われたり色々面倒が起こるが故の、というのも含めた海辺の密やかな演奏会ではあるのだが。

「そうそう…いやぁ、私も手を引きたいんだけど、奴ら魔を感知して襲ってくるのよね。
私なんか半端に安全と危険を併せ持ってるようなモンだから…なんか変な挙動しながら群がってきてさ、何もしてないのにヒドい目に遭ったぞ」

苦笑に苦笑を返しつつ脱力する。
いっそ魔寄りでもいいから極端な反応をしてくれればまだ挙動が読めるのに。
頭を撫でられ目を細めつつに、思わずボヤく。

「……ん、なぁに?どうしたの?」

見詰められれば視線を絡めつつ、首を傾げる。

セイン=ディバン > 「……俺ぁ自分が年をとった証拠だと思うよ」

相手の言葉に、男は苦笑しながら頭を振る。
正直、最近衰えを実感しているのだ。

「いやぁ、ちょっとしたモンだぞ?
 魔力を流し込んで演奏すれば、様々な奇跡が起こせる。そんな感じの力を感じ取ったけどな」

マジックアイテムには様々な効果がある。似た道具でも、効果が大きく変わる物も。
男はシーフ・レンジャーとして経験を積んでいるので、宝物をすばやく鑑定することができる。

「なぁるほどね。そりゃあ大変だ。
 ……しばらくは、フィールドワークは辞めたほうがいいな。
 たとえば、こんな場所で一人でいるなんてもってのほかだ」

なるほど。やつらの行動パターンの一つはそういうことか、と。
男はその相手の言葉を脳に刻む。有益な情報だぞ、と。
しかして、相手に尋ねられれば。

「……この間の、ことなんだけどさ」

男は、踏み込んだ。前回の逢瀬のことを。
そして、自分の言葉のことについても。
男の視線は、相手の手に。左手、薬指。そこを見ている。

紅月 > 「トシって、またまたぁ…」

苦笑に対してクスクスと笑い…密かに"老いて尚壮健"になりそうだな、なんて微妙に失礼な事を頭の片隅で思うのだ。
…何がって?ナニがです。

「おおっ、さすが…シーフスキル持ちは違うなぁ。
…ん、そんなとこ。
とりあえず私が特定の音色を弾くと、人魚達と若い海竜が来るよ」

つまりは貴重なマジックアイテムを呼鈴代わりにしてしまっているのだが…まぁ、異種族差別の強いマグメールでは、ある意味正しい使い方とも言えるのだろう。
個人の肉体から捻出される魔力は、やはり指紋や筆跡のように癖があるのだ。
…その魔力が弦を作り音色を作るのだから、聞き分けが出来るならこれ以上に安心安全な目印はない。

「ぇえ~…これでも頑張って我慢してるんだって……喜びヶ原も遺跡も占拠されて、仕事も遊び場も制限されるしさぁ。
…妖精や精霊は自然が身近にないと調子狂うんだって」

心底辟易しているとばかりの声色とげんなりした顔…この女にしては珍しい表情やも知れない。
しかし、トレジャーハンターとしても体調的な事としても問題なのだから…たとえ相手が意思のない絡繰だとしても、不満をぶつけたって罰は当たらないはずだ。

そんなムスッとした表情も、男の真剣な表情を見ればキョトンとしたものに変わる。

「……あー…うぅん、そうねぇ…?」

男の言葉に、相変わらず何処か緩い調子ではあるものの…何を言うべきか、何から言うべきか、困ったように口ごもる。
…彼の視線の先には、指輪は無い。

セイン=ディバン > 「いや、まじで……。
 最近体ダルいしよぉ……」

相手の微笑みに、男は手のひらをひらひらと振る。
事実、最近は仕事の後の体力回復がかなり遅いのだ。

「メシの種だからな。磨きはかけてるさ。
 ……へぇ。すごいな。……つまりは、呼んだ人魚たちと。
 ガールズトークとか?」

人魚や海竜が呼べるなら、海を渡るときにさぞ安心できるな、などと思いつつ。
まさか、人魚たちとガールズトークとかする為だけに使っているんじゃあないか? なんて。ちょっと追求してみる。

「あぁ、そういやそうか。……つっても、やつらとやりあってたら消耗するだろ。
 ……せめて、誰か護衛をつけろよ」

相手の状況や事情も分かるので、そこはあまり強くは言わない。
無理をしなくてはいけない状況がある、というのも理解しているからだ。

「……お紅。それ、どうしたんだ。
 指輪……」

男も同様。何を言ったらいいかわからない、という状況で。
相手の指に、指輪がないのに気付けば、すぐにそれを尋ねてしまっていた。
尋ねてから、しまった、と後悔もするのだが。今更遅い。

紅月 > 「ん、怠いの…?
まぁ…季節の変わり目だし、余計になぁ。
…あっ。セインセインっ!」

一度首を傾げると、けれども納得したように呟いて。
次いで何やら閃いたと言わんばかりに表情が輝けば名を呼んで、顔を寄せてもらおうとし。

「……っ!?
…な、っ何で…わかったの?」

してます、ガールズトーク…むしろそれが本命です。
…とは言えず。
しかし事実故に否定も出来ぬ上、何せ水とは相性がイマイチな事もあって遊び以外で人魚達を呼ぶことも少なければ認めるしかなく…とりあえず質問で返してみる。

