2020/08/11 のログ
ご案内:「◆ゾス村」に白冥花さんが現れました。
■白冥花 > 満ち溢れる悪意がそれを芽吹かせたのか、それとも僅かな平和に溺れる慢心や油断といったものがそれを誘ったのか、ゾス村その宿に酒場が併設されている有り触れた建物の裏手に一輪の純白の花が雑草に紛れ咲いている。
その花は誰が見ても懐かしいと思わせる素朴な容姿と、是より大輪の花を咲かせそうな予感をさせる肉厚な花弁が集い螺旋に捻れた重々しい蕾を暑い風邪にふらゆらりと揺らし、見る者に興味を抱かせ、裏手に通りかかる人の好奇心を蕾から微かに匂わせる薄く甘い香りで誘う。
――…その花の名前は白冥花(ハクメイカ)
冥府に咲く花とも冥府に誘う花とも言われている希少で危険で美しい花である。
万病の薬、不老長寿の妙薬の素材、媚薬、毒薬、その花を正しい手順で煎じればありとあらゆる霊薬の源となると、好事家や貴族の間で高く取引をされている花だ。
不老長寿の効果は怪しいものだが少なくともそれ以外には効果が有るようで実際に法外な値段で市場に流通している、と言うのも効果もさることながら、白冥花は通常の手段では養殖できない、特別な外道な手段をもちいたとしてもそれは劣化した花としかならない。
だから冒険者や学者、一攫千金を求める者は名前を聞けば、発見の噂を聞けばこぞって其処に集うそんな花である。
しかし日の高いこの時間。
村人の中で白冥花に関しての知識がある者がいないのか、稀に通りかかる者がほほえましく花を眺めるだけで、誰も摘み取ろうとはしない。
ぼこ……ぼこ……
風に紛れ、何かが土を掘り蠢く音が聞える。
白冥花は着実に根を広げている。
その奇妙な音に気がつくか、それとも噂を聞いてか偶然にか、その純白の花に気がつくものが現れるだろうか。
■白冥花 > ゆらり、ゆらり、ゆらり、花弁が螺旋に捻れたその蕾を重たそうに揺らしながら純白の花は揺れている、揺れてみるものを誘い、まだ香りが薄いが芳しい香りを振り撒く。
その蕾の重さは蓄えた甘い香りと花粉の重み。
揺れる動きはまだ咲かさぬ蕾から零れる香りを広げる為。
降り注ぐ日光から避けるより、日陰に生まれ根付く純白の白冥花は花を咲かせるための苗床を花を守るための騎士たらん者を待つ……ゆらり、ゆらりと揺れながら。
――…その蠱惑の甘き踊りに魅了されれば最後。
行く末は数多、末路は一つ、その身に花を咲かせるか、その身が花となるか……。
ご案内:「◆ゾス村」から白冥花さんが去りました。