2022/08/08 のログ
■ロン・ツァイホン > 戦場に響かれる歌声に、その方向へと顔を向ける。
その声は自身らの後方からであり、その声に乗るのは魔力。
音楽隊でも本陣が送り出したかと思えば、それは一人の男が行っているのが見えた。
「ふむ……」
補助でもしてもらえると思ったが……その逆で。
敵の方から上がる悲鳴の数々に、なるほど、と内心で頷く。
あれは呪歌。つまり補助音楽隊ではなく攻撃音楽隊ということ。
敵兵の動きが鈍っていき、ついには動きすら止める始末。
それらを見逃す王国軍ではなく、一斉に突撃の指令がかかった。
どうやら、自分がこれ以上を頑張る必要はなくなったらしい。
悠々と、『死体漁り』を始める。
「くっふふ……遺品はこういう時にいくらでも持って行っていいって、ちゃんと雇われる条件にありましたからね。
死ねば仏、なら仏が金目のものを持ってても、まったく意味がありませんよね?
あぁ、今日も私に神の加護があった。感謝いたします、我が女神様♪」
ちゃら、と首にチェーンでかけてある、竜人の手でちょうどいいぐらいの大きさの丸い金貨。
その金貨に刻まれているのは、果物のブドウ。
それがシンボルマークの宗教や神など、少なくとも王国国内では知られていないが……。
「おっと……婚約指輪ですかね?ふふ、なかなか悪くない。
こっちはー……金歯がありますね、元貴族でしょうか?私の財布になってくれてありがとうございます♪」
心底楽しそうに、死体から金歯を指の力だけで抜き取る。
今日働いた分の報酬も含めて、なかなかの額になったと思う。
一時はどうなるかと思ったが、あの音楽隊のおかげですっかり戦況は傾いた。
逃走に回っていく敵兵を見て、ゆうゆうと金目のものを集めていく。
■ヴェルソート > 「♪…だけど今も忘れられないの 貴方が紡いだ言葉
思い出す度 いつか戻れる気がする あの頃に…♪…っ!」
そして歌っている内に視線をが戦場を一望すれば…突撃するもの、物陰に隠れて治療するもの、そして……死体漁りをするものと、様々であった。まぁ個々人の区別がつくほどの距離ではないが。
働けよ、と自分が働かされているのに悠々と死体漁りをしているものには愚痴りたくもなるが、まぁ戦場だ、それもまた致し方ない、のだろう。
それはさておき、歌を途切れさせぬ息継ぎの合間に…ドッ、ドッ!とこちらに矢が数本、打ち込まれ始めた。
流石にタネがばれてしまったらしい、まぁ小高い丘の上なんて、視認性と声の拡散性をあげるためにくっそ目立つ場所に立ってしまったのだから当然だろう。
自分たちの身を守りたいところだが…あいにく、複数の呪歌を掛け合わせる技術はあるのだが、攻撃系と防御系の呪歌を同時、なんてそれこそ人外じみた技はできない、ので…曲調を切り替えた。それに、これまでの時間で抵抗力のないものはあらかた凍り付いただろうという希望的観測も込めて。
「♪…だからもう 自分に嘘はつかない
鎖振り払い 目指そう あの蒼い海へ…♪」
タン!とタクトを跳ね上げ、ステップを踏み、合図のようにそこから曲調を切り替える。悲恋を嘆く歌から、悲恋の鎖を振りほどき、歩き出す歌へ。
その途端、曲の対象が、敵から味方に切り替わる。
勇気を奮い起こし、多少の攻撃を退けてしまう音の壁が、味方の兵士に配られていく。そして、ついにこちらに届いた矢が…命中直前にガチン!と音の障壁に阻まれた。
「♪…絶対! 愛だけは、全てを乗り越える!
