2022/01/08 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場 王国軍陣地」にイファさんが現れました。
■イファ > 無数のテントが設営され合間に篝火が焚かれている王国軍陣地。至る所に高く掲げられた王国旗は、炎の明かりでほの赤く照らされてゆるくはためく。
薄い月はとおに天上に昇ってさむざむとした色で夜空に穴を穿っていて、周囲をちかちか光る星が彩る様はまた、空の闇の向こうに世界があって、そちらから光をこぼしているようだった。
昼間の戦闘は小競り合いにちかいものだけで、お互い一歩踏み込む前に日暮れを迎えた形だった。兵どもはまだ意気軒昂、陣地を行き交うものたちはそれぞれの役割に動きながらも騒がしく忙しない。
そんななか、傭兵の集まる近辺はいつもの通りと言って差し支えない。
飲んだくれるものあり早々に床につくものあり明日の準備に余念のないものあり、それぞれがそれぞれ、この場を楽しんでいる。
その楽しみのひとつと言って良いだろう、度々ある『掛け試合』が今宵も行われていた。
開けた平坦な場所にできた人垣。そこからは時折ワッと大きな歓声が上がり合間には怒声やらも入り混じる。
ルールは簡単だ、適当に指名される3人が一組となって対戦を組み、一人ずつ試合をして先に2勝した方が勝ち。どちらが勝つかを賭ける。
(どうせ、胴元が儲かる仕組みになっているのだろう)
図らずも一方のチームとして指名された全身鎧姿の女は、鉄兜越し先鋒たる朋輩の背を眺めながら呑気な事を考えている。かなり押され気味に思われるが、生死に関わることは無いことになっているから、仕方のない事、かも知れない。
■イファ > ワッ、とまた一際大きな歓声が上がって、女は鉄仮面の下で瞳を瞬く。
試合を眺めていて双方と周囲の動きを考えて居てどちらが味方だったかをすっかり失念していた。
「―――ああ、まあ頑張るよ」
すっかりしょげかえった様子の朋輩が肩を落とし、うなだれて帰って来るのに片手を上げて労う。入れ替わりで全身鎧の姿が人垣の前に出ると、相手方からは体格が倍はありそうな男が出てくるのが見えた。
(―――さて)
斬ってはいけないのなら、どうやって料理するか、周囲に魅せるか。
その日は月が沈むまで、喧噪はつづいたようだった
ご案内:「ハテグの主戦場 王国軍陣地」からイファさんが去りました。