2017/11/12 のログ
ご案内:「セレネルの海」にルージェナさんが現れました。
■ルージェナ > 海に太陽が飲み込まれるような光景の夕刻、ミレー族少女の姿は海の上にあった。
古くボロい小舟の上で、ぼんやりと釣り竿を垂らしている。
少し前までそれなりに楽しげで興奮していたのだけれど、釣れなければすぐ飽きる。
それでも釣れれば今晩のごはんになるので、粘っているのだった。
「ふわ~ぁ…つまんないなぁ。
海って広いけどお魚いっぱい釣れるわけじゃないんだぁ。村の池のがまだ釣れたよぉ」
魚とて命がかかっているから、こんな子供に易々と釣られるわけにはいかないのかもしれない。
全然反応のない竿を戯れに振りながら視線は遠くの水平線。
王都では家族は見つからないし、もしかしたらもっと遠くにいるのかもしれないと、ふと思う。
「…この舟で行けないかな?」
漂流フラグぽつり。
さすがに試したりはしないけれど。今のところ。
ご案内:「セレネルの海」にマヌエラさんが現れました。
■マヌエラ > 小船の上で釣り糸を垂らす少女。
その長閑な姿に太陽が重なったとき、少女の背後の海に、ぬっと伸び上がる影があった。
どう考えても海から上ってきたはずが、その女は整えられた衣服を纏い、髪も肌も濡れてはいない。
その足裏は、波の上を砂浜であるかのように踏みしめ、立っていた。
表情は、微笑。
「まあ、この可愛いお船で、どちらまで行かれるのでしょう?」
穏やかなで柔らかな問いかけを、少女の背後から投げかける。
その声もまた、ゆったりとしたたおやかなものだった。
■ルージェナ > 思わぬところから、思わぬ距離で話しかけられたため、少女の背中はビクッと慄く。
釣り竿を手にしたままくるり振り返ればそこに、いるはずのない女性が立っていた。
ぽかんと口を開けていたが、やがて頭の処理が追い付いてきた様子で言葉が発せられる。
「わぁ…!お姉ちゃん、海に住んでるひと?」
しかし彼女の質問をきちんと覚えているほど脳は冷静に処理していなかった様子。
足元を確認するように舟から少し身を乗り出したので小舟は頼りなく、ゆらゆら揺れた。
■マヌエラ > 「住んでいるか――ですか」
うぅーん、と考え込む。人差し指を顎に当てて首を傾げる様子は、突如背後から現れた怪しげな影にしては幼げな仕草だった。
「そうですね。どちらかといえば、住んでいるわけではないと思います。海、大好きですけれど!今日ここに来たのは、たまたまです」
ぽんと掌を合わせて、にっこり微笑む。
「お嬢さんは、そのいでたちからして、海釣りでしょうか?でも、どちらか行きたい場所があるのでしょうか」
微笑んだまま、無遠慮に歩を進める。波の上に確かにブーツまで見えている。ルージェナも身を乗り出したのなら、手を伸ばせば届くほどに近くなり。
■ルージェナ > 「そーなの?人魚かと思ったよ?ルーも絵本でしか見たことないけど、海に住んでるきれいな女の人なんだって」
人魚であることを少し期待していたらしく、口調の端々にそんな調子を覗かせて。
人魚でなくとも不思議な存在であることは間違いなく、興味は示したままに。
彼女が歩いてくる歩調に合わせて尻尾が軽快に揺れていた。
「ルーはごはん釣ってたんだぁ。まだ釣れてないけど。お姉ちゃんも乗る?」
釣り竿を上げてみるとやはり何も釣れておらず、一旦それを引き上げ自らの傍らに。
少し退いて、相手が乗れるスペースを空けるようにしながら首を傾げた。
■マヌエラ > 「ふふ、人魚ではありませんよ」
微笑み、眉をゆるくハの字にしてごめんなさいね、と付け加えた。
「でも人魚の方はとてもきれいな方が多いのは確かです。ルーさんとおっしゃるんですね。私はマヌエラです」
微笑みを戻して一礼をして。
「まあ、ごはん。ご自分で獲るなんて素敵ですね。自分で捕らえたものは、いっそう美味しいものですもの。…ご一緒してもよろしいのですか?では、お言葉に甘えて――」
