2023/04/14 のログ
ホアジャオ >

戦場特有の焙られた風が吹く野営地は、夕刻引き揚げた兵士たちが未だ行きかっていて騒がしい。
明日の作戦を伝えようと駆け回るもの、夜半の警戒の編成を伝える声、今日の戦果を称えあうもの、馬が嘶いてそれをなだめる声、英気を養おうというのか歌を歌いだすもの

「―――――!#$&%$!」

その喧噪のなか、無数とも思えるのテントの群れでも中心近くに据えられたとある将軍のテントの中から、猫の警戒声のような音が響く。
そして次の瞬間――――ドン!ばさっ!がしゃん!とそのテントが平たくつぶれる。
一拍も置かずにそのテントから駆け出していく黒い影がひとつあって、その一瞬のあと将軍のお付きの者たちが叫び、その声に集まってきたものたちが騒ぐ声。

抜け出した黒い影は、兵士たちの間を縫って野営地の端へ向かってかけていく。
かがり火が煌々と炊かれている中を抜けて馬たちが繋がれているところへたどり着いて、さらにその外の木立へ。

「―――――は―――――っ は―――――っ」

野営地の喧噪が少し遠くなって背後に気配もなくなって、そうしてようやく駆けていた足を緩める。
黒い影――――ゆるく波打つ黒髪を乱した女は、紅潮した顔で額を拳で拭った。

「―――我不是在开玩笑(冗談じゃない)……」

あまり息切れはしていないが、顔をしかめて鋭く小さく悪態をつく。
公主のお気に入りだとかの将軍の護衛として派遣されたのはまあいいが、夜のお供として手を出してくるとは思わなかった。
公主にバレたらどうするつもりなのか。

ホアジャオ > 自分でいうのもなんだが、決して手を出したくなるような類の女ではない。
大方面白半分だったのだろうが

(あの焼きもち焼き公主に知れたら、アイツの方がマズイことになると思うンだケド)

木立の中を吹く風は少しつめたい。
火照った身体を撫でていく風が少し気持ちいい。

公主は自分の性質(喧嘩馬鹿)を知っている。間違っても女の方から誘ったなどという勘違いはされないはずだ。(そもそもだからこそ派遣されたのだし)

しかし

(…女心ってわかンないかンなあ)

小さく独り言ちながら、木立の間野営地を迂回するように歩いていく。
装備やらなにやらはあの潰れたテントの中に置いてきてしまった。
少ししたら、しれっとした顔で取りに行くことになるだろう。

ホアジャオ > 次にあの将軍と顔を合わせたときどんな顔をしてやろうか。
しれっと何事もなかったように振る舞うか。
それとも意味ありげに笑ってやるか。

(―――――どっちにしたら、喧嘩相手を貸してくれるかなァ)

将軍自身と殴り合うわけにはいかないから、手下から見繕ってもらいたいところだ。

そんな皮算用をしながら、女は頬の火照りが収まるまで木立の間を歩いて行って
夜半前には、しれっとした顔で立て直された将軍のテントに現れて装備を回収していくだろう。

思い通り、喧嘩相手に恵まれたかどうか―――――

ご案内:「ハテグの主戦場」からホアジャオさんが去りました。