2018/11/13 のログ
ご案内:「ゾス/村のはずれ」に紅月さんが現れました。
紅月 > 「……うっわぁ…」
とある静かな林の中…紅の髪の冒険者が籠を背に、ドン引いた顔で立ち尽くしていた。

その日、仕事で訪れたのはゾスという村。
まれびとの道を真っ直ぐ、九頭龍山脈麓の三叉路に向かっていく途中にある穏やかな農村…の、はずれの辺り。
ギルドで見た情報によれば『キノコが大繁殖して困っている』んだとか。
…訳がわからないよ、と、とりあえず現地に来てみれば、確かに林がキノコだらけ。
菌糸類の湿気を纏った独特の香りが辺りを埋め尽くし、えもいわれぬ空腹感を…じゃなかった。
村人曰く『不気味だから調査と原因究明をして欲しい』だそうな。

「いや、でも、このキノコってやっぱり…【鑑定:きのこ】!」

『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『クリタケ』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『ヒラタケ』『ヒラタケ』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『ヒラタケ』『マイコニ茸』『クリタケ』『マイコニ茸』『マイコニ茸』『マイコニ茸』…etc.

「……、…うぉぉ、目が……っ!」

思わず目頭をおさえる…これはいただけない、視界の五月蝿さで目がやられてしまいそうだ。

紅月 > 「そっかぁ、うん…マイコニドかぁ」
コシコシと軽く目を擦りながら呟く。
マイコニドというのは茸の魔物で、他者を襲うより繁殖や領土拡大に御執心な…比較的おとなしい連中なのだ、が。

「…や、あれっ、うーん?
マイコニドの胞子や菌糸の伝播ってそこまでじゃなかった筈なんだけど…」

再び惨状を見据えて、首を傾げつつ…とりあえず、木の幹に生えたマイコニ茸をもいでみる。
此れ程の状況となると…考えられるのはマイコニドの群れか、はぐれマイコニドをよほど放置したか、それとも短期間に異常繁殖するきっかけでもあったか。
…大穴で亜種の誕生も考えられなくはないが、そんな魔族領じゃあるまいし。

ぷちん、ポイっ…ぷち、ぷちん、ポポイっ。
考えつつキノコを収穫しては籠へ放り込んで、収穫しては放り込んで…ひたすらにマイコニドの痕跡、もとい、マイコニ茸の群生地を辿っていく。
籠が一杯になれば亜空間の倉庫に仕舞い、また新たな籠を引っ張り出しては収穫を。
どうせ放っておいたら生態系クラッシャーになってしまうし、魔法薬の素材なんかに有効利用出来るのだから極力回収した方がお得なのだ。
それに、何より…

「…コイツ、煮ても焼いても蒸しても旨いんだよなぁ」

マタンゴと混同されやすいのもあって、あまり知られてはいない様だが…普通に秋の味覚としても優秀なのだ。
香り高く旨味とコクがあって、何なら茸茶にしても旨い。
元がお化けキノコだろうが毒がなくて旨けりゃあもう食材でいいんじゃないかな。
…帰宅後の楽しみが増えた、と喜色満面である。

紅月 > 「ん、この子も太くてハリがあって肉厚…
ほぉんと、やたら一本一本の質がイイんだよなぁ…変なの」

収穫者としてはありがたい限りだが、やはり何かがおかしい。
今まで見てきたマイコニドの痕跡といえば、大半がポツポツとある程度…こんな大盤振る舞いなのは、やはり群れか、または亜種を見付けた時ぐらいだった筈。

「…居るのかなぁ、亜種。
どうせだったら契約したいなぁ…少なくとも、魔族領に帰ってもらわなきゃだし」

それもダメそうなら晩御飯…である。
魔族であるマイコニドも、紅娘にとってはただの食材…ひょっとしたら毒持ちかもしれないが、毒抜きの心得はある。
更に毒耐性もある。
胞子の飛散にだけは注意せねばならないが、旨い飯の為ならどうという事はない。

「……? なんかいる…?」

視界の端に揺れる草。
立ち止まり注視してみる。

紅月 > 「……、…うっそだぁ…」

草むらから出てきたのはキノコのコスプレをした幼女…ではなく、キノコの魔物。
マイコニド族の中でも繁殖に特化した、か弱い亜種…マイコニドクイーンであった。

「ええと、こんにちは…こんなところでどうしたの?
私、はぐれクイーンなんて初めて見たよ」

苦笑しながらその場にしゃがみ込み、話を聞いてみる。
どうやらこの間の雷雨の夜に雷に撃たれた枯木…の、すぐそばに偶然生えていたマイコニ茸から変異成長した個体らしい。
何もわからぬまま本能に従って歩き回っていたら、辺りがキノコだらけになっていた…と。

「いやぁ、でもなぁ…この辺りに群生地を作るのはオススメできないよ?
ここらは人間達の里だからなぁ…」

困ったように笑いながら、アレコレと説明してやるも…やはり種の本能には逆らえぬのかキョロキョロと辺りを見回し始める、ので。

「…うちの地下、来る?」

なぁんて、ついつい誘ってしまった。
嬉々として承諾するマイコニドクイーンを自宅の地下に転送すれば、あとは残りのキノコを回収して村とギルドに伝えるだけ。
ひとつ伸びをして、キノコ狩りの続きに勤しむのだった。

ご案内:「ゾス/村のはずれ」から紅月さんが去りました。