2018/07/21 のログ
■影時 > 「む」
お、喰らい付いたか。糸が張り詰め、ぐっと竿がしなる。
其の手ごたえを感じつつ、薄く瞼を閉じる。
糸と竿を介し、針に食らいついた魚の気持ちになる。呼吸を窺う。
似たような手管を持つ武術がシェンヤン辺りにあるとも聞くが、幸か不幸かその類の使い手には遭ったことがない。
呼吸を窺い、タイミングを合わせ、竿を引く。引き上げる。
勢いのままに躍り出た魚が身をくねらせ、虚空を泳ぐ中を見上げつつ。
「――……余り喰らうにいい大きさじゃねぇな。ほれ」
嗚呼、と。大きさを確かめて竿を捻れば、魚の口から針が外れ、離れる。
そうすれば魚はまた水面に飛び込み、跳ねて潜ってゆく。
夕餉にするための釣りではなく、気分転換のための釣りだ。故に魚籠の類は持ってきていない。
■影時 > 「……」
しかし、少し腹も減ってきたか。
針を引き戻し、糸を竿に巻きつけて留め、立ち上がる。
敷物代わりにしていた外套を拾い上げ、砂を払い落して手挟もう。
くるりと踵を返す先は、近場にある宿を取った街へと。
ご案内:「セレネルの海」から影時さんが去りました。