「あー、バッチリ消耗するわねぇ…彼奴ら、魔族相手だと急にギラギラ殺る気満々で強くなるからキライ。
護衛、護衛かぁ…索敵持ちが居れば遁術や姿隠しの魔法とかに集中出来て気が楽ではあるけど。
…少し考えてみるかな」

正直、そういった"目がいい仲間"が居るだけで状況が変わる事は少なくないのだから、と思えば…男の指摘は極めて正しいアドバイスで。
別段、特別目がいい訳でなくとも、己が補助魔法や付与をかけておけばいい話。
…たまには誰かに寄り掛かるのも悪くない、かもしれない。

「……、…えぇと、うん。お別れ、してきた!
ちょっとね、御互いが互いらしい理由でね…譲れないモノとか、あってさ。
…いやぁ、やっぱり異種族間の恋って難しいのかねぇ?」

ストレートに指輪の事を訊かれれば…彼の視線から逃げるように、クルリと背を向け海を眺めて。
…最早開き直るしかなかろうと、己もストレートに答える。
その声は明るく、もう済んだことだとばかりに。

セイン=ディバン > 「あ~。それもあるか?
 ……って、なんだ?」

確かに。それも一因か? と考えていれば。
名前を呼ばれたので、相手の方を見るのだが。

「……わからいでか。
 女ってのは複数人集まるとものすごい会話パワー発揮するだろ」

言われんでもわかる、とばかりに。
男は、くつくつと笑うのだが。まぁ、なかなかかわいらしいことだ、と。
わいわいと話す相手と人魚たちを想像してさらに笑う。

「だろう? ……まぁ、お紅なら負けるってことは無いだろうけどさ。
 あまりリスクを負っててもキリねぇぞ?」

消耗しないために外に出て、なおさら消耗してたら意味無いだろう、と。
男は、相手にそう語ってみるのだが。
こればかりは相手次第なのでどうしようもないポイント。

「……そう、か。
 え、っと。もしかして、俺が原因なら、スマン。
 今からでも俺、あの人に詫びに……」

相手の言葉を聞き、男の表情が曇り。
もしかして、あの宿のことが原因では、と思い。
男は踵を返そうとするのだが。

紅月 > 「んー……っ、んっ…ふ、はぁ…
……えへ、ゴチソウサマ?」

今日の彼の服装は執事の其れ…つまり首許に丁度いい紐、もといネクタイがある。
男との距離を軽く詰めつつネクタイを掴み、逃がさないようにしてから目を閉じ口付ける。
別に、ただ単にひっつけば良いのだが…やはり此方の方が確実に、内側から素早く癒しの力や生命力を流し込めるのだ。
ついでとばかりに歯列をなぞり、軽く舌先を掠めて唇を離せば…掴んでいたネクタイの辺りをポンポンと叩きつつに恥ずかしげな笑顔を向けて。
…少しは彼の疲れが取れてくれればいいんだけど。

「あ、あはは…井戸端ならぬ海端会議だけどね?
海底遺跡っぽいモノの情報貰ったり、彼女達のアクセサリーに魔法付与する代わりに貝や真珠を貰ったり……こ、恋バナ、とか…」

女の情報交換は、たまに酒場での情報収集を凌ぐ成果をあげる事がある。
紅月のそれは陸の情報ではないものの、交易品の入手やマニア向けのコアな情報という意味では上々…趣味から儲けが出るのだから美味しいものである。

「うー…確かに。
人間巻き込んじゃマズイかと思ってたんだけど、よく考えたら魔族の傭兵辺りを探せばいい話だもんなぁ…盲点だったわ」

私とした事が…と、苦笑をひとつ。
まだまだ至らないなと反省しつつ、帰ったらギルドに顔出そうと心に決めて。

「ちょおっとお待ちな。
…セインとの縁が、全く関係ないとは言わない……言わないけど…選んで、決めたのは、私。
セインは全く悪くない」

はしっ、と、振り返り様に男の袖を軽く掴む。
真っ直ぐに彼を見据えて言う。

セイン=ディバン > 「ん~? っ……。
 ……オソマツサマデシタ」

顔を近づければ、いきなりネクタイをつかまれ、唇を奪われ。
そのまま、相手に体の疲労を回復してもらったのだと気付けば。
男は、視線をそらして、口元を押さえつつ赤面。
いきなりのキスだの。そんな不意打ちには弱い。

「新しい単語だな、それ。
 ふ~ん。楽しそうですこと。……恋バナ、ねぇ」

女性同士の会話を想像し、男は苦笑する。
この相手もそうだが、人魚の恋バナなんて想像も付かない。
それに、すごくやかましそうだな、なんて失礼なことを考えつつ。

「そうだな。お紅の頑張り屋なところは美点だが……。
 抱え込みすぎるんは、良くねぇよ?」

相手の漏らした言葉に、男はうんうんと頷く。
しかし、続いての相手の言葉に、そして行動に。
男はバツの悪そうな顔になる。

「それこそ詭弁だ。男と女が別れた。そこに別の男が絡んでるなら……。
 その責任は、その間男が払うべきだ。
 今からでも謝りに行って、いや、あの人にぶん殴られてでも……」

完全に頭に血が上っている男。何とか謝らないと。
この事態を収拾しないと。そうとしか考えられなくなっている。

ご案内:「セレネルの海」から紅月さんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」からセイン=ディバンさんが去りました。