2015/10/18 のログ
ご案内:「セレネルの海」に□□□さんが現れました。
■□□□ > 空に大きな月が浮かび、辺りを緩やかに照らす頃。
淡い淡い月明かりでは照らしきることの出来ない、
夜闇よりもさらに暗い、深い黒に染まった水面で……
それは、ぷかぷかと音もなく漂っていた
■□□□ > ささやかな月明かりに照らし出されたその小さな輪郭は、
一見すれば人の様にも見えた。
だが……よくよくそれを見るものがいたならば、その違和感に首を傾げたことだろう。
確かに、姿形は人に見える。だが、見れば見るほど、
その影を人と……あるいは、波にさらわれた成の果てかもしれないが……
認識するには、奇妙な違和感が存在していたのだ。
まるで、人にそっくりに作った人形が……
しかし、最後の一点が違うが為に、全く別の何かに見えるかのように
■□□□ > ぷかり、ぷかり。ゆらり、ゆらり。
波に弄ばれるその影は、ゆっくりと……だが、確実に。
何かに引き寄せられる様に、静かに海を渡り……
やがて、海岸線に幾つかある浜辺、その1つへとたどり着いた。
揺らめく波に運ばれるまま。そのまま砂浜に打ち捨てられる小さな影。
海の黒から引き揚げられたその姿は……月明かりに照らされて、
その詳細を浜辺に暴き出されていた
■□□□ > 胴があり、頭がある。
浜辺に無造作に投げ出された頭には、
人形にも見える造作の顔が乗り、肩口で揃えられた髪が生えている
手が二本あり、足も二本ある。
肩口と腰から左右一対。その数と場所には全く問題ない。
だが。
その手足の色合いは、人の肌のそれではなく。
海の黒さが染み付いたかのような黒い色で。
その手足の形は、人のそれではなく。
不格好な粘土細工のように単純な形で……
何より、まるで水そのものであるかのように、ふるふると震え、
その輪郭が僅かにとけだしている
■□□□ > 首から下はボロに隠れているが……果たして、その中身もどうなっているのか。
ともすれば出来の悪い人形にも見えるその影は、
物も言わずに砂浜に打ち捨てられていた……が
■□□□ > 「 ………… 」
月明かりに照らされて。
不格好な腕がゆっくりと……
まるで人形が引っ張られるかの様に持ち上がり。
びぢゃん。
粘っこい音を立てて、砂浜に打ち付けられる。
続いて、反対の腕が同じ様に動き……再び、音をたてる。
そうして、その影は両の手を地面につくと、ぎこちない動作で身を起こし……
髪先と顔から雫を溢しつつ、ゆっくりとした動きで周囲を見回しはじめた。
■□□□ > 「 …… ……」
どこか眠たげな、半分閉じられた瞳が、
夜の暗闇に塗り込められた浜辺をゆっくりと見回す。
微かに口元が動く度……小さな、水が揺らめくような響きが起こり、波音に雑ざる。
「…………」
何かを探しているのか……あるいは、何も考えていないのか。
砂浜にぼんやりと佇んでいたその影は……
不意に、自らを運んできた海へと向き直ると、
その腕をゆっくりと振り上げ……そのまま、波間に叩きつけた。
■□□□ > それは、一見すれば意味の無い行動。
だが……その結果は、直ぐさま異変として現れた
■□□□ > 腕が叩きつけられた波間。
黒く月明かりを照らすだけの波が……不意に、白い輝きを帯びた。
キラリ、キラリ。
まるで硝子細工の様に輝くの光の小さな輝きは、波に遊ばれる腕を中心に、
ゆっくりと広がっていく。
波間に輝く欠片……その正体が氷の粒であること。
そして……空から見たならば、波だけでなく砂浜までもが。
小さな小さな範囲ながら、しかし、確かに凍りついていたこと。
気づくものが居ないながら……その異変は、音もなく、
だが確かに引き起こされていた
■□□□ > 「…… ……」
腕を上げ、ゆっくりと立ち上がる。
それを合図とするかの様に、波を輝かせていた白が姿を消す。
見れば……不格好な形をしていた両足は、
いつの間にか人のそれと全く同じものへと変わり……
その小さな体を、しっかりと支えていた。
形が整った両の足を静かに見つめながら……
しかし、その瞳の中には、不満が燻っていた
■□□□ > (足りない)
それは渇望。
(足りない)
それは飢餓。
無理矢理にかき集めた熱さは、しかしそれを癒すことなく。
寧ろ、冷たい飢えの炎となって、その心を焦がしていた
■□□□ > 「…………」
形を得た足を使い、凍りついた砂を硬く鳴らしながら歩いていく。
その最中に、ずぶ濡れだったボロからは水気が消え……
代わりと言うように、肩口で揃えられていた髪が音もなく伸び、
腰辺りまで流れる長髪となる
■□□□ > やがて……砂浜からその姿は消え。
後には、不自然に凍りついた僅かな砂が残されていた
ご案内:「セレネルの海」から□□□さんが去りました。