2018/08/05 のログ
■ギィギ > ――…ゾス村の片隅にぽつんと建っている廃屋。
普段は村の子供達の隠れ家や肝試しに使われる程度にしか利用されず、また稀にではあるが村の宿が満室になった際に旅人や冒険者と宿泊させる臨時の宿にもなる、そんな廃屋なのだが、昨夜から何物かが中で蠢き、這いずり回る不気味な音を奏でているらしく、誰も近づこうとしない、本当の意味での廃屋になりかけていた。
原因はその廃屋に巣食い、廃屋をまるまる一つ腹として領域へ罠へと変えて獲物を待つスライムの亜種の仕業で有り、それは今宵も獲物を捕らえるべく、仮死状態より活性化し、廃屋の中を元気良く這いずり回っている。
天井も、床も、タンスの裏からベッドの下まで、廃屋のありとあらゆる場所を巡り這いずり、自らの身体の表面を擦りつけ、薄っすらと身体を広げると言う地味な作業。
だがその作業の甲斐あってか、廃屋の中はギィギの身体が薄らと広がり、全てが感覚器やレーダーに近しいモノとなり、侵入者を誰一人逃がさない、心算の罠を創り上げたのだ、
薄らと広げた身体、本体は廃屋の中にある陶器で出来たバスタブの中であり、広げた身体に誰かが触れれば一斉にその付近まで広げた身体を集わせて、もう1匹の分身を生み出し、侵入者を捕獲し貪りながら、本体は分身に同化して全てを飲み込む算段である。
無論、侵入者がバスタブのある浴室まで来れば重畳、本体で丸呑みしてむさぼってしまおうと……。
天井から吊れ下がるランプ。
それに火を灯しても巧みに身体を広げたギィギの痕跡を見つけるのは難しいだろう、だが机の裏や柱の影など人目につきにくいところに視線を向ければ、其処は粘液が溜まりランプの灯りをキラキラと反射させて輝く。
さて、今宵は廃屋に迷い込むものはいるか、それともギィギが巣食ってると知って退治に来るか、掴まえて研究しようとくるか、どちらにせよそれはギィギにとって美味しい栄養になるだろう。
■ギィギ > 今宵もどうやら空振りのようで、獲物にありつけないと判断したギィギは薄く幕の如く張り巡らせた身体以外はバスタブに引き返し、たぷんっと一度だけ揺れてから直ぐに再び仮死状態へと……。
ご案内:「ゾス村/廃屋」からギィギさんが去りました。