2018/06/11 のログ
エズラ > 「おらっ!」

櫂をしならせながら殴りつけ、海魔をひるませる――その隙に、逆手に腰の剣を引き抜き、手の中で器用に回転させて切っ先を海魔へ向ける。
しかし、そのまま斬りつけようというのではない――

「え~っと、呪文はなんつったか……!」

男が何ごとか呟けば、鍔元から切っ先に向かって、刀身に青白いきらめきが奔る。
その輝きが切っ先を離れ、雷光(ライトニングボルト)となって迸り、一瞬、闇の海面を強烈な光が照らす。
幾本かの触手を焼き切られた海魔がひるんだ――そう思った時である。
岸から異様なものがこちらへ迫っているのが見えた。

「おいおいおいおい、新手かよこの状況でっ!」

海竜やそれに随伴する人魚(?)のような人影。
しかし、どうやら連中の目的は海魔らしく、弱った海魔に海竜が襲いかかる――
呆気にとられているうち、いつの間にか船上に移乗していた何者かに、驚きつつも剣を向ける。

「ンなっ、なんだおいっ、今度はっ!」

状況の変化があまりに急激で、頭が回らないが――男の視線は女を捉えて放さず、船上であるにもかかわらず切っ先のぶれはほとんど皆無。

「……どこの誰だか知らねぇが、加勢ってんならはええとこケリつけてくれよなっ!」

紅月/コウゲツ > どうやら男は此れを己にくれるらしい。
すらりと背負った大太刀を抜く。

「…ありがとう!」

抜き身の刀を片手に上体のみで振り返り、まるでプレゼントを貰った子供の様に笑顔で礼を言う。

「メリザ、舟に防護魔法と警護全般…イーファはアレの撹乱。
…足場さえありゃあコッチのモンよぅ」

正面に向き直り、ニィ、と笑むと人魚にサッと指示を出し…海竜を足場に使って駆け上がる。
触手を切り落とし、海面に浮かんでくるそれすら足場にしつつに。
唐突に海竜に機敏さを奪われ、素早い人魚にもチクチクと嫌な突っつかれ方を続けられる…そんな海魔が混乱せぬ訳もなく。
ずぱり、ごぽり…と、其れが刺身のように刻まれるまでにそう時間はかからなかった。

「……ふはー、スッキリした!
此れで危うく溺死の汚名返上だー…!」

海竜の頭の上に立ったまま、上機嫌に伸びをひとつ。
もう一度船上の男を視界に入れると、向き直ってこう問いかけようか。

「おにーさん、怪我…してない?」

エズラ > 人魚と海竜をうまく操って海魔の動きを封じ、さらには人外の動きで立ち回る女。
下手に援護をすれば、海竜や人魚、さらには彼女までも誤射する可能性があるため、油断なく片手に櫂を、片手に剣を構えたまま、海魔退治の様子を見守る。
程なくして――海魔はばらばらに切り刻まれ、文字通り海の藻屑と化してしまった。

「おまえら――一体何者だ?」

こちらの身を案じているらしい女の質問には答えず、帯電したままの剣を海竜へ向ける。
いつでも先ほどと同じ雷光を放てる状態である。
海上の人魚にも隙なく視線を向けつつ、未だ緊張を解かぬまま問う。

紅月/コウゲツ > あちゃあ…すっかり警戒されてら。
思わず頬をかいて苦笑する。

「私はコウゲツ…東の果ての地にては、紅の月と書く。
見ての通り人ではない、が、人に仇成すつもりはない…基本的には、だけど」

大太刀についた触手の粘液や海水を念入りに拭き取りつつ、月光に照らして汚れが無いことを確かめた後に鞘におさめて鞘ごと異空間に収納する。
…有り体に言えば武装解除、交戦の意思無し、である。

「この子達は、元々この辺りに住んでる地元っ子よ、害はない…あんさんが何もしなければね?
前からこの辺の海底遺跡探す為に協力して貰ってるの」

正直に包み隠さず、軽く、肩ぐらいに両手を挙げたまま話す。
薄く笑みをたたえたままに。

「…そっち、乗せてもらっていい?
そしたらこの子達に帰ってもらえるけど」

どう?と、首をかしげて見せようか。

エズラ > 名乗りを聞く間も、基本的には構えを解かない。
脳内では幾通りもの戦闘パターンをシミュレートしていた。
ともかくまずは海竜の頸を雷光で焼き落とすなりして、相手の足場を奪うだの――

「……ふぅん、ま、ともかくオレの敵じゃねぇ、ってのは事実らしいな――」

得物を異空間へ収納したところを見て、少なくともこれ以上の戦闘はしないつもりらしい。
こちらとしても、やたらと生き物を殺すのは趣味ではない。
海竜ならまだしも、人魚を焼き殺すなど、何とも後味が悪そうだ――

「……いや、それは遠慮する。オレが消えることにするぜ――加勢にゃ感謝しておく」

彼女が得体の知れない人物であることは、依然として厳然たる事実。
この大海で二人きりになる事態は避けたいのが本音であった。
こちらも緩やかに剣を鞘へ収めると――ようやく、両手に櫂を持ち。

「じゃあな――オレはエズラだ。陸で会ったらよろしくな」

短く別れの挨拶を告げると――手慣れた調子で岸へ向かって漕ぎ出していくのであった――

ご案内:「セレネルの海」からエズラさんが去りました。
紅月/コウゲツ > 「雷撃使い、かぁ…」

海竜の頭上に胡座をかき、ゆっくり去っていく小舟をのんびり眺めつつに。
クスクス、と愉快げに笑う。

「そういやアイツも雷撃使ったっけ、元気にしてるかなぁ…」

故郷の友人を思いつつ、ケラケラと笑い。
どんどん小さくなる小舟を見送り。

「…不安定な船上で、軸がブレなかった。
魔法も、構えも、解かなかった…闘う気だった?私と?」

…スッと表情を変えて目を細め、囁く。
口許を三日月のように吊り上げて。

「……ふふっ、うふふふふっ!
面白い人間…みぃつけた」

俯いて笑ったかと思えば、にぱり…楽しげに微笑む。
不思議そうに見上げる人魚や海竜を置き去りに、まるで新しいオモチャを見付けたように無邪気さをはらんで。

ご案内:「セレネルの海」から紅月/コウゲツさんが去りました。