2020/02/22 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 甲冑の軋む音。鬨の声。剣戟。
此の地では、命を奪い合う行為が半ば日常と化していた。
多大な戦費と人命を吸い上げる此の地は、その内神すら嫌悪する様な呪いに塗れるのではないかと思わなくも無い。
「……まあ、延々と小競り合いしてくれる分には此方としても都合が良いのだが」
王国軍の陣地の一角。豪奢な造りの天幕の中で、優雅にココアを啜りながら一息。
軍部との友好関係を維持する為に、自ら傭兵団を率いて訪れた此の地で、数度の戦闘を繰り返していた。
とはいっても、己のする事は出陣前に大まかな指示を出す程度。戦場に出る訳では無い己は現場の指揮官達に口出しせず、戦略目的の策定程度にとどめて居た。
にも関わらず、己の軍団が連戦連勝を記録しているのは己の大雑把な采配が優秀な訳でも無ければ、現場の指揮官達が特別優れている訳でも無い。
ただ単に、過剰なまでに充実した兵站と増援を用意しているだけの事。
「…敵が消極的なのも良い。多勢に無勢を悟れば撤収してくれるのだから、楽なものだ。……あとは、連中に自制心がもう少しあれば良いのだがな」
とはいえ、傭兵で構成された軍団に統率力がある訳でも無く。連日の勝利に沸く兵士達は、少々深追いし過ぎている様子。
何せ、司令官である己の天幕の護衛が極端に少ない。
そういう策略かと疑わんばかりに無防備な天幕で、深く溜息を吐き出した。
ご案内:「ハテグの主戦場」に鈴さんが現れました。
■鈴 > 「うーん…でもでも、それだと私の出来る事がなくなっちゃうんですよねー。
もういっそ、あっちに行って戦っちゃおうかなって思うくらいですよー?」
天幕の中で一息を付いている彼の側、ちゃっかりと同じようにカップを両手に持って寛いでいる少女が居た。
少々不満気な表情を浮かべながら、先に見える戦いの場を指差して彼へとそう伝える。
以前ちょっとあって、その伝手で護衛として雇われた形で居るのだ。
ただ、ワンピースドレス姿である少女の格好は、その場とはあんまりに不釣合いなもので。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「……お前迄私の側を離れては、誰が此処を守るというのだ」
小さく溜息を吐き出し、未だ湯気の立つカップを、地図や筆記用具が散乱した机に置く。
そうして、不満げな表情を浮かべる少女に振り返り――
「寧ろ、割の良い仕事だと喜ぶべきじゃないか。特に危険な事をする必要も無く、良い賃金が得られる仕事だとな」
何も態々戦場で危険を犯す必要はあるまい、と言わんばかりの口調で小さく肩を竦めてみせる。
かたや貴族の礼服を纏った少年。かたやワンピースドレス姿の可憐な少女。戦場の天幕というよりは王都の富裕地区かと見紛う様な様相で向かい合いながら、呆れた様な笑みを少女に向けるだろう。
■鈴 > 「やっぱりそうですよねー?」
彼の言葉に、仕方無いなって様子で返す少女。
受けた依頼は護衛、彼の言う通り離れてしまっては依頼放棄である。
それは恩を返す形で行動をしている少女としては最も嫌う事なのだ。
「世の中は『ぎぶあんどていく』なので、それでは駄目かなって思いましてー。
私ばっかり、良い事があってはいけないんですよー」
その考えはこのような言葉として彼に伝え、むぅ、と小さく唸る。
外見や口調とは裏腹に、少女はどこまでも義理堅い武人なのだ。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「分かっているなら大人しく私の護衛を勤める事だ。…まあ、流石に此処迄攻め入られる事は無いと思うが」
仕方無い、という口調ながら理解の色を示す少女に満足した様に頷く。
とはいえ、楽に稼げる仕事の何が不満なのかと、内心首を傾げていたのだが――
「…ああ、成程。そんな事を気にしていたのか。此方はお前に依頼料を払い、お前はその分の依頼をこなす。その時点で既に対価の支払いが完了しているのだから、特段気にする事もあるまい」
少女が不満げであった理由を察すると、理解がいったという口調と共に苦笑い交じりの穏やかな言葉をかける。
差し出した対価分の仕事をしている以上、少女が悩む事は無いのだと。
実際、既に天幕の周囲には人気が感じられぬ程血気盛んな兵士達は出払い、彼女以外に己の身を護る者はいない状況。
こうして側にいるだけでも、彼女は立派に仕事を果たしている様な有様であった。