2019/08/25 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にカーレルさんが現れました。
カーレル > 王国陣営の構えられた丘を迂回して丘と丘とに挟まれた窪地に下る
昼間の戦いの熱と湿度が未だ漂っているようなそこには物言わぬ兵の亡骸が敵味方隔てなく散乱していた
暑さのせいか既にそれらが痛み始めているようで饐えたような匂いが漂っている
生者の姿は影もなく、遠く両軍陣営から聞こえる笑い声や生活音がより悲壮さを際立てているようにも思えた
そんな窪地の底で動くものと言えば自分以外には血肉の匂いに誘われた野犬や狼と言った所であろう

月明かりの薄い夜である
陰惨な光景にどうにも息苦しさを感じれば目深に被ったフードを下ろす
大きく息を吸い吐き出せば、死臭に僅かにむせ小さく咳き込んだ
益体もない戦いだ、と思いつつ自分の依頼を思い出せば転がっている死体に近づきその指先を確認していく

カーレル > 考えるにこの丘陵地帯での戦いは王国にとっては主戦場足り得ないのだと思う
諸外国から攻め寄せる軍にも王国軍も然程、本気ではなく、王国からすれば、
タナール砦周辺で対峙する魔族の軍との戦場の方が主戦場であろう

主戦場足り得ないからこそ、貴族の子弟が箔付けの為に送られたり、傭兵たちが押し寄せ、
日長一日、小競り合いと言うべきか、八百長じみた戦争を続けているように思える
…と言うのが、今回の自分の仕事の要因である
とある貴族の跡取りが泊付けの為にやってきた戦場でどうやら戦死したらしい
八百長であっても戦争は戦争であるから人は死ぬ。後方に陣取っていても運悪く流れ矢に当たったり、
後方撹乱の急襲を受ければ浮足立つこともあるだろう

そんな具合で死んでしまったであろう貴族の跡取りが身につけていた跡取りの証である指輪を回収するのが、
王都に住まうほんの少し顔の広いなんでも屋の仕事であった
貴族からの依頼というのは大抵、断りづらいものなのだ。後ろ盾の無いなんでも屋であれば尚の事
………ただし、報酬は抜群である。依頼主は戦死した後継者の弟であった

「…流石に奪われてるんじゃねえかな」

なるべく派手な格好の死体を探してみるが辺りは暗い事もあってこれがなかなか難しい
ひょっとしたら、というかまず十中八九、貴族の子弟の武器、甲冑なんかは金になるから奪われる
生きていれば捕虜になり身代金を要求する手紙がいってそうなものだが、どうやらそれもないらしい
2つ、3つ程も死体を確認してから周囲に倒れた死体の山を見れば呆然としてしまった

「夜明けまでに見つかるのか…これ…」

夏季は夜明けが早い
辺りに散らばった死体の中から目的を見つけ出すには相当、骨が折れそうである
呆然としていたがすぐに我に返ればまた、死体を確認し始める
鷲であったか、鷹であったかの紋章が刻まれた指輪がこの暗闇の何処かに転がっているのか…
それすら、なんだか怪しい雰囲気であった

カーレル > やがて、辺りに転がるそれらしい死体はほぼ確認し終える
しかし探している指輪は見つけることが出来ず、はっ、と短く息を吐けば軽く伸びをした
辺りは暗く流石にこの時刻に兵士がこんな場所を出歩く事も無かろうし、陣営の歩哨からも自分の姿は見えないだろう
気をつけるべきは野犬や狼の群れ、屍肉食らいの獣や魔物たちであろう

「夜明けまでにはまだ時間がある、な…」

依頼失敗、というのは出来る限り避けたい
仮に指輪が見つけられなかったとしても、依頼者を納得させる何らかの成果を持ち帰るべきである
手を休めて夜明けが来てしまえば、明日には明日の戦死者が増え、依頼達成も困難になるのは明白である

「…報酬の為、報酬の為…」

萎えかけた気力を奮い立たせるのは約束された報酬であった
夜明けギリギリまで探そう、と気合を入れ直せば戦場の暗がりに姿を消した―――

ご案内:「ハテグの主戦場」からカーレルさんが去りました。