裾を持ち上げ、軽やかに船上へ。船はほとんど揺れなかった。
「それにしても、ミレー族の方は逞しいのですね。まだ小さいのに、こんなところに暗くなるまで1人で……えらいです。感心してしまいます」
■ルージェナ > なぜか、えへへと照れたように笑った。
妖艶で穏やかで、こういう年上の女性と話したのは初めてであり、名前を呼ばれるだけで照れくさかった。
流れるような所作の相手とは違い、少女は騒がしく落ち着きのない性分である。
「そーなの。ルーは1人だからルーが頑張らなくちゃごはんナシになっちゃうの。
だから…もーちょっと頑張らきゃ…」
自らの立場を思い出し、先ほど引き上げたばかりの釣り竿に新たな餌を付けつつ唇尖らせる。
それでも1人で釣れない魚を待っていた時間より、こうして誰かが隣にいて話してくれるだけで気分は全然違うもので。
「マヌエラお姉ちゃんの分も釣れると良いけど…。
釣れなかったらルーの"いざって時"の果物、分けてあげるね」
とか言いつつ、自身の腹がこのタイミングできゅるると鳴るのだけれども。
■マヌエラ > 「1人…それは、寂しいし、辛いことも多いでしょう」
目を細めた。憐憫や同情よりは慈愛の色が強かったか。
「まあ…ご自分のための“いざという時”でしょう。私にも分けてあげる、だなんて…ルーさんは、とても優しい方なのですね。感動してしまいました」
胸を押さえて、感じ入った。
「…でも、お腹の虫は、そろそろ限界のようですね」
続く音に、くすりと微笑み。この一生懸命で愛らしい少女に、何かしてあげたくなっていた。
「……釣果によらず、少し寒さも増してきました。私のものでよければ、少しお腹が膨れて体も温まるものがありますから、いかがでしょう?」
■ルージェナ > 「うん、さみしい」
強がることもなく、こく、と頷いて。
少女の"優しさ"も素直で、且つ子供だからこそ先々の計算が出来ないがゆえの甘さだったりも。
腹の虫を聞かれてまた照れ笑いを浮かべたが、思いもよらず彼女が"優しさ"を返してくれるので
期待の眼差しを隠しもせず、釣り竿を再び垂らした海面から、くるっと彼女を振り返り。
「マヌエラお姉ちゃん、何か持ってるの!?」
旅人には見えず、荷物を大量に持っているようにも見受けられないため予想外だった様子。
抱いた期待はよほど大きかったのか、持っていた釣り竿をうっかり海に落としてしまうほどであった。
「あ…あぁ…」
波に浚われ流されていく釣り竿。
釣り竿自体は木であったり即席で作った物なので浜に帰れば作れるものの、手間と時間はかかるのである。
何より彼女の分まで釣れればなどと豪語しておいて、この有様。
■マヌエラ > 「寂しさに晒されても、誰かへの優しさを失わないルーさんは、とても立派な人だと、私は思います」
敬意をもって静かに告げる。素直な優しさ。甘さに等しいその感情を、好ましく思って。
「持っている、というほどのものではありませんが」
微笑みを返し。落ちて流れてゆく釣竿には目を遣らずに。
「大丈夫ですよ、ルーさん」
ゆったり歩み寄ると、豊満な乳房に埋めるように抱きしめてしまわんとする。
■ルージェナ > 褒められるそばからその期待に応えられなさそうな結果にしょんぼり、するのだけれど。
獣耳もへたりと元気をなくした少女の顔が柔らかく暖かなもので包まれる。
自身がまだ持ち合わせていない女性としての象徴から匂い立つ
女性の甘やかな香りに無自覚にすぅ、と息を吸ってから顔を上げ、慈愛に満ちた女性を見上げた。
「ご…ごめんね。あっちにもどればまた竿は作れるんだけど…」
かなり相手を待たせることになる。
困ったように眉尻を下げながら、意識はどうしても違うところにも行ってしまうらしく。
「マヌエラお姉ちゃん、いーにおいするね」
海風に冷えていた身体がほんのりと暖まってくる心地に、はふ、と吐いた息は幸福混じり。