2020/03/08 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 陽は疾うに沈んだ夜。
焼かれ、踏みにじられ、蹂躙された丘の上には、夜空にぽっかり昇った月に照らされるものは何もない。
昼間丘で繰り広げられた戦いの気配は、まだ焼かれた地面と散った血潮の匂いとして立ち昇り、戦地を渡って行く風に乗って麓まで漂っていく。
その麓の一角、針葉樹の森に、彷徨うような人影が一つ。
木々の合間から陽は疾うに沈んだ夜。
焼かれ、踏みにじられ、蹂躙された丘の上には、夜空にぽっかり昇った月に照らされるものは何もない。
昼間丘で繰り広げられた戦いの気配は、まだ焼かれた地面と散った血潮の匂いとして立ち昇り、戦地を渡って行く風に乗って麓まで漂っていく。
その麓の一角、背の高い針葉樹の森に、彷徨うような人影が一つ。
人影――――灰色のフードの下から赤銅色の肌と翠の瞳を覗かせる女は、木々の合間から降り注ぐ月光を時折見上げながら急ぐでもなく、根に覆われた地面を踏みしめて歩いて行く。
「――――…大丈夫、じゃ、ないかな……」
丘から大分離れその匂いも届かなくなるほどになってから足を止め、熟れた唇からそう、言葉が漏れる。
翠はゆっくりと森の暗闇を見回す。時折聞こえてくるのは小動物が小枝を踏み抜くような音と、夜鳥の囁きだけだ。
明日、この針葉樹林を別動隊を移動させ、奇襲めいたことをしたいらしい。
いつもの届け物が済んだあとの会話で聞いてしまった作戦。ふと『罠はないのか』と零してしまったのが運の尽き。なら確認してきて欲しい、と気軽に頼まれてしまって、己もお人よしにもこうして出歩いている。
罠らしき危険が見つかった時だけ報告に来い、と言われている。
こうして一応の責任を果たしたあとは自由、という事にもなるが…
また血の匂いの方向へ戻るのも気が進まない。
(今宵はここで野宿、というのも悪くは無いかもしれない…)