2022/12/08 のログ
ご案内:「◆ゾス村」にゴーシェさんが現れました。
ゴーシェ >  
夜明けとともに起き出して働き、日暮れとともに我が家へ籠もる。
そんな生活をしている人々が殆どであることは、すぐ気づいた。

日暮れ間近に足を踏み入れた村の、外れにぽつりと佇む一軒の民家。
こじんまりとした家屋の傍らにある、もっとこじんまりとした納屋の屋根裏に、
何とか泊めてもらう約束を取りつけられたのは、きっととても幸運だった。
藁の寝床であろうと、階下で羊や豚がざわめいていようと、特段気にもならない。
一階に酒場を併設した宿屋もあったが、そうした所に泊まるのは避けている。
理由の第一は、そうした場所につきものの旅人たちが――――もっと言えば、
夜を迎えて酔漢と成り果てた彼らの距離感が、娘は苦手だったから。
そして、もうひとつ理由を挙げるならば。

「―――――― ……?」

ふと、異変を感じて目を覚ます。
潜り込んだばかりの寝床から身を起こし、枕代わりにしていた背嚢を引き寄せながら、
そっと、小窓を細く開いて窺い見る。
闇に沈んだ夜更けの村、静まり返った片田舎の風景。

――――――けれど、何処かから。
誰かが、何かが、迫ってきているようだと気づく。
静か過ぎるのだ、先刻まで階下から聞こえていた動物たちの声も失せて、
人間以外の生き物は皆、息をひそめ、様子を窺っているようだった。
外敵に対し、一番鈍感なのはやはり人間なのかも知れない。
先刻、此処へ己を案内してくれた、この家の娘の笑顔が脳裏を過ぎる。
けれども、さて、――――――どう、するべきか。

ゴーシェ >  
――――――逡巡は、けれど一瞬の感傷めく。

次の瞬間には、娘は身仕舞いを正し、藁の寝床をそっと這い出す。
ギシ、ギシ、とむやみに軋む梯子段を慎重に降り、
片隅に固まって、心なしか怯えているように見える動物たちの脇を擦り抜け、
蝶番の軋みすら気にしながら、そろりと細く開いた隙間から身を滑らせて。

誰にも、何も告げることなく。
娘はただ一人、災厄から逃れて闇夜に消えた――――――。

ご案内:「◆ゾス村」からゴーシェさんが去りました。