星の決めた 運命も変えていく!…♪」
そうして、高らかに歌う声に、ちょっとした思いを乗せるのだ……前線働け、と…まぁ身勝手な物言いでしかないが、思うだけなら許されたい。その感情が、歌に乗らないとは、言わないが。
■ロン・ツァイホン > これだけ集めれば十分だろう、と懐に詰め込んだ宝石等を見る。
さて、戦況はもう十分だと思ったが……歌が一瞬病んで。
おや?と思ったが、音楽隊に向けて敵が矢を放っているのが見えて。
「なんだ、まだ前線の皆さん。攻めきれてないのか」
はぁ、と。ここまで攻めているならそろそろ敵も完全に敗走してもおかしくないのに。
摘発どうやらまだまだ粘る奴らもいるようで、すっかり勝った気になっていた自分の頭に冷水を駆けられたように感じる。
油断というか、自分もその空気に呑まれていたというか。
まぁ歌声で敵があぁも凍っていったのだから、そう思っても仕方ないだろう。
そうでなくても兵士の数がまだ互角と言えるなら、動けなくなった敵兵のほうが不利になるわけで。
「まぁ小遣い稼ぎを続けますか……。
敵将も凍っているなら、私の主級で収入が入るかもしれませんしね」
そう誰に言うわけでもなく呟き、走る。
敵の本陣、そのど真ん中で両手のかぎ爪を伸ばして。
「やぁやぁどうもこんにちは皆さん。
今日はいい歌が響くいい天気ですね、どうか神の加護あらんことを祈って……死んでください」
雑に神に願って、自身のそのかぎ爪を振るう。
隊長格はいたが大将格はおらず、大した収入にならないことに眉をひそめるが。
敵は一部財産もあったらしく、本陣にあるブツを見れば、芸術品らしきものも。
それ以外にも、戦争に使える魔道具もあるようで、一部を懐にしまう。
「一時はどうなることかと思いましたが、どうにかなったようでよかったです。
味方の被害も少なくはないですが、それぐらい疲弊してもらわないと敵が”また攻め込む”ことができませんからね。
いやぁ……次に傭兵として呼ばれるのが楽しみだなぁ」
どこまでも自分本位で俗物的で。
だが、その姿こそが正しく傭兵の姿でもある。
戦争で死体にタカる者。戦争の犬。ハゲタカ。それらすべて内包しているそのサマは、傭兵としてはこの上なく正しいのだろう。
―――早く戦争になーれ♪
そんな、聞く人が聞けば怒り狂うような言葉を、戦場に響く歌に合わせて唄った。
■ヴェルソート > そうして、曲調を変え、歌を変え…戦況に合わせて呪歌を切り替えながら支援は続く…どうやら、誰かが本陣まで届いたようで、そこからはもう、追撃戦の様相を呈してくれば、流石に向こうの本陣まで歌は届かない、己の仕事も、そろそろ終わりにさしかかった。
ちょうど曲も終わり……七色のタクトを腰に差す。
「…あー、これ、普通に歌う数倍疲れるんだよなぁ。」
普通の呪歌は敵味方の識別できねぇんだぞ、もっと誰か褒め称えろ、と誰かに愚痴りたいが、それがわかる者も、誉めてくれるものも居やしない。いや…護衛の兵士たちくらいは感謝してくれる、かも…どうだろうか。
まぁそれはさておき…凍って動けなくなった兵、矢を弾く程度の音の壁を手に入れた兵士…まぁ、そして崩れた本陣、追撃戦になれば戦場は己の歌の範囲外…なら、仕事はおしまいだ。
「そんじゃ、帰るとしますかね……ん?」
そう呟いて最後に戦場を眺めた時……何か、黒い何かが光を照り返した気がして、目を細める……あれは、人…だろうか?
ためつすがめつ眺めた後…護衛に急かされるように…戦場から引き下がるだろう。万が一にも流れ矢が飛んで来たら自分たちの失態になる、と。
…早く戦争終わらねぇかなぁ……。
そんな呟きが、帰り際こぼれたとか。
ご案内:「ハテグの主戦場」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」からロン・ツァイホンさんが去りました。