2018/09/14 のログ
ご案内:「ゾス村」にパラスワームさんが現れました。
パラスワーム > ――…ゾス村

夜の帳が下りたというのに村の数少ない娯楽施設である酒場からは賑やかな喧騒が聞え、店の入り口からは眩い明かりが零れている。

その明かりを避けるように、1頭の狼がだらりと舌べろを垂れ下げて唾液にしては粘り気の強い体液をたらした舌から伝わせて垂らし零しながら、足音も無く歩いている。

集団であれば村人達は警戒するだろう、モンスターに近しい大きさであれば同様なのだろうが、野生の狼がそれも1頭だけで有ればこんな夜更けである、見てみぬ振りをする者がほとんどで、冒険者崩れですら気紛れか食べかけの食料を投げるくらいで、誰もが排除をしようとしない。

誰もが狼くらいは、もう戸締りもするし、害がなければ、と慢心油断をしていてか、その狼は危害を加えられる事無く堂々としたものであるが、その眼は濁り虚ろで先程から舌を仕舞いこむ様子も無い。

更に言うならば人を恐れる様子も無く、それ以上に濁った眼で何か誰か探すようにギョロギョロと左右に上下に忙しなく動かし、乾いた鼻先を使って匂いをかぐ仕草を見せる、勿論歩きながら……。

その狼の正体は寄生型の触手生物である。
それはそれそのものは脆弱な魔物である故に狼のような己より強い者を選んで寄生し、良い苗床になる者を探す脚にしているのだ。

特に狼や植物を好んでいるのは狼は人間に警戒されにくいし機動力がある、植物は狼以上に人間に警戒されないが動く姿を見せられない、とどちらも一長一短であるが、今宵その中で狼に寄生しているのは人里に下りて、苗床になりそうな雌を探す為だ。

眼を動かしているのは苗床になりそうな雌を視認する為。

鼻を動かしているのは雌の香りを見つける為。

警戒されていない事を理解してか、一目が途切れるたびに狼に向ける視線がなくなるたびに近くの植物の根元に口内から吐き出して「触手」を植えて、探索と同時に少しずつ罠も敷いていく。

喧騒止まぬゾス村の一夜、其処に惨劇の音色が加わるかは誰も判らない。