2017/03/11 のログ
ご案内:「セレネルの海」にグレヌアンギュさんが現れました。
グレヌアンギュ > セレネルの海に面した海岸に広がる白く美しい砂浜
月明かりを弾いて煌く波とその波が奏でる潮騒の音
白い砂浜に面した場所から幾らもあるかない所に潮の満ち引きで偶然作り出された低い岩場に囲まれた潮溜りが存在していた。とても小さな潮溜り、ぐるりと潮溜りを囲むように存在する岩場は壁、囲まれた潮溜りは底に白い砂が積もっていて、さながらそれはまるで小さな自然のプールのようであった。だが、それはプールなんて可愛らしい物ではなく、潮に流され砂浜に岩場に残ってしまった肉食の透明な表皮をもった海蛇の如き魔物が群れて眠る、恐ろしい罠であった。

人が潮溜りに足を入れるなら、膝上位までしかない比較的浅い深さしかないのだが、その底には絡み合うようにして眠る透明な海蛇達が絡み合いこすれあって生み出された粘液が海水を侵食しており、素足で入ればその異様なヌメリを体感できるだろう、もし履物をもって入り込めばヌメリを感じられない代わりにその足を奪うように粘液が溶けた海水が足裏を浚うだろう。重ねて言えば特に春先近くは海蛇達の繁殖期である、その表皮から滲ませた粘液は非常に重たく、量も決して少なくない。だがその繁殖期こそ希少な透明な肉を持った海蛇の卵を採集するチャンスであり、一攫千金を狙う冒険者やどうしてもお金が必要で比較的安全な稼ぎを狙う一般人が血眼になって巣を探す、そんな時期でもあった。

まだ寒さが幾分か残る夜風海風、強く香り潮の香り、そして潮溜りを照らす鮮やかな月明かり、それに誘われ誘われ今宵は潮溜りに足を踏み入れる不幸な人間は現れるだろうか?潮溜りの底、白い砂底に塗れて海蛇達は待ちわびる。一生に一度しか出来ない産卵、それを解き放って受け止める苗床が迷い込んでくるのを……。

グレヌアンギュ > 静かに響く音色は潮騒の音しかなく、それ以外は人の声もましてや獣の声すらも聞こえない、静かなセレネルの海。しかし、一つだけその潮騒の音を打ち破るように何かが跳ねて水面を叩く音が響く。

―パシャンッ
小さな音、しかしそれは違和感のある音。
魚が跳ねたにしては音の源は暗い夜色にしまった海からではなく、岩場に囲まれたその潮溜りからだった。しかし、潮溜りを覗いてもその小さな海の縮図である場所には魚の影もなく、他の生き物の姿も全くと言っていいほどない。それに隠れられる場所もほとんどない場所で

――パシャンッ
と再び何かが水面を叩く音が響く。
それもまた潮溜りの方から、矢張り何かが居るようには思えないが、音が響く刹那だけ水面に一際輝く何かが輝くような物が見える。無論それは透明な肉を持つ海蛇が密度のある潮溜りに喘ぎ、跳ねただけの事。

グレヌアンギュ > やがてその音も潮騒に紛れ静けさが再びセレネルの海に戻る。そして海蛇たちもその潮騒を子守唄に再び潮が満ちて潮溜りから抜けられる事を夢見て今はそっと静かに眠るのだった。
ご案内:「セレネルの海」からグレヌアンギュさんが去りました。