2021/05/28 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > ハテグ 丘陵地帯の上で陣を構える王都軍
対面する向こうの陣地も似たようなものながら、互いに本気の殺し合いではない
やり過ぎれば歯止めは効かなくなり、互いにどちらかが消耗しきるまでの戦になる

無駄な維持をするために無駄なプライドと無駄な意地を使わせない
砦とは違う勝敗の無い場 国境とは違うにらみ合うだけでは終われない場
其処に、王以外の命令を聞かない、暴れることが大好きな者と、それに付き従う同輩がいればどうなるか

全てが乱れるわけではない
この状況で身動きが些細にしかできない、燻る一部の敵側に火をつける。
同じく馬で引き連れ、相手に突撃しようと前進するのだ
槍が 剣が メイスが 腰から 馬から抜かれ、走り出す。

蹄が駆ける音がする。
この時期の、曇り空の中
綺麗な空ではない灰色の空の昼間の下で

同じ色合いをした石色のフードマントを身に着けた金属ではなく革の鎧という出で立ち
豪奢 厚みな金属鎧でもないそれは傭兵に見える者もいるかもしれない
しかし綺麗に整えられたアップスタイルに結わえた黒髪と、その赤い瞳
馬は逞しく、兜を身につけない端正な乱杭歯を見せつける女騎士に従い、その足で駆けていく。

続く同輩らもそうだった
様子を見ながら一進一退ではなく 今突撃していく嵐のように搔き乱そうとする狂人
それについていく心荒んだ富む若くも老けもした不良共だ。

「―――シィィィィィィ。」

雨が降りそうな冷たい空気
馬で駆けると風が全身に浴びせられる中で、その赤い瞳は三日月型の笑みを浮かべる。
片手が背中から抜き出したそれは、蛇革の矢印鞘から現れた段平剣

分厚い刃とリカッソと思われる、獅子の開口造形が根本に備わった、刃が付いた鈍器と言える代物。
それを両手で握り、手綱を離し、馬に全てを任せたメイラは、老若混ざる不良共の先陣を斬る様に
互いに駆けていく騎兵集団と、今 ぶつかる。

「うぉ―――ールァあですわぁッ!」

先頭と先頭
ぶつかり合おうとする中で、振り上げるようにして両手剣の剣身と、槍がぶつかりあう
怪力が、槍を跳ね上げさせると振り上げた剣身
それを回したまま、勢いに乗った横一文字が胴体をつなぎ目ではなく、その金属板中央へ薙いだ。

      ―――“ガ ァ ァ ァ ン ッ ! !”―――

鎧を着こんだ人間が、まるで木棒で弾かれた樹脂球のように上空へとはじけ飛ぶ。
食い込んだそれは刃が付いた鈍器がぶつかったようにひしゃげ、亀裂と共に食い込み、赤を頭上から降らす。

メイラ・ダンタリオ > 弾け飛ぶ鎧の塊
怪力 それが示されたもの
先陣を斬り、先陣を薙ぐ

背丈ほどのリカッソで覆われた長剣を手に、左右へと振るう
切れ目という先端を弾いたことで生まれた空間
そこへと雪崩れ込んでいく不良共

戦という刺激を、味わおうと狂人と共に駆けていくだけ
それに合わせるように、耐えられなかった同じ狂人 馬鹿の類が駆けてくる
眼を覆う王都軍 抑えきれず飛び出した者らを、駆除でもする眼で静観する敵軍

このまま飛び込んでくることはないと、知れているせい
小競り合いを続けなければいけない中で、着火された戦意に弾かれた戦意がぶつかり合うのなら
そんな聞き分けの無い戦意はいらぬと、もはや差し出されている。

故に、斬り続ける。
乱杭歯を噛みしめ、その三日月形の悪魔のように笑んだ、獣のような赤い瞳が
前進し、剣を突き立てる。
騎士の習った剣術ではない 怪力に身を任せ弾けさせる鉄球のよう

馬の首を落とし、剣を折り共に薙ぐ
突き出された槍を左手で握り直した剣が弾くや、空いた右腕ですれ違いざまに叩き込む首折りの剛腕
首に叩きつけられて ゴ キ リ と伝う感触と共に、もはや騎士とは呼べぬ戦い方で落馬する敵。

「シャアッ!」

両手で構え直したそれが、剛体鋼覆のつなぎ目に向かって放たれる
胴体のつなぎ目 肩口の隙間 兜と首の間 斬り飛ばされる 赤が咲く

数体が纏めて突撃してくるのならば、間合いを生かした薙ぎが、数体をまとめて先端で亀裂させる。
吹き出す亀裂から出る赤と共に、返した刃が今度は胴体に食い込み、胴体が横へ飛び、胴体へぶつかる。
玉突きのように落馬していくもの 空の鞍で軽くなった身で駆けていく馬

―――戦場は良い
―――わたくしの全てが、活性化されていく
―――造られた身体が、喜んでいる。

視界の中で、曇り空の下、赤を作り、増やし、グルリと曲線を描いて下がっていくのならば、今度は裂けめとなった片割れを後ろから薙いでいく。
もはや、それは長い金属の棒で叩き落としていく振り抜きと変わらない。
暴力という 一つの結果 それが作り出す、怪力令嬢の剛剣。

ご案内:「ハテグの主戦場」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。