2021/10/30 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場 戦場跡」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 空は水色に高く晴れ上がり、雲一つなかった日の陽が暮れる。洛陽間近の陽光は肌を焼こうとするかに強かったが、西の空に朱く残滓を残して沈んでしまえば途端に冷たい風が吹き始めた。

散々に踏み荒らされる戦場にしぶとく蔓延る雑草たちも、季節には敵わないとみえて白っぽく日に焼けたような茶色で丘を覆っている。それが血の香りを含んで吹く風にざあ、となびいて、合間合間で倒れ伏すものたちを浮き彫りにしていた。

ここにひとり
こちらにいくつか
あちらに一山

倒れ伏したものたちから反応は伺えず、ただ濃い血の香りだけが数刻前まで血の通っていた身体であることを示していた。

やがて陽の残滓が藍色に染まり、落ちて、辺りが闇に沈み、細い月が昇る。
吹いていた風は止み、ただひやりとした空気となって丘に蟠る。
大分薄れた血の香りの中で―――がさり、と秋枯れの草を揺らす音。
それは身じろぎし、やがて身体を起こす。

数多の倒れ伏していた影のひとつだったものは、翠の瞳で弱い月光を眩しげに見る。
手も顔も身体も血と泥まみれ。顔についた泥を拭ったつもりの動作は、代わりに血を塗りたくる事になった。

「――――…」

腰に履いていた刀はひしゃげて傍らに落ちている。それを見付けた女は忌々しそうに顔を歪めてから、ひとまずその場に座り込む。
身体を点検すると、身体はいつもの如く綺麗に回復しているが、鎧も服もずたずただった。余程ひどいやられ方をしたのかもしれない。

(……何食わぬ顔をして戻るにも、すこし時間が居るな)

女は死と血を糧にして存在している。
大きな損傷をやっと回復したばかりで、服や武器などを戻すには力が足りなかったが、この血の香りまだ漂う場所であれば夜明けまでには何とかなるだろう。

(……合間に、死体喰らいなどが来なければいいが)

追い払うような余計な力はない。
女は無感情な顔を上げて丘を見渡す。今の所気配はないが、これほど戦闘が繰り返される場所だ。それも時間の問題かもしれなかった。