2022/12/17 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 夕闇が迫って戦も三々五々、競って互角のまま終わった今日の戦いは、引き揚げた兵士たちに意気軒昂な気運を残していた。
あちこちに焚かれた篝火が天幕の合間を行き交う兵士たちの顔をてらしているが、どれもが上気しているように見えるのは炎のせいだけではないだろう。
ウマの嘶きも混じり行き交う言葉も武器鎧の奏でる音も賑やかなもので、戦勝のときとはまた違った明るい熱気で満ちていた。

その喧噪から離れ、騎士たちの馬が繋がれている場所を抜けて陣地を離れていく影がひとつ。
冬枯れの雑草を踏み分け丘を下って行く、月明りに照らされたその人影は女だ。
戦場から戻って幾許もないのだろう。全身血汗に塗れたまま、鎧の擦れる音を鳴らしながら丘の麓へと辿り着くとおもむろに鎧を脱ぎ始める。
近くに小川の流れる音が聞こえる。

「―――…」

女は鎧を地面へと下ろすと、指先を小川の水へと浸す。
少し顔を顰めたのは、思った以上の冷たさによるものだろう。

グァイ・シァ > 女は人間ではない。
身に纏っているものは欠損などは再生できるが、汚れはどうしようもないこともあった。
血油に塗れれば、刀も鎧も鈍る。
朽ちてから再生させるよりも、折に触れ手入れをした方が何かと良いことは学んでいたが、まだ好きに離れない作業だ。
まして、冷たい水を使えばその分手指の動きが悪くなる。
陣地の井戸を使えばまだ、温もりのある水を手に入れられることもあったが、代わりのように絡まれることが少なくなかった。

どちらにしろ面倒だったが、今日の所は手指のほうを働かせることにしたらしい。

グァイ・シァ > 白い月明りの下、気温はどんどん下がって行くように思える。
呼気が白くならないのが不思議なくらいだ。

女は鎧を豪快に小川に放り込むと、持ってきた布で汚れを落としに掛かる。
意外にも丁寧な作業のお陰で、陣地に戻る頃には女に絡むような元気な輩も寝静まった頃だったろう。

ご案内:「ハテグの主戦場」からグァイ・シァさんが去りました。