2018/05/07 のログ
ご案内:「セレネルの海/小さな入江」に紅月/コウゲツさんが現れました。
■紅月/コウゲツ > ーーーざざん、ざん…ぱしゃっ。
黄昏の薄闇、夜の帷が世界を覆い始める頃。
大きな岩場の陰の、その奥…不思議な旋律を響かせる複数の女の姿があった。
水に浸かる真珠のような肌の女たちは皆、腰から下が魚のようになっており耳にはヒレ…まさに、昔語りに聞く人魚の姿そのもので。
そこに、人魚たちに囲まれるように、一人だけ。
…月光に透ける紅の髪をきらきらと耀かせる、人の足を持つ女がいた。
その女の頭部には2本の角がはえており、瞳は水面を映してゆらゆらと紫色に輝いている。
「………~♪…、……ーー♪…」
女たちは楽しげに、海中からの不思議な光に照らされながら…それぞれ楽器や歌声で思い思いに、けれども互いに寄り添うように、何処か懐かしいような穏やかな音色を響かせている。
■紅月/コウゲツ > 紅の女はどうやら人魚に歌を習っている様だ…注意深く聞いていれば、時折同じ一節を繰り返して歌っている事に気づくだろう。
ゆらゆら、と、水底の光が楽しげに揺れる。
女の歌が、夜の細波に溶けてゆく。
■紅月/コウゲツ > 「…ふぅ、ありがとう。
やっとそれなりになってきたかねぇ?」
人魚達に礼を告げる。
すると、人魚達は今日は終いとばかりにそれぞれの褥へと帰っていった。
紅の女が習っていたのは、人魚の神秘の一端…海の魔物を手懐ける歌。
といっても決して万能な代物ではなく、害意の強い者を鎮静化させたり大人しい魔物に協力して貰ったり…はたまた、高位の者との交渉に使う手段であった。
「覚えたら次は交渉かぁ…
やっぱり、水の加護がないと海底はしんどいやなぁ」
やれやれ、眉尻を下げて苦笑する。
■紅月/コウゲツ > そも、彼女が人魚達に歌を習い始めたのは、この海のどこかにあるという遺跡を探索するため。
炎や大地の加護を強く受ける彼女には、地面や燃えるものの無い場所では弱体化するという特性があった。
…が、故の、交渉の足掛かり。
水か海の精霊に一時的な加護をもらうか、はたまた海の魔物の力を借りるか。
■紅月/コウゲツ > なんにせよ、きちんと歌を覚えなくてはお話しにならない。
また練習しなくっちゃ…やれやれ、である。
紅月はまだ暫く練習した後、野宿のために準備を進めた。
ご案内:「セレネルの海/小さな入江」から紅月/コウゲツさんが去りました。