2020/09/17 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にエミネさんが現れました。
エミネ > 「…ま、何の動きもないわよね」

望遠鏡を覗きながら、女武官は呟く。周囲には帝国の重装歩兵が10名。ラメラーアーマーで全身を顔まで覆い、目元しか見えないため性別もわからない。戟と盾で武装し、周囲を見渡している。

「そりゃあそうでしょう。向こうも色々大変らしいですし」

重装歩兵の一人が返す。どうやら女性らしい。エミネ達がいるのは王国と帝国の境界線近く。勿論暫定のものであり、小競り合いの度に変わるものだ。エミネが覗く先には王国側の領土が広がっている。野営地の煙も見えるが、特に怪しい動きは見えない。

彼女達が行っているのは日常のパトロールだ。王国側に怪しい動きが無いか調べ、奇襲を防ぐ。とはいえ、噂程度の情報では王国国内で騒動がありそれの対処で忙しいらしく、これといった侵攻の兆候は確認できていない。

だが、王国側も同じくパトロールを出しているかもしれないし、何か別のものに遭遇するかもしれない。気は抜けなかった。

ご案内:「ハテグの主戦場」にファイネアさんが現れました。
ファイネア > そんなパトロール、というよりは斥候の仕事を請け負った冒険者が一人。
夜目も利くので夜間の行動に問題はないのだが、あんまり夜に動きすぎて変に思われるのもなぁ。
と、考えて最前線でひと休みしていた所。

小さく伸びをしながら気配を感じて視線を向ければ、どうにも不審な連中が接近してきていた。
んん?と思いながらじっと見る。
重そうな武装をしたのが10人…11人?程。
どうにもこちらと同じ斥候のように見える。とは言えこちらは単独だ。
別にこの仕事自体が一人というわけではないのだが、他の連中も散り散りで偵察しているはず。
何か異常があれば即撤収&報告、という形だ。

そんな事を考えているファイネアは木の上。
あまり見上げない夜の木の上でじっとその連中を見ていたのだが…。
ばさっ、と鳥が飛び立ってしまった。ガサガサと鳴る頭上の枝。
あー、という何とも言えない表情になってしまった。

エミネ > 「…!」

その鳥の羽ばたきは女武官にもばっちり聞こえていて、彼女はすぐに音のしたほうを向く。同時に重装歩兵達は一糸乱れぬ機械のような動作で彼女の左右に横隊を組み、盾を構え戟を向ける。帝国軍の練度を感じさせた。

「……まぁ一応調べましょうか」

エミネはつかつかと木の方へ歩いていく。重装歩兵達は素早く横を通り抜け、物を落とされても当たらない絶妙な距離を維持しながら木の周囲を包囲する。
エミネ自身はそういったことを気にする風でもなく、武器すら抜かずに幹の近くまで歩み寄る。

そして、思い切り木を蹴り、揺らした。

ファイネア > 当然のように木に接近してくる兵士達。
練度の高い様子が見て取れる。
鳥の羽ばたきは聞こえたと思うが、警戒はさせてしまった様子だ。
やって来た連中から一人出てくる。声からすれば女性だろう。
あの人が頭ね、…と、思った所で樹を揺らす素振りを見せたので、

やれやれ、と思いながら自分から木の上から飛び降りた。
着地と同時にバネ仕掛けのように飛び退る。身体能力の高さを見せてしまうかもしれない。

「そんな怖い顔しないでってば。」

一定の距離を置いてから短槍片手に立ち上がる。
当然睨んでくるであろう相手に余裕すら感じる素振りで小さく笑う。
そして一人一人の様子を見つめながら、ひのふの…と数え終えた。11人で間違いなかった様子。

「どうせ偵察でしょ?」

と声を掛けながら、パンパン、と手やローブに着いた土埃を叩き落す。

エミネ > 飛び降りてきた怪しい人物を、エミネは首と目の動きだけで追う。相手が立ち上がったところで、周囲を兵士が囲み、一斉に戟を向ける。

「そんなに怖い顔してた?」

そちらにゆっくりと歩み寄りながら、エミネはなんとなしに言う。どちらかと言うと、少々面倒くさがる気持ちが顔に浮かんでいるかもしれない。

「そうそう偵察。貴女みたいな怪しいローブの南蛮人をひっ捕らえて陣地に連れ帰ってあれこれ尋問するのが仕事」

片手を上げれば、兵士の一人が縄を取り出し近寄る。

「見たとこ正規の軍人でもなさそうね。まぁ軍人ならあんな逃げ場がない場所に隠れてないだろうけど」

少々見下しが入ったような笑みを女武官は浮かべる。

「…まぁ何でもいいわ。帝国の拷問官は優秀だものね」

さらりと、恐ろしいことを言った。

ファイネア > 一斉に囲まれたわけで、思ったより動きは敏捷だ。
ただ、重装の歩兵ばかり。逃げようと思えば逃げ切るのはそう難しくはないと思っている。
仕方ないわねぇと余分な動きを見せる。と言ってもランタンに火をともしただけだが。
ぽぅ、と明りが足元から周囲を照らす。

