2018/04/25 のログ
ロカ > 「あっ……!…え゛っふん!!」

思いがけぬ衝撃に、つい驚愕以外の、色をつけるのであれば何所となく桃色に蕩けた声が零れてしまったのを、不細工な咳払いで誤魔化す。
心優しき少女に別の意味で視線を向ける事が出来ず、罪悪感に早鐘を打つ鼓動を無理矢理落ち着かせ

「……も、もっと強く……!じゃ、ぁ、無い…っ…!セレーナ様……」

彼女が人妻と知った途端、そっと押し殺した恋慕が別の爛れた形で燃え上がりそうになったのを懸命に抑える。
久々に、否、生まれて初めて受ける、愛情の篭った叱責。叱責。叱責。
いけない、とは、思う。だが、威圧感のあるポージング、真直ぐに己を射抜く視線、尾てい骨から、背筋へと這い上がる震え。
小さく、生唾を飲み込み。

「……!!…も、申し訳ありません、せ、セレーナ様…っ…!
ぼ、僕…しょ、正直、じじ、自分なん、…ぁ、っ…誇り、は、持て無い、む、難しい、デス…け、ど…っ」

本能的に膝をつき、視線位置を低くする。胸前で両手を組む様は、さながらどこぞの殉教者めく様子である。
はぁあ、と矢鱈熱が篭った息を吐き出し

「貴女が……み、認めて下さった、事…そ、それは、僕、の、一生涯、の、ほ、誇り、デス……。お美しいセレーナ様、花の様に可憐で、しかし荒野の獣の如く逞しく強く…
ぼ、僕、が、頑張って……い、何時か……セレーナ様に、じゅ、銃口と共に脅しつけられる程……に、な、なりま、すぅ…!ぁ、あの、あの…っ!」

じゃらり、音を立てて差し出すのは先程の対価である。両手でもって恭しく差し出し、

「も、も、もっと…!だ、駄目な僕を…っ!!し、叱って下さいぃっ……!!」

先程の朴訥な様子は何処へやら、殴打がスイッチとなり、興奮に戦慄きながら懇願する青年の姿がそこにあった。
最初は悪徳商人、次いで犠牲者、と見せかけた腐れマゾに巻き込まれた少女の運命や、如何に…?!次回に続くとか、続かないとか……。
とまれ、騒ぎながらも、青年と少女は逃げ去っていくのであった。

セレーナ > 相手が咳き込むのを見て、どうしたのか、と思うが。
少女は烈火の如き勢いでの説教を辞めない。

「ん? 今なにか言った?」

なんだか、説教される側が言わないような言葉が聞こえた気がしたが。
少女は気を取り直し、相手にまっすぐ視線を向ける。

「だからっ! そういう、すぐ謝ったりとかがダメなの!
 男でしょ! もっと胸張って! 堂々とする!」

謝罪する相手に、更に説教するものの。相手が膝をついてしまい。
更にはなんだか祈りまで捧げられるようなポーズまでされて。
思わず溜め息、である。なんともこれは。そうやすやすとは性格は変わらないようだ。

「ん。褒められて悪い気はしないけど。なんだか褒め言葉が剣呑な気がするわ。
 ……いや、脅されないように、全うに生きなさい。アナタも」

なんだか、変な感じになってきたぞ? と思いつつ。一応話的にはキレイにまとまったからよしとしよう。
なんて考えていたのに。相手が、なぜかお金を差し出してきて。
明後日なことを言ってきた。あんぐり、と口を開ける少女だったが。

「……はいいいいいいいいいぃぃぃっ!?」

予想外の言葉に、少女が絶叫するものの。とにもかくにも。
少女の初めての人助けは、無事成功、という所。

なお、少女が格好つけて店主に投げつけたのは金貨が数十枚。
完全に赤字で、生活費に痛手だったのは、内緒の話である。

ご案内:「ゾス村」からロカさんが去りました。
ご案内:「ゾス村」からセレーナさんが去りました。