2018/07/30 のログ
■ギィギ > コポ、コポ、コポコポ…………。
気泡が生まれては爆ぜる不可思議な音。
波の音に紛れて掻き消されてはいるが、何かが何処かで生まれては爆ぜる水中で呼吸する音に近しい音は確かに洞窟の中で。
音を辿れば洞窟に射し込む頼りない月明かりの祝福を免れたスライムの亜種が水溜りに擬態した深い穴からそれは生まれて、潮の香りとは違うほんのりと甘ったるい香りを気泡は音をたてて割れる度に薄ら洞窟の中に香らせる、その香りで侵入者の好奇心を煽り、罠たる己が蜜穴へと誘おうと……。
這いずりだし、不自然な姿を晒しながら獲物を探しても構わない、それだけのエネルギーは内包している筈なのにスライムの亜種はそれを選ばない理由があった。
それは海水。
塩分と水分と流れ、海水に洗われると存在そのものが掻き消されると本能的に知っている、ならば何故この洞窟に巣食ったか、と言うとこれも単純な答えが一つ。
此処はセレネルの海、その白い砂浜の海岸線近く。
冒険者が冒険するには緩すぎるが、あまり冒険を知らない人間が冒険者の真似事をするのに丁度良い危険性のある場所で、危険を犯さず獲物を捕らえやすい場所であったのだ。
危険と隣り合わせ、でも掴まえやすいエサが手に入る場所、デメリットとメリットを天秤にかけた結果、スライムの亜種は此処で静かに獲物が迷い込むのを待っているのである。
■ギィギ > 気泡が割れる音が段々と数少なくなっていく。
それはスライムの亜種が仮死状態に変化しつつある事を意味する。
水溜りを己の身体を薄めたもので蓋をし、それ以外を穴底に集める事でなるべく体積を海水で削られる事を防ぎ、次なる機会を求めて今は静かに沈んでいくのであった。
ご案内:「セレネルの海/洞窟」からギィギさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > (月明かりが淡く照らす砂浜はようやく、静けさを取り戻そうとしていた。
ほんの少し前まで、そこここで響いていた怒号も、荒々しく砂を蹴る音も、
無遠慮にあちこちを照らしていたカンテラの光も―――どうやら、やっと遠ざかった様子。
それでも警戒は怠れない、とばかり、さらに深呼吸を、二度、三度。
―――そうしてようやく、浜辺を覗きこむ勇気が出た。)
――――― っ、たく、もう……しつこいなぁ、暇人か、……
(そんな悪態を吐きながら、隠れていた洞窟の入り口からおずおずと首を伸ばし、
あたりをきょろきょろと眺めまわす。
街の中では撒ききれず、つい先刻まで周辺を捜しまわっていた男たちの姿は、
どうやら、すべて見えなくなっていた。
やっと諦めて引きあげたのか、と、まだ動機の激しい胸を押さえて大きく息を吐き)
あーんな、ごった返した中で…よく、見つけてくるもんだよなぁ…
そこはまぁ、尊敬するけど……とりあえず、めちゃくちゃ迷惑……。
(呟きながら岩壁に片手をついて、うずくまっていた暗がりから腰を浮かせる。
すっかり砂まみれになってしまった靴を片方ずつ脱いで、中に入りこんだ砂を捨て)
■リュシー > (暗がりの中で靴を履き直すのに手間取った挙げ句、諦めて靴は両手にぶら下げた。
片方ずつストラップを指に絡めてぶら下げたソレを、両手にぷらぷらと揺らしながら、
靴下履きの足を伸ばし、若干おっかなびっくりの足取りで砂浜へ出て)
んー…ん、………今夜は、何処で寝るかな、ぁ…。
(今朝まで泊まっていた宿には、念のため、戻らない方が良いような気がする。
このままダイラスへ戻るのも、もしかしたらやめた方が良いのかも、とも。
―――――もう少し早い時間なら、別の街へ移動することも考えたのだが)
……やっぱり何処か、こっそり潜りこむしかない、か。
(幸いにして、小柄な身体である。
人混みにまぎれてしまえれば、たぶん、問題はないはず、だった)
■リュシー > (―――――そうして、ひとりぶんの柔らかな足音が、砂浜をゆっくり、街の方へと―――――。)
ご案内:「セレネルの海」からリュシーさんが去りました。