2019/06/25 のログ
ご案内:「ゾス村」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 港湾都市への旅の途中。立ち寄った村は相変わらずこじんまりしている。
それはこの村にあるこの小さな宿兼酒場も同じで、農作業を終えて木のジョッキを軽くあおるために来る村人を10人ばかり収容できる程度。
日が暮れると間もなく、そんな彼らは明日に備えて家路についた。

壁掛け時計が振れる音も聞こえるほどの静かなカウンターに1人の遊牧民が座って食事を摂っている。
採れたての野草とベーコンをチーズの上に並べてカリカリに焼き上げたパイと、ミルクとハチミツを混ぜて冷やしたハーブティー。
そんなささやかながらのご馳走がどれほど美味しいかは、むにむに緩む頬が物語っている。

遊牧民の他に人の姿はなかった。
店員は二階の宿の主人も兼ねていて、ここに泊まる自分のために部屋を用意してくれている。
宿代は夕食代込みで先に払っており、何かほしいものがあったら適当に食材をつまんでいいらしい。辺境特有の緩さだった。

賑やかな場所も好きだけれど、静かな場所も好き。
そんな小さな人影が、のんびりと遅めの夕食を楽しんでいる。

タピオカ > やがてお皿が空になると、ほどよく満足した食欲に「ごちそうさま」と呟き口元を布で拭う。
王都の酒場なら食器類は店員に任せておけばよいけれど、今は無人状態である。店員はベッドメイクに手間取っているらしい。
少し考えた後にカウンターの中にもぐりこみ、自分の使った食器類を洗うことにした。洗い終えたら、パントリーからリンゴをひとつ頂戴する。

客席に戻ると、そこに腰かけてリンゴをかりっと齧る。
開け放たれている窓から窓へ、夜風が渡って前髪を揺らす。
涼しさの中に夏の夜の匂いが混じり始めている。
その事に気づくとふっと瞳を細め。片手に持ったリンゴの艷やかな表面を指で撫でた――

ご案内:「ゾス村」からタピオカさんが去りました。