2020/05/10 のログ
■シア > 夜の闇に紛れて、小さな人影が戦場を駆け抜ける。
暗色のローブを纏った人影は、成人男性と比べれば随分と小柄。
そんな影が、月明かりさえ避けるように木々の陰から陰と移動していく。
開けた場所には、使い手を喪った無数の剣や槍が打ち捨てられている。
死んでしまった者たちに対しては冥福こそ祈るものの、殊更に用はない。
未だ葬られることもなく放置されたままの骸には目もくれず。
赤い月の光に照らされた其処へとその影が姿を現した。
辺りに人はおろか生の気配はない。あるとすれば花もないのに剣の柄に止まる蝶の姿くらいのもの。
「……………………あった。」
瓦礫の山と化した何かを見つけると、そこへと脚を向ける。
それは破壊された機械仕掛けの大きな人形のなれのはて。
先日の戦闘で投入されたというそれについて、気になることがあって調べに来たのだった。
とは言え、ローブを纏った少女は学者でもなければ研究者でもない。
瓦礫と化したそれを見たくらいでは、何が分かるはずもなく。
コンコンとその外装を叩いていきながら、動力炉に当たる部分を探して行く。
■オブシダン > 音もなく、黒い翅が広がる。
赤い月明かりにも、暗い夜にも染まることのない黒い羽搏き。
音のないそれが、ふわり、と――槍の柄から飛び立った。
舞うように、あるいは夜空に浮かぶ影絵のように
音も無ければ、気配もなく、蝶は、少女の後を追いかける。
“………あった”という彼女の言葉にも翅は止まらない。
そして、人ならざる骸――機械人形の残骸を調べ始める彼女。
ゆるり――と、その肩に黒い影は舞い降りる。
決して動きを邪魔することなく、重さも、気配も感じさせない侭に。
もし、動力炉を探すのを止めて視線を向ければ、黒紫の燐光が見えるだろう。
機械人形に、少女の白い肌にはらはらと散っていく燐光――。
ほんのひと時の、けれども、無限の時間を濃縮した幻に誘う光。
それを、少女は振り払うや、否や――……。
■シア > 専門知識のない少女では、調べるにしても虱潰しになる。
カンカンと金属を叩く音だけが、時折響く。
狭い隙間に顔を覗き込ませ、けれどもそれらしきものは見つからない。
そんな少女の肩――暗色のローブに黒紫の蝶が止まったとしても気には留めないだろう。
視界の端に僅かな燐光が見て取れたとしても、その危険性を知らなければ払うようなこともせず。
「…………んー…これ?」
音の違う場所を見つけて、覗き込めばそこにはハッチのようなもの。
道具はないもののバルブを無理やりに回せば、開くことも出来ようか。
そこに手を伸ばした矢先に、燐光の量が増す。
景色がぐにゃりと歪んだ気がして――――
ご案内:「ハテグの主戦場」からオブシダンさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」からシアさんが去りました。