2021/08/12 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にグリモアさんが現れました。
グリモア > 勝とうと負けようと、その結果しか生み出さない意味のない戦い。
そんな戦場の中、ソレはいきなり現れた。

何も無い空間から不意に溢れ出す濃厚な魔力。
それは魔力に縁の無い者にさえその目に映り、魔力持つものには近付けば酔いそうな程の濃密度の魔力を持つ存在。
その姿は小柄な少女の姿をしているものの。
魔術に縁のある者ならば強い警戒を促すものだろう。

「よ、っと…」

フワッと戦場ど真ん中の地面に降り立てば、それを見て戦いの手を止めた周囲の者達を見渡す。
風に白銀の髪を靡かせ、周囲を見渡すのは蒼い瞳。
胸元と袖口と裾の部分にフリルをあしらった緩やかなドレス姿に、胸元に両手で抱えるようにした分厚い書物。

何事かと手を止めた周囲の兵士達を余所に、ハァ…と大きな溜息を吐く。

「着地に失敗しちゃったわね…
いいからいいから、私は無視して続けなさいよ」

そんな兵士達に、ぶっきらぼうに言い放てば、追い払うようにシッシッと手を振ってみせる。

呆気に取られる兵士達だが、敵味方問わず、そんな様子に怒りを感じたのか。
少女に向かい、何人かの兵士が怒りを露に怒声を浴びせ。
ズカズカとそんな少女の元へと歩み寄る。

「あ、止めといた方が良いわ、アンタ。
それ以上近付くと、死ぬわよ?」

抱える本を少し上げて口元を隠しながら、可笑しそうに笑い。
忠告とも、馬鹿にしているとも取れる言葉を近付く兵士に向けるも。
そんな言葉を聞かされ、引き下がるような相手でもなく。
後数歩まで近付き、掴もうと手を伸ばす…のだが。
バヂンッ!衝撃と、身体を流れる強烈な電流。
身に纏う金属の鎧まで黒く焦げ、ブスブスと煙を上げながら地面に倒れた。

「あーあ、だから言ったのに。
人の忠告は素直に聞くものよ?」

致命傷だ。
しかし、そんな相手に平然とした素振りでそう言葉を向けるのだった。
ざわめきと戸惑いが周囲を覆い、誰もが少女から身を遠ざける。

グリモア > 「私はさ、未知の魔法を知りたいの。
誰かしら使える魔法じゃない、その人だけが持つ魔法。
誰か、そんな稀少な魔法を使える人は居ない?」

クルッと身を翻し、周囲に向かいそう問い掛ける。
ここは戦場の前線、魔法の使い手は多くない。
そんな場所でそれを聞いても、答えられる者は居る訳もないのだ。
かと言って、遠く離れた魔法の使い手に届く程の大きな声でもなくて。
当然の事だが、そんな少女の問いに対する答えはまともに返って来ない。

「あっそ、居ないのね?
それじゃ、ここに用は無いわ」

変わらぬ口調でそう言い捨てると。
抱えていた分厚い書物を添えた左手に、右手で閉じていた書物を開いてみせる。
広げた頁には何か文字が記してあるも、それは誰が見ても読み取れるものでは無かったが。

『すべてを染め上げしは白銀の凍土。
時は止まり、活動は止まり、そこは安寧を得られる事も無く。
彼方へと消し去るだろう』

少女の言葉と共に頁の文字が薄く輝き。
そこを中心に、溢れ出す魔力が戦場全てを覆い尽くす。

「こんな場所で無駄に戦っているんだもの。
アンタ達、消えても大丈夫よね?
それじゃ、バイバイ」

その輝きが書物全体を覆えば、最後の言葉に別れの挨拶と手を振って。

そして訪れるのは静寂。

瞬きをする間も於かず、戦場は白銀の空間と化した。
その瞬間から時が止まったかのように、戦場にあったすべてを凍り付かせたのだ。
それを確かめれば開いていた書物を閉じる。

グリモア > 「さてと、今日のところは帰ろうかしら。
何もない所にいつまで居たってね」

トンと軽く地面を蹴れば、その身はフワリと宙を浮いて。
低空を浮上したまま、少女はその場を後にするのだった。

ご案内:「ハテグの主戦場」からグリモアさんが去りました。