2022/03/13 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にエリザさんが現れました。
■エリザ > 長きに渡る戦争で、牽制レベル小競り合いを繰り返し見せている戦場。
優劣も戦況も曖昧である現在、再び過去から遡って何度目かも分からない交戦状態に達しており、夜も更けて双方の動きが鈍くなった今、幾人かの兵が小さく群れを作って徘徊している。
奇襲を警戒と索敵を兼ねて、首が忙しなく動いており、遠目からでも多少目立つ程。
そこにふと、草木を掻き分ける様な音が漏れ、敵だと勘繰った者達が一斉に其方に目を向ける。
顎で使われて一人の兵が先陣を切り、剣を向けてそろりそろりと歩み寄って、音の聞こえた位置に近付けば、一気に踏み込んで剣を突き立てる。が、誰も居ない。
緊張を漏らす様な溜息をつくが、その瞬間
ゴキン、と明らかに不自然な音が漏れた。
その音の先は、…草木の音の向かい側、つまり兵の群れの一人が立てた異音。
その対象は、首が在らぬ方向に捻じ曲がっており、自身が何をされたのか理解できぬまま、意識は遮断され魂は天へと昇っていった。
「安いフェイクに乗るんだな。緊張し過ぎだぞ?」
警戒する兵達、姿を隠してその女性は細やかな声で指摘した。
■エリザ > 激しく草木が揺れる。本来ならば補足するのは容易なのだろうが、明かりもない地形から低姿勢で移動しているのか、身体全体をハッキリと捉える事が出来ない。
相手を翻弄し一人の兵に狙いを絞れば、突進する様に距離を詰め、正面から飛び出す様に襲い掛かる。
下から掬い上げる様な肘打ちは、低姿勢で曲げられた膝を立てる為に勢いが増す。比較的大振りな攻撃も、視認を受けず半ば奇襲の状態なので、攻撃を近くする頃には、肘先端が顎を打ち抜き、状況を理解する前に視界は空を向くことになる。
脳を揺さぶられ、思考を失った所にダメ押しでシンプルな中段突き。素手の筈だが部位鍛錬を十分に施した拳は、戦場において戦棍と称しても遜色はない。実際に打たれた部位はひしゃけ衝撃は肺を到達し、呼吸を遮断。
この迅撃を隣で見ていた兵士は、咄嗟に剣を振り上げて袈裟斬りするが、彼女は連撃を受けた兵士の手首を引っ張り上げて引き寄せる。人を盾として扱ったのだ。
■エリザ > 悲鳴が響き鮮血が舞う。同胞を斬り伏せた兵も遂に彼女を目の当たりにするが、同士討ちに動揺して目が泳ぐ。
彼女は屍と化した兵をそのまま盾に前進し、同胞殺しの兵に押し付ける。
ただ意思なく突っ立っているその身に、血生臭い体と生々しい刀傷を押し付けて現実へと引き摺り戻し、遂には理性が外れて発狂し、近寄るなと言わんばかりに剣を幾度と振り下ろす。
目的を見失い狙いの定まらぬ攻撃は、ただその屍を無残な姿に変えるだけだと、そんな単純な結果すら最早頭には入っていない状態だが…。
これ以上の進展はないと悟った彼女は、再び剣を引いた相手の後隙を突いて、親指を立てて、そして眼球へと押し込んだ。…目潰しである。
目を開けられぬ状態、深くまで指を突き立てられて血の混じった粘性を含んだ涙を垂らして無防備に俯けば、その拍子に震えた利き手から剣を落としてしまい、彼女はそれを拾っては蹲って震える相手の胸を狙って剣を立て、ひと突きした。
■エリザ > 「平和ボケとは言わないが、相当緩んでいるな」
複数人を相手取ったが、最小限の労力かつ緊張感皆無で仕留めてしまえば、統率感の無さに兵士である意識の低い集団に、この戦が如何に惰性で続けられたものかと呆れに近い感情で嘆いた。
そして、最後の一人に目を向けた。
初手で仲間に様子見を命じられた若者である。
周囲の屍も、本来は彼を第一の生贄として敵地に放ち、そこから対処法を練る算段だったのだろう。結果は逆になってしまったが。
「お前だけにはチャンスをやる。進むか退くか選ぶと良い」
殺意の全く感じられない目を彼に合わせながら行われる、シンプルな問答。
さあ、その後どうなったか。この話は此処で区切られた。
ご案内:「ハテグの主戦場」からエリザさんが去りました。