2020/06/04 のログ
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」にラスティアルさんが現れました。
ラスティアル >  「血の旅団」の占領部隊が駆逐されて久しいゾス村。王国の敵が追い払われたこの村は表面上の平穏を取り戻していたが、戦災というのは一朝一夕で拭い去られるものではない。特に、人々の欲が絡むと。

「なあ、おい。俺もさ、怖い思いや痛い思いはしたくないんだ。出来ればな。でもこれは見過ごせないだろ?」

 きっかけは、ゾス村を「血の旅団」再占拠から守るとする「義勇兵」から始まった。冒険者の一団からなる彼らは当初から無頼の輩の集まりで、村民への乱暴狼藉を繰り返していた。
 そんな彼らの不行跡が取りざたされ始めたのは、「血の旅団」の攻勢が鈍ったからである。以前のように脅威を煽って旨味を吸えなくなった「義勇兵」は、より過激な行動に出るようになった。

「いやな?食い物、飲み物をちょっと多めに頂いちまうとか、そんなくらいなら俺もさ、首は突っ込まなかったんだけど」

 武器を抜いた「義勇兵」に反包囲されている半人の戦士は、そう言って敵に笑いかける。彼の後ろには、首輪と手足の枷をはめられたミレー族の少女が座り込み、小刻みに震えていた。ほんの少し前まで「義勇兵」に「血の旅団」の間者と疑われ、輪姦、果ては奴隷として売りさばかれる寸前だった彼女を一瞥し、男は小首を傾げる。額の双角が黒光りを放った。

「でも、これは駄目だろ」

 声を低めた男が両腕を交差させ、左右の剣を手に取った。

ラスティアル > 「お前らのしでかしたことは証拠が挙がってるんだ。……皆やってただろうって? それはやって良い理由にはならないんだよ」

 包囲を狭める者達に言いながら、此方もにじり寄る。

「俺がお前らだったら、一目散に逃げる。だがどうやら」

 半人の言葉は雄叫びに掻き消された。

「……此処まで、だな」

 双剣を抜き放った男は暗い金色の髪を靡かせ、角をぎらつかせて飛び込んだ。鋼色の旋風が吹き荒れ、血と斬り飛ばされた四肢が飛んだ。味方が壊滅してようやく不利を悟った「義勇兵」の生き残りが、悲鳴を上げて村から飛び出すが。

「もう遅い」

 卓越した膂力によってほぼ一瞬でクロスボウの装填を終えた男が、右手で握った飛び道具を放つ。乾いた音と共に太矢が飛び、最後の敵の背中を射抜いた。

ラスティアル > 「……分かってるよ。馬鹿なことしたって思ってんだろ。冒険者同士、恰好良く内輪揉めしただけだって」

 助けたミレー族の少女や、争いを遠巻きに見守っていた村人を振り返った有角の男は、片手射撃の構えを解いて苦笑いした。

「でも、正しいことをしなきゃいけない時ってのはあるもんだ。そうだろ?」

 男はそう言って少女の枷を解き、今晩の宿を求めて歩き出した。

ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」からラスティアルさんが去りました。