2019/02/24 のログ
ご案内:「ゾス村 宿屋兼食堂」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 鄙びた村にある、3組も客が入れば満室になりそうな木造の宿屋。
築年数は解らないが、外壁は何度も塗りなおされ、継ぎ足されていて、あまり丈夫そうではない…それでも村唯一の食堂を兼ね備えていることもあり、寂れたような雰囲気はない。
薄暗く曇って冷たい風の吹く、夕刻にほど近い時間。建付けの悪い扉が小さな悲鳴を上げながら押し開けられ、灰色のフードを目深に被った人物が足を踏み入れた。
後ろ手に扉を閉めながら、フードの奥から翠の双眸がゆっくりと室内を見渡す。拍子に長い黒髪がフードの間から零れ、どうやら女であるらしいことが解る…
■ジナイア > 店内、女の正面のカウンターも含め、人影はない。ただ食堂のほうにある窓から、時折風切音が響くだけで、それ以外物音もしなかった。
(…泊まりの客も居ないようだな……)
少なくとも今は。となんとは無しにそう思い、床を小さく軋ませながらカウンターへと歩みを進める。辿り着けば卓上には開きっぱなしの宿帳と、小さな呼び鈴が伏せてある。再び視線を巡らせる。カウンターの向こうにある扉の奥からも物音はしないが…試すつもりで呼び鈴へと赤銅色の手を伸ばした。
■ジナイア > 一度、小さな呼び鈴は意外なくらい澄んだ音を立てた。
…それでも答えるものは窓を揺らす風の音だけで、女は熟れた唇からそっとため息を漏らした。そうして逡巡するように瞳を瞬く。
(……野宿は流石に…)
季節柄もあるが、あまり治安の良くない地域だと聞いている。もしここが駄目なら、夜通し歩いた方がまだ余計な危険から遠ざかることができるだろう…
■ジナイア > (多少は疲れるが、まあ、それも悪くないかな……)
故郷と違って、平たんな道や光景がずっと続くわけではない。
夜の異国の道行きも、空気が違ってまた良いかもしれない。
(この風で雲が晴れてくれれば、月明りも楽しめるだろうしな…)
思いなおせばそう憂鬱な事でもなくなって、女は呼び鈴をそっと元に戻した。そうして、今更ながら不用心な宿屋だ…と笑みを零す。
■ジナイア > 踵を返して、再び床を軋ませながら扉へと向かう。最後に、振り返って宿屋の中を一瞥した。
(異国の村の雰囲気を楽しむのは、また時間をとってからにしよう)
明るい内に進むに越したことはない。夕刻から闇へと沈む景色も嫌いではない事だし…再び小さな悲鳴を上げる扉に手を掛ければ、風吹きすさぶ外は早薄闇が迫りつつある。それを少し面白がるように唇の端を上げると、女はその薄闇の中へと姿を消した。
宿屋の扉は、小さな悲鳴を上げながらも外からの風を押し戻し、やがてぱたりと閉じる。再び宿の屋内は風音だけで満たされる…
ご案内:「ゾス村 宿屋兼食堂」からジナイアさんが去りました。