2020/05/10 のログ
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「構わぬよ。冒険者というものは、依頼の確実性や目的を知りたがるものと聞いている。貴様の疑問も、さもありなんというものだろう」
此方の物言いに深く追求する事も無く引き下がった少女に、鷹揚に手を振りながら言葉を続ける。その口調や態度は、世渡りの慣れた冒険者に興味を失った、というような態度を見せるだろう。
しかし、溜息を吐き出した少女の姿を、僅かに瞳を細めて観察する様な視線を向けている事に、少女は気付くだろうか。
「ふむ。まあ、深くは問わぬよ。自衛の道具が必要な場面が多かろうしな。
……気にする事は無いとは思うがな。何故負った傷かは知らぬが、それを見苦しいとは思わぬよ。そう思って何か私が得になるなら、幾らでも蔑んでやるがな」
此れは嘘偽りの無い本心。特段人道主義な訳でも無ければ、人は見た目では無い、と訴える様な博愛主義者でも無い。
白い猫でも黒い猫でも鼠を取ってくるのが良い猫なのだから、極論見た目などどうでも良い。
信念というよりも、成果主義の権化の様な己の考えは、褒められたものでは無いのだろうが。
そんなやり取りの後、半歩引いた少女を見て一度立ち止まり、改めて向けるのは何かを確かめる様な。或いは、野生の獣を観察する様な色を湛えた瞳。
そんな仕草の後、ゆるりと唇を歪めて口を開き――
「……昨日入ったばかり、と言ったな。慣れぬ事も多々あろう。王国軍の詰め所迄案内くらいはしてやろう。
ギルド発行のものでも王国政府の物でも構わぬ故、身分証を渡して貰おうか」
如何にも冒険者への配慮を絶やさぬ貴族、といった様な口調で少女に笑みを見せる。
王国軍の兵士で溢れる詰所へ少女を連れていく。それ以前に、身分証の類を提示する様に求めている事を除けば、ではあるが。
無論、この提案を断る事も。或いは、詰所での案内や説明の類をのらりくらりと躱す事は出来るだろう。
とはいえ、此の提案そのものは本来の冒険者であれば何も問題は無い。静かに手を差し出した己の眸は、感情の色を見せぬまま少女の隻眼を捕えているだろう。
■ティクス > 「特に今回は…この村では、獲物の数も限られますから。
どういう物が、より求められているのか。それを知れれば、効率も上げられる…でしょう?」
互い、観察し合っている。どこまでお互いに、手の内、心の内に気付けるかは分からないが。
少なくとも少女の方は。興味を失ったようでいて、その実、顔も目線も背けられる事がない為に。
最低限喫煙よりは、此方を重視し続けていると認識しており。…但し、その理由までは掴めずに居る、という所。
ある程度口実を上げるのは、基本、話を合わせる為。それで後少し情報が漏れれば良いが。多分それは難しい。
そうとなれば後は速やかに。此処から離れる事を思案して。
「同業者の目が有る所では、明かせない手の内も有りますので。其処の所は…ご容赦を。
……そう、ですか。そういう風に言う…仰る、貴族様も珍しい…気が」
本当に意外だったから。少しだけ、取り繕った敬語が崩れそうになった。
搾取する側が男であり、される側が女であるなら。其処には美醜が基準となってくるのが、当たり前だと思うから。
もっとも、少し考えたなら。これは性別等に関係なく。ただただ、冒険者という役割、道具としてだけ。見られているという事なのだろう。
気付いてしまえば何という事もなく。あぁそうか、と口の中でひとりごちて。
「身分証……要るんですよね、矢張り。
皆ミレー族を捕まえるんだ、ってバタバタしていて。昨夜どうにか宿には泊まったんですけれど…ソレをくれる人も分からない侭なんです。
えぇ、その詰め所に行って、いただけるのでしたら。お願いしたい所ですけれど……」
内心、舌打ち。城塞の方で捕虜にした冒険者やらに、そんな物を持っている輩は居なかったぞと。
だが思い出してみると。連れられてきた者は大半が…装備どころか服から何から奪われて、身も心も穢し抜かれた後、のような者達だった。
犯すのは仕方ないのかもしれないが、其処のところは気を使って欲しかったと。団の男連中を叱責したい。
ともあれ今は舌を回し、口を滑らせつつも。忙しなく巡る頭は、直ぐに、方針を戻す事にした。
即ち、逃げる。この分だと恐らく詰め所に行った所で。兵士達も、課せられた命令の真意など知らないだろうから。
「それとも。…此方なら良い…かな、っ!」
前触れなど何もない。少女が大きく一歩、二歩、後方へ跳ねると同時。
完全に隠した侭、外套に孔を開けて飛び出す矢が、少年の心臓目掛け真っ直ぐに。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「言い分は理解出来るがな。我等とて顧客から要望された商品を売るだけの立場。其処に拘ったところで、金になる訳でも無い」
ぷかり、と吹かした紫煙が風に揺れて掻き消える。
そんな紫煙には目もくれず、相変わらず視線は少女に向けた儘。そういった点では、少女の推察は正鵠を得ている事になる。少なくとも、興味を失った訳では無いのだ。
とはいえ、疑って掛かっている訳でも無い。疑うべき材料も無いのだから。強いて言えば、ミレー族の話題の際に少女が吐き出した溜息が少し気になったかな、程度のもの。
にも関わらず、少女に対して観察する様な視線を向けるのは、殺気を感じ取ったから——では無い。そんな武芸者の真似事の様な事は己には出来ない。
しかし、若輩ながら宮中の魑魅魍魎と過ごした日時が、他者とは違う感性を己に宿した。猜疑、警戒、敵意。それらを敏感に感じ取る程度には、他者からの恨みを買い過ぎていた。
「何も私が慈悲深い人間である訳じゃない。支払う対価に見合う仕事をしていれば、見た目など問わぬと言うだけの事。そう考えれば、特段珍しいものでもなかろうさ」
少女の思考を肯定するかの様に言葉を繋ぎつつ、見せる態度は相変わらず無警戒なもの。
実際、何となく警戒されている気はするが、激しい敵意や疑念を感じている訳では無い。だから、観察する様な視線を向けながらも、それを露骨な行動で示す事はしなかった。
——実際のところ、少女が断ればそれで終わりにするつもりだったのだ。向けられている感情も、貴族に対する敵意である可能性も否定できない。己の思い違いであれば、少女が断れば適当に話を切り上げて仕事に戻るつもりだった。
だが、そうはならなかった。求めた身分証の代わりに放たれたのは、己の心臓目掛けて放たれた矢。
狙い違わず真直ぐに。心臓へと迫る鏃は——
「……荒事は面倒故思い違いであって欲しかったが、まあ仕方あるまい。安心しろ。殺しはせぬさ」
硬質な金属音と共に、少女の放った矢は文字通り己の前に突然"現れた"大楯によって弾かれる。少女に抱いていた僅かな疑惑が。そして、単純な盾、という魔術による生成に時間のかからぬ物を選んだが故に。ギリギリ、と言える様な間ではあったが、少女の矢を弾く事が出来た。
それとほぼ同時に、ぱちりと指を鳴らせば少女の背後から揺らめく様に生成されるのは、自我の無い瞳を少女に向けるグリフォン。
「食べるなよ。色々と、聞きたい事があるからな」
魔力によって生み出された疑似生命体のグリフォンは、甲高い啼き声を上げると主の命に従って少女へと突進する。
尤も、此処迄に多少のタイムラグは当然発生している。回避も対応も、容易に可能なものではあるが――
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」からティクスさんが去りました。
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。