2015/10/06 のログ
ご案内:「ゾス村-宿屋・フォレスト-」にホムラさんが現れました。
■ホムラ > (静かな夕刻だった。村からやや距離を離した無人の宿で黒装束の男とも女ともわからない冒険者が一人、ロビーにあたるフロアの中央に設置されたテーブルの上に蝋燭を置き、使い捨ての火の魔法書を唱えると小さな炎が蝋燭に宿った。今まで真っ暗に近かった部屋の中が蝋燭の炎によって薄暗く照らされる。漸く光を得ると一安心、とばかりに小さく溜息をつき、周囲に視線を送った。) 一先ず、各部屋は見て回った。盗賊や魔物が潜んでる様子はない。……これで少し息が抜けそうだ。 (魔法によって隠されていない限りは、という言葉が付け足されるが魔法探知の術はないのでこの際その話は頭の隅に追い遣る。近々この村の周辺にいる魔物を討伐する依頼を受ける事になっているので、本日はその下見という事で宿を取ろうと思ったのだが、)(――なんというか、この村の人々は色々と問題抱えてるからなぁ。)(と、考えて無償提供されていて且つ、村から距離の離れた宿へと足を踏み入れた。無償というだけあって手入れも殆どされておらず、魔物が踏み入った形跡、争った痕跡、そして暫く人が滞在していたらしいゴミの山などが広がっていたりと散々である。それ故に他の人間があまり寄りつかないという利点もあって、黒装束の冒険者はこの場を選んだ。この姿は兎も角、中身はあまり見られたくないからである。なので本日はこの宿のどこか一室を借りて拠点とし、村の様子を伺う事にしていた。二階の一室には既に持ってきた食料や予備の武器が置かれているが、この冒険者の目を掻い潜った隠れ方さえしていなければ奪われるような事はないだろうと思い、ロビーで呑気に物思いに耽っていた。)
■ホムラ > (そんな夕刻の時間を過ぎて、ふと周囲があまりに静か過ぎる事に気付く。) (――おかしいな。さっきまで虫の鳴き声とか聞こえてた筈なんだけど。) (日が沈み、辺りが完全な闇に閉ざされている。あまりに、静かな夜。物音ひとつ、常人であれば何も聞こえない、精々火の音だと、そう思う。――しかし、黒装束の冒険者は決してただの人間ではない。だから聞き逃さなかった。裏口が静かに開かれ、足音を立てずに侵入してくる者の僅かな息遣いを。) ………。 (同じように、物音を立てないように背負った黒剣の柄に右手を伸ばし、掴んだ。裏口はロビーのすぐ脇を通ってすぐの場所にある。人間であれば入った時点で黒装束の冒険者が己の武器に手を添えている事に気付き、別の行動を取るだろうが――その息遣いは徐々に荒くなり、やがては唸り声へと変わり始めた事で、察した。) (――魔物ッ!) (振り返ると同時に剣を縦に振り下ろすように引き抜く。それに合わせるように、紫色の人型らしき生物がとびかかって来ていた。もし冒険者がここで剣を抜いていなければその紫色の魔物が振り被った右手の爪が厚手とはいえローブを引き裂き己にダメージを与えた事だろう。だが、背後を取られた時点で飛び掛かってくる事は察していたから、この行動に出た。――次の瞬間、鈍い打撃音と共に紫色の人型は地面へと堕ちた。)
■ホムラ > ゴブリン……いや、これはインプか。 (痩せ細った紫色の人型の生命体が脆くなった木の床に減り込むように倒れている。振り下ろした刃は深くインプを切り裂いてはいるが、両断できてはいない。この剣の欠点は重く威力はあるが切れ味よりも鈍器に近い性質にある。) ん、しょ。……この痩せ方、暫く何も食べてなかった、のか?後続は……無さそうだ。 (インプの侵入経路、そして緑色の血を流して動かなくなったインプの死骸を見据えて思考する。痩せ方といい、単独による襲撃から暫く何も食べていなかったのだろうと推測する。そして後続がないのは恐らくこのインプが最後の生き残りであった可能性。何らかの原因で全滅した為、どうにか食料を得る為に人を襲った、といったところだろうか。) (――実際、この辺りには魔物の襲撃も、あとは傭兵団が暴れている事もあるし、そういった影響に巻き込まれて弱い魔物は全滅させられてるのかな。) (そう思うと少し気の毒にも感じるが、魔物は人に害成す存在である以上、駆逐しなければならないのも事実である。襲い掛かってきてしまった以上、倒されるのは致し方ない事だ。同情の余地はない、お互いに。) ……宿があまり荒れなくて良かったが、死体をこのままにはしておけないな。 (作業が増えてしまった、そう思考しながらもローブのポケットから保存用の魔法が記載された書物を取り出す。今からこれを村に届けるわけにもいかないし、放置もできないとすれば冒険者が持ち歩く保存魔法書物を用いる他ない。ちなみに持って2日程度という短い効力の格安の書物を使っているので資金面はどうにかなる。)
■ホムラ > (魔法書を広げて記載された文字を読み上げると魔法書が光を帯びて、冷気が書物の表面から発せられて空気が静かに凍り付いて行く。書物から手を離すとインプの死体の上へと被さり、書物が消失して白い冷気がインプの体を包み、コーティングして行く。) これで明日の朝までは大丈夫だろう。……裏口の戸締りをして、一旦部屋に戻るとするか。 (腰に手を宛て、やれやれと首を左右に振る黒装束の冒険者。インプが開いた扉に近寄るや否や、そういえば何故インプは容易く入ってこられたのだろうと思考する。決して知能は高い方ではないはずだが、と思い扉に近付いたところでその理由を察する事となった。) つまり、ドアノブが――壊れている。 (その惨状を目の当たりにして漸く出た言葉である。つまり元々扉として機能していなかったのだと察すると、冒険者は数時間かけて部屋中から物質を集め、裏口を塞ぐように設置した。弱ったインプだったから一撃でどうにかなったものを他の魔物だったら。想像するだけでぞっとしながら、裏口だけは頑丈に閉鎖して二階の借室へと戻って行くのだった。)
ご案内:「ゾス村-宿屋・フォレスト-」からホムラさんが去りました。