2019/05/20 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場 戦場跡」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 夜。
真円の月が、黒々とした夜空の中天に冴え冴えとした穴を穿ち、時折その月影を夜鳥が横切る。
その月光に照らされた、かつて戦場だった丘陵地帯。
戦闘が行われなくなって久しく、むき出しの地面が目立っていた丘も、今や早々と緑に覆われつつある。
辺りは夜と言えども安穏とした春の空気で満たされ、日ごと血で血を洗う争いが起こっていたとは思えないほど…

その開けた丘に、月光の下ゆらりと漂うような人影がひとつ。
カンテラを手に下げ、足元を照らしながら彷徨う歩みを進めている。

灰色のマントを纏ったその人物――赤銅色の肌に翠の瞳を持つ女は、不図空を見上げ、真円の月に目を細めた。
そうして少し、首を傾げる。
耳元で金の輪が揺れ、黒髪が零れ落ちる。

「……十分、明るいな…」

そう、熟れた唇から言葉を零すと、手にしたカンテラの灯りを吹き消した。

ジナイア > 王都で知り合った植物学者から、「戦場跡に咲く花」を頼まれた。
形や種類は、と訊いたら、問わないという。
首を傾げると、「戦場跡に咲く花」には独特の特徴が…何か、薬効のようなものがあるという。
俄かには信じがたかったが、好奇心も時間もある事だし…と足を伸ばしてみた次第だ。
到着が夜になったのは誤算だったが……
そもそも彩の乏しい戦場跡のこと、「花」を探すにはそう、苦労しないだろう。
しかし、一見辺りには柔らかな新緑しか見当たらない…
……無い、可能性もあるが…

(……言い訳めくのは嫌だな)

自業自得か、と熟れた唇が苦笑を漏らす。
そうして翠の視線を足元に落としながら、ゆらりと漂う足取りを再開した。

ジナイア > そうして灰色の人影が月光の下彷徨って、月が中天からやや傾く頃。
その傾いた月を翠の瞳が見上げる。
溜息のようなものが、苦笑いを浮かべた唇から零れる。

「……昼に、出直すとしようか」

誰にともなく、そう、零して。
月光の下新緑に覆われた丘を、消したままのカンテラを手にゆっくりと下って行く…

ご案内:「ハテグの主戦場 戦場跡」からジナイアさんが去りました。