2018/01/07 のログ
ご案内:「セレネルの海 岩場」にエディスさんが現れました。
エディス > 白い、白い―――
吐く息も踏みしめる足跡も白い、雪に覆われた海岸の、脇に寄せられた岩場の先端。
どんよりとした曇り空からは、深々と雪が降り続けている。
夏場は賑わしい海岸も、寒々しい冬となれば訪れる者も居らず。
一人で密やかに、まるで逢瀬を交わすようにして女は、ごつごつとした岩肌にてしゃがみこみ、そぅと水面に触れる。
すると、とぷんっ―――と音を立てて、水面から貌を覗かせたのは、深海魚に似た小さな海棲の魔物だった。
左右に突き出た目をぎょろりとさせ、魚の口からぱくぱくとまるで、餌を乞う鯉の様に開閉して―――
何事かを、女に伝えているようだった。

「―――――……、……………そ 、ぅ……。
 …………みなさま、お変わり 、なく……お過ごしのようで――――…」

良かった―――と女は、小さく小さく、そう呟き落とした。
潜めがちな声音は女の癖で、人魚は声を発するだけで何らかの力が作用するから、と。
何の影響も無い海棲の魔物であっても、もうすっかりと染み付いた習性になってしまったようだ。
セレネルの海に住まう、同胞たちの顔触れを思い出しては、どこか寂しそうに、けれど薄らと口許を笑ませ。
故郷の近況をこんな風に、定期的に海へ訪れては、海棲の魔物に聞いて、安堵して、郷愁に駆られつつ、も。

「……まだ、母は見つかっていない旨……、と―――
 …わたくしも、地上で恙無く過ごせている事 を………」

皆様にお伝えしてください、と柔らかな声で告げると。
小さな魔物はまたぱくぱくと口を開閉させ、とぷんっ―――と、水面の中へと潜り込んでいった。

エディス > 水面に浸した指先を引っ込める。
冷え切ってはいるが、海は女の母体。冷たさは感じても、例えばこの季節に裸で入水したとて、女が風邪を引く事はない。
寒いという感覚も。暑いという感覚も。
この季節、吐く息がしろくなるのも、地上を出て初めて知った。
ヒトとして生き始めてまだまだ日は浅いが、女にとっては日々驚く事ばかりだ。

「―――…、……この、季節に……女が一人……岩場に、居るのは………可笑しい 、のよね…」

ならば、この場に佇む己が姿はさぞや目立つのだろう、と考えて、女は嘆息しながら立ち上がる。
帳が下りて夜になれば、歌姫として酒場に立たなければならない。
時間的にも丁度良いと、懐中時計で時間を確かめながら、女は海に背を向けて。

其の儘、その姿は街の向こう側へと消えて往く―――――。

ご案内:「セレネルの海 岩場」からエディスさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」にサナさんが現れました。
サナ > 砂浜から点々と足跡が続く
真っ暗な海に細く一筋陸続きになったコンクリートの道路の突端

白く細い灯台の、扉を押す。鍵は掛けられておらず容易に押し開けられる。
薄明かりが灯された入口から頭上を仰ぐと、幾重かに巻き上げられた螺旋階段が続いて見えた。

錆びた鉄柵に指先を置いて、かつんとか細い靴音響かせながら上り始める。
幾らか行くと息が弾み、白い吐息が唇から零れる、のも、忙しなくなる。

――― 一息に上りきるには体力に欠けて、半ば程で階段の上座り込む。

行くも戻るも恐らくは同じ位、
頭上を見上げるとくらりと目が眩んだ

「5階建てくらい……なのかな」

これ、と。
独り言を零して、口を噤むと 耳が痛いくらいの沈黙と底冷えする寒さ。

穏やかな波音と、頭上の窓からか 偶に光が通り過ぎる。

サナ > ちょっとの間そこで休み、暫くして上るのをまたの機会へと。
ご案内:「セレネルの海」からサナさんが去りました。