2017/07/02 のログ
ご案内:「セレネルの海 岩場」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「ったく、魔法ってのは習得しとくもんだな……――」

セレネルの海の岩場、小さな洞穴の中で、男が呟く。
釣りを楽しみに来ていたら天気が一変、大豪雨――ほうほうの体でこの場所へ逃げ込み、かろうじて周囲に散らばっていた小枝や流木を集め、小さな火を熾すことに成功した。
着火には、習いおぼえた魔法が役立った。
この水気が籠もった場所ではろうそくの火程度の炎を熾すので精一杯であったが、薪に火を灯すくらいならば問題ない。
ぐしょ濡れの衣服はすべて脱ぎ捨て、火の側に放っている。
流れ着いていたぼろ切れを数枚重ねて絨毯代わりにすると、一糸まとわぬ姿であったが、あまり気する様子もなく横臥して。


「ま……しばらくゆっくりするさ――」

外から見れば、岩場の影に揺らめく炎が見えることだろう――

ご案内:「セレネルの海 岩場」にチルユキさんが現れました。
チルユキ > 陽が射さない小さな岩陰にて惰眠を貪り続けていたのに、肌を削り取るような豪雨に打たれての目覚めになる。
身に着けていた衣服も髪もびしょ濡れの、濡れ鼠、を体現する有様で行き場を探して彷徨う先
小さな洞窟と、遠くでちらつく炎と、美味しそうな匂い――――

びしゃり、と。足音にしては歪な音を立てて洞窟の中へ足を踏み入れる。

全裸の男が先で横たわっており、なぜ、と素の思考で一瞬動作が固まりそうになるものの
何処かで遮られなければ止まることのない歩みが連なり―――男の傍らで膝をつく。その首に触れようと濡れた細い腕が伸びる

エズラ > 「ふぁ~……――」

チロチロと燃える炎が蛇の赤い舌のようで、それを眺めていると自然とまぶたが重くなる――
洞穴の入り口に対しては背を向けていたが、濡れた足音を聞きつけてそちらに視線を向ける――

「――こりゃ、また。」

はたして、全身をぐっしょり濡らした女がそこにいた。
何やら異様な雰囲気を感じ、むくりと半身を起こす。

「雨宿りかい――すまねぇな、こんな格好でよう――」

そういう割に、男の態度に羞恥心のようなものは感じられない。
ともかく、相手の伸ばす腕からは逃れつつ、様子を見る――

チルユキ > 起き上がる所作に目測も謝り、ぱたり、と腕が空を切る。
空振りをさせられた手を、男をじっと―――物言いたげな黒眼を向ける。地面に跪き

雨宿り、には頷くが、血に似た赤い色の唇から肯定の言葉は未だ出ない 代わりに
何故隠さないのか、と言わんばかりの眼差しが――――男の股間に落ちた。

隠されてなければ夜目に強い視界に確りと捉えられる。
けほり、と。詰まったような咳を一度落とし

「―――――頂戴」

血を。主語が無い。低い掠れた声での第一声。男の脚を膝で踏みつけて再度の接近を試みる

エズラ > 「おいおい、どういう――」

つもりだ、と呟く前に、さらに相手が迫ってくる。
頂戴、とはどういうことか――
やけに唐突に現れて、こうもいきなり続きでは、流石に面食らってしまう。
しかし、相手の青白い肌や、何かを求めるその態度に勘を働かせ――

「……くれてやれるもんは――これしかねぇよ、今はなっ!」

相手の眼前に片手をかざし、自分はもう一方の手で己が眼を覆うと、鋭く指を鳴らす――
その瞬間、指の合間に火花が散る。
しかし、それはただの火花ではない――
焚き火のおかげで幾分火の気の戻ったこの場所に集まった、微弱ながらも炎の精霊の集合体を瞬時に炸裂させたのだ。
洞窟内を煌々と照らす陽光のような激しい光が迸り、瞬間、身を翻してまだ生乾きの着替えをひとまとめにひとまとめに抱えると、一目散に洞窟から逃げ出す――

「あぶねぇあぶねぇ――ありゃきっと吸血種か何かだぜ――くわばらくわばら……」

魔法を習得しておいてよかったと胸をなでおろしつつ、全裸の男が雨の止まない海岸を走る姿は、実に無様であった――

ご案内:「セレネルの海 岩場」からエズラさんが去りました。
チルユキ > 精霊の加護を掻き集めた火花を弾き飛ばし、全力の脱兎を試みる背をぼんやりと見送る。
風の精霊を誘い、熱度を引き上げられた火精と遊ばせて逆立つような有様を宥め
大男は、体の大きな兎のようだった―――――ひとりごちると空っぽになった洞窟をこれ幸いと横たわる。

ご案内:「セレネルの海 岩場」からチルユキさんが去りました。