「怖い顔してるし、怖い事も言っているわ。…まぁ、黙って連れて行かれる気もないけれど。」

明りに照らされてうすぼんやりとローブが白く光るような光景。
割と余裕のある表情を浮かべたままだ。

ローブに織り込まれたラミアの鱗がゆっくりと煌めいている。
縄を持った兵士が近寄り…そのまま動きを止めた。
くすっとファイネアは笑う。
わずかに身を揺らせばその煌めきも緩やかに蠢く。

周囲を囲む兵士達はいつの間にかぼうっとファイネアを見つめているだろう。
女性の声も届かないほどに惚けた表情をしているに違いない。

「ふふ。とっても優秀ね、貴女の兵士。」

と、ファイネアは笑う。

エミネ > 動きを止め戟を下ろしている兵士達をちらりと見て、はぁ、とため息をつく。
10人いて全員やられるとは。こういう場合に備えた訓練をする必要があるな、
などと考えながら、自分には効果があまりなさそうなのを少し不思議がる。

「何したか知らないけど、一番優秀な兵士は残ったわ」

歩み寄りながら、初めて腰の刀に手をかける。
引き抜けば、一つの刀だと思われたものは二つに分かれ。

「言っておくけど、こちらが鎧を着ているからって逃げられると思ったら大間違いよ?」

目線を逸らさず、じりじりと歩み寄り。
表情は崩さないが、警戒するように持ち上がる尻尾が、気持ちを表しているだろう。
夜の闇で、黄に近い琥珀色の瞳が輝く。

ファイネア > 10人の兵士を尻目に、囲みからするりと抜け出る。
抜け出た所で双刀を構える女に笑いかけるだろう。
短い槍くるくると手元で回し、じりじりと近づく女の様子を伺っている。

「この人達なら幸せな夢でも見てると思うわ。」

女の言葉に軽口を返し、とんとんとつま先を鳴らす。
亜人か、と尻尾をチラ見して少し考慮する。
効き目が無いというよりは、種族的に効き目が薄いのか、と考えながら…。

「そう?逃げれると思うけれど。…でも、まだ逃げるにはちょっと早そうよね。」

ふわり。ローブの裾が翻りながら、独特のステップを踏んでいく。
女の視線の先でステップを踏みながら、くるくると踊るように槍を回す。
不思議な舞は魔力を持って見つめる者の発情を促す。
それを遊びだと踏み込むのか、警戒して見つめるのか―――?

エミネ > ステップを見ていると微かに沸き起こる気持ちに、あぁなるほどと思い至る。
神獣、神の使いの一匹だったご先祖様から受け継いだ蛇の直感が、それがどういうダンスなのかを思い至らせる。
どうにも、相手が種族的に近いところにいるらしいことも。

「んー、そうかしら?早いとこ逃げたほうがいいんじゃない?」

エミネはにやりと笑ったかと思うと、前傾姿勢をとり、
草地を這い寄る蛇のように、音も無く、滑るように距離を詰め、
一部とはいえ鎧を着ているとは思えぬ柔軟な動きで、刀の間合いどころか、ファイネアのふところにまで潜り込み、

「大人をからかうもんじゃないわよ?」

と耳元で囁き、さらには頬にキスまでするかもしれない。

ファイネア > 頬へのキスは甘んじて受けるだろう。
その動きにはそれなりに驚きはあったが、自分も似たようなものだ。
驚愕という程でもない。

「…別にからかってなんかいないけれど?」

ファイネアの反射神経も人ではないものだ。
槍の穂先は接近してきた女兵士の首筋に触れるか触れないかの位置。
が、それ以上それを進める事もなく。

「ふふ。本気になったらなったで面白いでしょ?
…私はどっちでもいいのだけど、このまま見逃してくれるなら黙っててあげるけれど。」

別に王都に義理はないし、貴女もお荷物抱えてるでしょ?と。

エミネ > 自分の首筋にあてられた槍の穂先を感じながら、見下したようなにやにや笑いを崩さずにゆっくりとファイネアの正面に立ちなおす。

「別に話してくれてもいいわ?こちらはただのパトロールなんだから。
むしろ正直に話したらそっちが上司に怒られるんじゃない?敵の歩哨に見つかりました、追い返されました、じゃ」

手持無沙汰に、手にした刀をひゅんひゅんと回しながら、エミネはにやにや笑いを崩さない。

「まぁ、どうせその様子じゃ帝国に忍び込む工作員とかでも無いんでしょうけど、正直に何が目的だったかと自分の身分を話してまっすぐ家に帰るなら、見逃してあげてもいいわ。
そこを聞かないと、目的不明のままじゃ帝国軍の武官としては少なくとも刺し違えてでもアナタを捕まえるか殺さなきゃならないし」

まぁ私が死んでも部下はどうせそのうち目が覚めるでしょうと付け加え、それとも…と続け、

「もっと誘惑してみる?身体差し出せば見逃すかもしれないわね?」