2017/05/18 のログ
ご案内:「セレネルの海」にシャドウさんが現れました。
■シャドウ > 偶には王都の雑踏から離れて気晴らしも必要だと……
誰かに言われた訳ではないが、それと無く思いつき、その思いついた衝動のままにセレネルの海へと足を運ぶ。
場所は王都近くにある砂浜の綺麗な海岸線
眩い月明かりを反射して輝く砂浜と穏やかな潮騒が何とも心地良い場所である。
その知り砂浜を今宵は珍しく眼鏡をかけ、波に押し上げられ砂の上ですっかりと干からびた流木に腰をかけて左脚の膝に右足を乗せるように足を組み、黒革の手帳をさらさらと緩く捲り読みふけっている。
その手帳は別に冒険絵巻だとかモンスター図鑑等ではなく、ただの顧客名簿で、数居る顧客の中でも「面白い」と狙いのつけた者達の名前とパーソナルデータを綴った物であった。
――結局外にでも仕事をしてしまうのは趣味が数少ない為。
抱くのに都合のいい女が居ればまた別で有るが、此処最近はその手の女を飼っている訳でもなく、花壇や温室の蕾を連れ出すだけのゆっくりとした時間を取れるわけでもなく、やる事が仕事しかない為、ごらんの有様であった。
「……………………。」
月明かりだけでは手帳に書き込まれた小さく汚い文字は酷く読みづらい、のだが今宵かけている眼鏡は特別所為で、モノを有る程度透過して見たり、少ない明かりで明るくモノを見せてくれる魔法の眼鏡で、レンズ越しにゆるい空気と潮風に琥珀色の眼を細めて酷く穏やかな表情を浮べて、独り言もなく読み続ける。
潮騒の音、手帳のページを捲る音、脚を組みかえるときに砂を踏む音、それくらいしか今宵の砂浜には音は存在しない。
■シャドウ > 顧客の名前に結び付けられた家族構成や弱点と為り得るネタの数々、拾うものが拾えば正義に使えば悪を断ずる剣に為り得る情報の数々……それが白い紙に黒いインクと赤いインク2色の色で汚い文字で綴られている。
だから読めるのは文字を書いた本人である自分だけであり、正義に使われる事はほぼ無いに等しい、今読んでいるのだって、其処からどれだけ金と快楽が搾り取れるかの算段の為だ。
手折れそうな花があれば人の伴侶や婚約者だって奪い取り、欲望の捌け口にしよう。
飽きたら「そういう事」が大好きな好事家の貴族に売ればいい。
もし役立つのであれば仕事を与えて支配下に置くのだって悪くない。
まあ傍に置いてやってもいい……飼いならして己色に染めてやってもいい、そう思うだけのレベルの達するだけの花は中々無く、今宵もこうやって一人で過ごしているわけだが……。
「………何だな、是だったら王都で酒でも飲みながら仕事するのと変わらんな……。」
眼鏡の薄いレンズ越しに一度瞼を閉じて目を休めに入ると、口からはそんな愚痴が自然と溢れ出て、思わず両肩をがくりと落し、疲れた表情を浮かべてしまう。
どうも一人で時間をつぶすのは苦手で、直ぐ愚痴っぽくなるのは悪い癖だと思っていても止められない……。
■シャドウ > 暫く潮騒の音を楽しんだ後、パタンと手帳を閉じると流木から重い腰をあげて歩き出す。
目的地は一先ず家だ。
今日は湯浴みをしてから寝ようと……。
ご案内:「セレネルの海」からシャドウさんが去りました。