2017/06/26 のログ
ご案内:「ゾス村」にアインズさんが現れました。
アインズ > ゾス村
王都より賑わっている事は有りえない山村ではあるが、こんな時間にも村人は1日の疲れを癒す為に酒場に通い、明日の英気を養っている。
村に点在する住居もまたこんな時間でも煌々と灯りは燈り、村人達の賑やかな声が聞こえてくる。

有り触れた光景
だが今宵はその有り触れた光景に一欠けらの異物が混入している。
誰が見てもそれは異常な存在である筈なのに村人はその存在に眼もくれず通り過ぎ、其処に済む野良犬や家畜ですら違和感を覚えない――だが確実に存在する魔物。

名前はアインズ
その姿は人間の頭部程もある巨大な眼球を身体として無数の触手を生やした目玉の魔物である。
それなのに、誰が見てもバケモノであるのに、それが通りをふわふわと浮遊して通り過ぎ、時折酒場を覗いても誰も気がつかないのはアインズの持つ能力の所為であった。

催眠術
巨大な目玉と視線があった人間を含む生物に存在していないと認識を狂わせ、その場にいてその場にいない存在として村人に存在を認識させないで贄を探す阻害をさせないための術。
主に獲物を暴れさせない方法や外敵から身を守る為の術ではあるが、こういう風に獲物を探すのにも利用していた。

――冒険者や騎士、魔術師などであれば催眠術から抜け出すのは容易いだろう、若しかしたら勘の鋭い人間であれば気がつくかもしれない。
だが幸運な事に今現在はそんな都合の悪い人間は存在しないようで、目玉に無数の触手を生やした魔物は我が物顔で村を彷徨っているのだった。

アインズ > 村人の数は決して多くないとは言え通りを歩けば誰かしらに遭遇する狭い村。
行き交う人々が浮遊する触手を生やした目玉を見向きもせず、時折村人の方と魔物がぶつかりはするが、それでも誰もが気に止める様子はない。

今だ賑やかな酒場も同じ、目玉が酒場に入り込んだとしても誰も気にも留めない光景は最早異様な世界としか表現できず……。

日常と非日常が薄紙一枚で隔てられている、そんな状況を救う者などいるのだろうか?異常に気がつき魔物を排除する者は現れるだろうか。

少なくとも魔物は今のところ獲物を選別するように巨大な魔物でジロジロと行き交う人々を値踏みするような視線を向けるだけ、民家を窓から覗き込み中にいる人間を見つめるだけである。

若しかしたら気がついている村人はいるのかもしない
だが騒ぎ立てるより気にしない素振りをしていた方が安全だと察知して行動に出ないのかもしれない。

ずるり、べちゃり、にゅるり……。

魔物が壁に触手を這わせて移動するたびにそんな生々しくも不気味な粘り気ある水音が夜のゾス村に響き渡る。

アインズ > 暫く徘徊を続けた後に巨大な目玉に触手を生やした不恰好な魔物は村の廃屋へと消えていく。
其処には何があるのか?
其処は若しかしたらアインズの巣なのか?
それは誰も知らないし、村人は触れる事はないだろう。

まるでその廃屋が村の中に合って存在しないかのごとく…

ご案内:「ゾス村」からアインズさんが去りました。